「世界宗教」の知識・教養を学ぶ~受験の前に知っておきたいことPART3~
はじめに
今回は、大学入試問題の背景になっている「世界宗教」についてまとめます。
アメリカとイランの対立にみるように、国家の対立は、宗教的な対立でもあります。
特に「一神教」は「多神教」と異なり、互いを認めず、排斥・拒否しますから、対立・衝突・抗争は深刻です。
原理主義者を中心として妥協しないからです。
私は宗教家ではありません。だから、特定の宗教を「伝道」するための解説はしません。
取り上げるのは、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教・仏教です。
I have called you by name, you are mine.
昔の青山学院大学の推薦入試の問題です。次の英文を読んで600字の小論文を書くのです。
まず、君はこの英文をどのように翻訳しますか。
I have called you by name, you are mine.
旧約聖書イザヤ書 43-1
これはマザーテレサが「ベッド脇」の壁に掲げていた言葉である、と注意書きがあります。
最初に、この英文を“I”に注意して訳してください。
単純に「私」と訳したら意味不明になりますね。
そこで「神」と置いたらどうでしょうか?
全く異なるものになりますね。
ここが今回のテーマに繋がります。
<ヒント:神様には手足がない。神様がやりたいことは・・・>
「ユダヤ教徒」にとって、聖書は旧約だけ
旧約聖書にユダヤ民族の2000年の歴史が記されています。
「創世記」に始まって、イザヤなど預言者の言動が「多様な物語」のように展開しています。
君は「はじめに神は天と地を創造された」に始まる創世記を知っていますね。
この中に「神は6日間働かれて7日目に休まれた」・「アダムとイブが神を裏切った」・「ノアの方舟(はこぶね)」の話・・・とかありますね。
続いて、「預言者モーセ」がエジプトから民族を率いて脱出する話が記されています。
エピソードとして、民族全体が捕虜生活を余儀なくされた「バビロンの捕囚」も出てきます。
今日もエルサレムの「嘆きの壁」の前で敬虔なユダヤ教徒たちが祈りを捧げていると思います。
西洋絵画を観る時は、旧約聖書のエピソードを予習することを勧めます。
質問
-
エデンの園で、アダムとイブが食べた「木の実」はどちらですか
- ① 知恵の実
- ② 生命の木
- ヒント:その後人間は「科学」を発達させた
-
ノアに「大洪水」が終わったことを知らせたのはどちらの鳥ですか
- ① 鳩
- ② カラス
- ヒント:「平和」とは神の怒りが解けたこと
死海文書のレプリカ
先日、孫が私の家に来たので、久しぶりに「死海文書」のレプリカを見せました。
「テル・アビブの国際飛行場についたのは、真夜中だったんだよ。バスなど交通機関はないので、迷ってウロウロしていたら、声をかけてくれる人がいてね」
「怖かったなあ!真っ黒な山高帽子を被った体格の良い男が三人いてね」
「エルサレムまで行くのなら一緒に行こうと・・・」
「飛行場から1.5時間くらい離れているから、度胸を決めて彼らの自動車に乗ったんだ」
「私の両サイドに真っ黒い髭を生やして、真っ黒な服を着た屈強な男たちが座るんだよ」
「内心、冷や冷やしていたけど、カラ元気を出して」
・・・
「いい人たちでね。ホテルまで送ってくれたんだ。また、出国はひどかったよ」
1946年頃、死海に近い洞窟で羊飼いの少年が、「不思議な文書」を発見して大騒ぎになりました。
それは、ユダヤ教の一派の人たちが書き残した旧約聖書の一部分だったのです。
現在、イスラエル聖書館にありますが、私は興味津々。
イスラエルまで「確かめ」に行ったです。聖書館で買ったレプリカをテーブルの上においたのです。
「神の子イエス」のことは、新約聖書に記載されている
新約聖書は「イエス・キリスト」の言動を記した四つの「福音書」が中心です。
伝道者「パウロが信者に送った書簡」などが続き、最後は「ヨハネの黙示禄」です。
「山上の垂訓」「狭き門」「汝の敵を愛せよ」「豚に真珠」「野の百合をみよ」などが記されています。
また「12人の弟子」「ユダの裏切り」「最後の晩餐」「奇跡」「ゴルゴダの丘」「十字架」など、私たちが「常識」として知っているべきことが沢山あります。
まず、「イエスはどんなところで生まれたのだろうか」と思って、バスに乗ってベツレヘムに行きました。
「馬小屋」の跡だといわれるところに教会がありました。
ここはパレスチナの人が多く住んでいる地域ですから、暴動が起こったことがあります。
また、イエスが弟子たちと渡った「ガリラヤ湖」で、私は泳ぐことにしました。
湖畔で、新約聖書にもある「魚」を食べました。淡泊な味で美味しかったです。
また、十字架を背負ったイエスが歩いたという「東エルサレムの細い道」を歩いてみました。
勿論、本物ではありませんが「映画:ベンハー」のシーンのようでした。
また、エピソードで有名な「マグダラ村」と「ナザレ村」へ行こうとして、バスに乗ったら「迷子」になりました。
明らかに私の準備不足でした。
質問
-
イエスの父・母の名前は何と言いますか。イエスの弟子は何人ですか
- ① ヨセフ
- ② ヨハネ
- ③ パウロ
- ④ イザヤ
- ⑤ マリア
- ⑥ サラ
- ⑦ ガブリエル
- ① 10人
- ② 12人
- ③ 13人
- ④ 14人
- ⑤ 15人
-
「福音書」の記述者を四人をあげてください
- ① マルコ
- ② パウロ
- ③ マタイ
- ④ ルカ
- ⑤ ヨブ
- ⑥ イザヤ
- ⑦ ペテロ
- ⑧ ヨハネ
-
「天国に行く鍵」を渡され、初代のローマ法王になったのは誰ですか
- ① ペトロ
- ② ユリウス
- ③ マルクス
- ④ ヒラリウス
- ⑤ フィリップス
早朝、拡声器から流れるアザーン
君は、イスラムの世界が「アザーンという独特の呼びかけ」で一日が始まることをしっていますか。
生活のリズムが、日本とは全く違うのです。「宗教国家」ですからね。
アザーンというのは呼びかけです。
「アラーに栄光あれ!お祈りをしましょう!」というわけです。
イスラム教徒は「生活と信仰が一体」ですから、早朝のアザーンは当然です。
毎日、メッカに向かって、五回のお祈りは欠かすことができません。
自動車で走っている時でも、“サーッ”と降りて、絨毯を敷いて「メッカに向かって祈る」のです。
祈りは大きな声で・・・つぶやきでも小さな声でもダメです。
イスラム教徒のことを「ムスリム」といいますが、ムスリムには絶対に信じなくてはいけないことが六つあります。
行うことが五つです。
「六信五行」といいます。
そのほかに、ハラム(禁忌)といって「やってはいけないこと」が決められています。
例えば、飲酒すること・豚肉を食べることです。田舎は信仰が厚い人が多いですね。
質問
-
イスラム教徒の六信五行を書いてください
-
イランはシーア派が多いですか、それともスンニ派が多いですか
-
君は、スポーツ試合で“ヘジャブ”をつけて出場することに賛成ですか
仏陀の教え・キリストとの違い
キリストは、わずか3~4年の伝道生活をしたのにすぎませんが、仏陀は、入滅するまでの40年間伝道しました。
キリストが「神が人間」で現れたというのに対して、仏陀は「人間が苦しみを乗り超えて悟った」という点で、全く異なる立ち位置です。
人生は苦しみである・四苦八苦
仏陀は「人生とは苦しみ」であるという認識から出発しています。
厳しいインドの自然・風土の中で「人間とはどんな存在」なのかを追及したから苦が出発点になったのでしょう。
だから、「信仰」より「悟る」ことになったのでしょう。
仏陀は「病気」「老い」「死ぬ」そして「生きる」を<四苦>といいました。
そして「あいたい人と別れる」「愛していない人に会う」「欲しいものが手に入らない」「心身から生じるすべての苦しみ」の四苦をくわえて<四苦・八苦>といったのです。
君の受験勉強は、四苦八苦の何に当たりますか。多分、「生きる」ことのカテゴリーに入るでしょうね。
君の祖父母は「老いる」ことですね。
病気の人は「病むこと」ですから、苦しみを取り除いてくれる「薬」が必要ですね。
「すでに、四苦八苦という毒矢が刺さっているのだから、毒矢を抜くことをしなくてはならない」というのが仏陀の教えの根底にあります。苦しみの除去です。
仏陀の生涯
仏陀は、釈迦族の王子に生まれながら、この「快楽生活」に馴染まず、29歳の時に妻・子を捨てて、バラモンの「苦行生活」に入りました。
が、悟り切れず、体力を回復したのちに、沙羅双樹の樹下で「坐禅」を組んで「覚者=さとりを得たもの」になったといわれます。
80歳で入滅するまで全国各地で伝道したといわれています。
諸行無常・諸法無我・涅槃寂静
すべてのものは変化する。一定のところにとどまっていない。
これが諸行無常です。
ところが、私たちの「煩悩(ぼんのう)」は変化を受け入れようとしないのです。
インドには、伝統的な「輪廻」の思想があって、何度も生まれ変わると信じられているのですね。
すべてのものは「因縁」によって繋がっており「我」というものはない。
普遍的な真理は「ダルマ=法」である。
悟りに至るための修行方法を「八正道」といいましたが、飛躍していえば、受験生も「合格のための八正道」を確立した人が受験に勝ちますね。
涅槃寂静とは、合格してスッキリ、清々しい気分になった境地に通じるものがあるでしょう。
身近に引き付けて解釈すれば、わかりやすいです。
薬師如来と阿弥陀如来
私たちは「この世」で生活していますね。生命が亡くなったら「あの世」に行く。
東方にいて「現世」をみられている薬師如来様は、日光・月光菩薩を従えて表現されます。
左手に「薬」をもっていますが、これは苦しみをやわらげるためのものです。
西方で「来世」を観られているのが阿弥陀如来様です。脇に観音菩薩と勢至菩薩を従えています。
「南無阿弥陀仏」と「念仏」を唱えると衆生を救済してくれると信じられています。「南無」とは「よろしく」というような意味です。
来世は、他力本願の世界ですが、現世は苦しみながら「闘う世界」ですから、薬が必要ですね。
受験は現世の「修羅の世界」です。
受験の苦を超える修行が必要ですね。
三回に分けて、思想・哲学・宗教を解説しましたが、大学受験の背景となる基礎知識です。
君の受験と「生きる知恵」として、役立ててくれることを期待しています。
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