ニュートリノ・宇宙からAI・量子コンピューターへ
はじめに
みなさんが活躍する30年後・40年後の世界はどうなっているでしょうか。人工知能(AI)の進化・発展が、みなさんの生活を豊かにしてくれているでしょうか。いまの中・高生が、どのような分野で発展し、活躍しているかをイメージしながら、宇宙とAIについて考えてみたいと思います。
ニュートリノ カミオカンデ 戸塚洋二さん
ある時、物理の先生が「戸塚洋二さんを次の講演のゲストに呼んでください。彼は、絶対にノーベル賞を取ります。それだけの価値がある人です」と、資料をもってやってきました。戸塚さんの高校の母校での話です。その年の秋、34枚のスライドをもって、「カミオカンデとニュートリノの話」を私たちは聞きました。初めての講演だということで、一生懸命に「宇宙のこと」を話してくれましたが、私たちには全くのチンプンカンでした。30余年前のことです。
利益に関係ない学問研究をしたかった
講演がおわってから「なぜ、このような研究をする気になったのですか」と質問したら「私は、まったく儲からないことをやろうと思ったのです。自分が興味をもっていることを勉強したかったのです。最高に幸せなことです」と柔和で輝く眼で答えてくれました。
「ノーベル賞をもらうだろうという話がありますが・・・」
「いやいや、私の先生(小柴昌俊先生)がもらうべきです」と謙虚で誇らしげな返事でした。その後のことは、みなさんがご存じの通りです。悲しいことに戸塚さんはノーベル賞をもらう前に故人になりました。彼の指導を受けた梶田隆章さんがノーベル賞をもらいましたね。戸塚さんは屈託なく喜んでいることでしょう。
宇宙は、暗黒物質と暗黒エネルギーで96%占められている
専門家によれば、いま、ニュートリノが沢山「私の肉体」を通り抜けているそうです。その実感はないですが・・・。「宇宙はニュートリノで満ちている」のだそうです。ニュートリノは、原子と原子が反応した時に発生する「みえない粒子」で、スイスの物理学者パウリが存在を予言し、イタリア人のフェルミが命名した「物質」です。これをアメリカの実験家のライネスとカウンが発見したのです。
理論上「重さがない」と思われていましたが、戸塚さんはスーパーカミオカンデで「ニュートリノ振動」を確認し、「質量がゼロでないことを世界で初めて示した」のだそうです。
後日、梶田さんが国際学会で、「これがニュートリノ振動の証拠です」と話すと、各国から集まった研究者からの大きな拍手が止まらなかったそうです。研究者を志す人の将来の姿のひとつですね。
ヒッグス粒子の研究は、素粒子物理学のテーマ
「ヒッグス粒子」は、現在は一種類だけではないだろうと考えられていますが、まだ未解明の粒子です。だから、「魅力的な研究テーマ」ですね。最近撮影されて話題になった「ブラックホール」についても、同じことが言えます。
今回のものは「おとめ座のM87銀河の中心」にあるものだそうですね。オレンジ色をしたドーナツのような魅力的な美しい写真でした。太陽の約65億倍の質量をもち、地球から「約5500万光年離れている」そうですね。
ブラックホールは、「重力」が非常に重いので、光でさえも引き込まれて逃げ出すことができないというのです。光が出ないので姿が見えないから、ブラックホールなのですね。存在する場所は「黒い影」のようにうつるのだそうです。
私の肉体は、やがてブラックホールに吸い込まれる
私は静岡の田舎に住んでいるのですが、夕食後、妻と公園に散歩に出かけます。
ベンチに座って夜空を見上げていると、澄んだ空気の中で、星がかがやいてみえます。あれはオリオン座・あれは人工衛星・あれは飛行機・・・。
こんな夜空は美しく楽しいですが、銀河系は宇宙の中のひとつにすぎませんね。
それも、端っこの端っこだなんていうのですから「私たちはどこから来て、どこに去っていく」のでしょうか。
私は仏教の「五蘊(ごうん)」を信じています。急に宗教がでてきて驚く人がいるでしょうね。
五蘊では「人間の肉体は五つの要素からできている」といわれます。人間は、死ぬと五つの要素に分解されて宇宙に飛び散っていく。それが最終的に、ブラックホールに吸収されていく。だから、私はブラックホールに吸い込まれると考えるわけです。
早稲田大が開発中の「羽ばたき型ドローン」に注目
純粋な学問の研究も、産業と結びついて発展する側面をもっています。
だから、日本が得意としてきた半導体産業を復活させることは重要なことです。
「半導体」とは、電気を通す「導体」と、電気を通さない「絶縁体」の中間の性質を供えた物質ですから、いろいろな産業に利用されて発展して来たのですが、最近は多様な問題を抱えて低迷していますね。
そこで私は、早稲田大学の渡辺孝信教授が学生たちと開発中の「羽ばたき型ドローン」に注目しています。わずかな温度差で電気を生み出す熱電変換。シリコン結晶をナノレベルの細い形状に加工すると、「熱を電気にする性能が高まること」に注目し、「マイクロ熱変換素子」を開発したチームです。
「羽ばたき型ドローン」は、約30グラムで飛ぶ小型飛行機ですから、これに画像センサーや人工知能(AI)を搭載したらどうなるか。この研究・開発は、持続可能な新しい半導体市場を開拓し、日本のエレクロニクス産業を再び活性化させるものではないかと期待しているのです。
宇宙船地球号 「Only One Earth」の行くえ
私は、宇宙船地球号はどこに行くのか心配しています。
ニュートリノ・ヒッグス粒子に関心があるのと同じように、「生活者の私」の関心は、日々の暮らしにあるからです。
インドネシアで引き揚げられたクジラのお腹から「重さ6キロのプラスチックのゴミ」が発見されたという報道がありました。この内訳は「カップ麺115個・ビニール袋25枚・サンダル2個・紐がついた袋1000本を超える」のだそうです。
1972年のローマクラブの『成長の限界』から、約50年が経過しています。同じ年に、国連は「人間環境宣言」を<Only One Earth=かけがえのない地球>というキャッチフレーズで採択しましたね。
あれから約50年です。ようやくSDGs(持続可能な開発目標)に繋がりましたね。
環境問題は、私たちに突き付けられた厳しいテーマです。
コンピューターの開発と歴史を確認してみよう
専門家に知恵を借りると、私達が使っている「古典的なコンピューター」と「人工知能(AI)」と「量子コンピューター」の三つは、全く異なるものですね。
まず、「古典的なコンピューター」ですが、イギリスは、ドイツのエニグマ(戦略暗号機)に対抗できるものとして、数学者チューリングが開発した「チューリングマシーン」を秘かに武器として採用して、かろうじて勝利しましたね。これがコンピューターのはじまりでしたね。
やがてアメリカの数学者ノイマンが「ノイマン型の計算機」を開発し、現在のパソコンやスマホをはじめとするコンピューターにつながり、日常生活まで浸透するようになりましたね。現在の中・高生が活躍する「30~50年後を想像」すると、開発と発展にワクワクします。
AIに量子コンピューターが搭載されたならどうなるか
古典的なコンピューターは「0と1」「あるとない」という二値で問題を処理する関係ですね。
しかし、量子コンピューターは、「あるとない」の関係ではなく「ある状態とない状態」の「間にある状態」が「確率的に重なっている状態」ですから、現在のコンピューターの延長線上で考えてはならないようですね。一億倍の計算力を持っているそうです。まだ、十分な開発が進んでいないようですが、すでに一部で活用されていますね。
そして、「人工知能(AI)」です。最初は、人間の脳と同じようなものを開発しようとしましたが失敗しましたね。現在のAIは「機械学習」ですね。機械学習ですから、人間の知的作業のうちの論理的な推論を、人間に代わってやる技術ということですね。
だから、事前に音声や画像、テキストなどのデータを「機械に学習させておく」ことが必要です。それによって、新しいデータを観た時に「推論が可能になる」からですね.アルゴリズム(計算方法・組み合わせの最適化)で開発するのですね。
「量子コンピューター」は、こうした「組み合わせの最適化」を得意としますから、新しい薬をつくるとか、画像認識などに活用されますね。
アメリカのロッキードマーティンは「ステルス戦闘機の開発」に活用したと聞いています。最近は「人間の脳」に近いAIの開発研究が進んできたそうですね。
30年後を待たずして「AIに搭載された量子コンピューター」が中心になるでしょう。そうなったら、医療・教育・介護・航空・生物・物理・化学・芸術から戦略兵器など、あらゆるものが根底からひっくり返りますね。
「シンギュラリティ」は、カーツワイルが予想したこととは「異なる流れで進行」していくと思います。予言された2045年はもうすぐです。さて、どうなるでしょうか?
みなさんの出番は沢山あります。しっかり勉強して「大志」を貫いてください。
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