英語学習の一層の強化が必要
はじめに
緊急メッセージです。11月1日(金)早朝、文科省の大臣から「(共通テストにおいて)英語の民間検定試験利用を延期する」という発表がありました。突然です。
君は、この情報を知っていると思いますから、詳細を書きません。
一方、君への影響が大きいことは、「共通テストにおける民間検定試験利用の延期」よりも、「共通テストの英語そのものに起こる変化」であることを忘れてはなりません。「Reading:100点」「Listening:100点」の200点満点への変更です。
この変更にはポイントが3つあります。
- Readingは80分、Listeningは30分。配点はどちらも100点なのに解答時間が大きく異なり、1点・1分の重みが違う。Listeningのほうが重い。
- ふたつのテストの配点比率は各大学の裁量に任されているので、ListeningはReadingの4分の1しか見ない大学があれば、1:1で見る大学もありますから、志望校の判断を受験生が見極めにくくなりました。お茶ゼミ√+の先生に相談しましょう。
- Listeningは後半の大問は難易度が高い上に「一度しか放送されない」ことも留意点です。内容は実用に近いので問題としては良いと思いますが、「解くのは難しいけれども,いい問題ではないか」という意見が多いです。対策が必要です。語彙は、これまでの4,000語程度から、大幅に増えるでしょう。
検定試験を上手に使って英語学力を伸ばす
学力到達度を図るのが「検定」試験です。だから、検定試験を上手に使って英語学力を伸ばすことが重要です。
どの検定試験も、背景に「テスト理論」があります。理論に沿って作問していますから、大学受験の基礎となる<形式とテーマ>への対策や、英単語・文法・読解力の習熟度も測ることができるのです。だから当然「級」や「スコア」があります。
ただ、今回混乱したのは、「多様な民間試験を一律に」大学入試に活用しようとしたからですね。
特に海外の検定試験は、それぞれ「目的」に沿って作られていますから、今回、日本の大学入試のために「同一基準で、一斉に学力を測ること」に合致しなかったですね。その無理が突然のメッセージになったのです。
検定の前に「教育」がある
「学習の成果」を図るのが検定です。
だから、検定用の勉強をすることは、普段の学校の授業とは「異なる面・部分」があります。
だから、検定の存在が大きくなると、検定が目的になって「授業がつぶされる」という意識が現場の先生方の反対意見につながったのです。
しかし、「検定のための対策」は、マイナスばかりでなく、新しい英語スキルの習得や、独自の学習領域を伸ばすことができるチャンスでもありましたけどね。
また、「大学入試に検定を使いたい」ということで、文科省などの開発責任者・担当者がアメリカのETS(Educational Testing Service)を何度も訪問したと聞いています。共通理解の不足でしたね。
ETSはTOEIC・TOEFLを開発した
ETSは、教育テスト・評価を実施する組織団体で、TOEIC・TOEFLを開発したアメリカのNPO法人です。
私たちには馴染みがありませんが、PISAの作問をしたり、世界の教育に大きな影響力を持っている非営利の組織です。
しかし、日本の大学入試に合ったテストを開発することを「理解」しても、「協力する」という返事をしなかったですね。
そして、今年の7月になってから、TOEICは、入試英語成績提供システムへの参加を取りやめましたね。
そのような「流れ」があって、英語の成績提供システムの中心が、日本国内のGTEC・英検・TEAPに流れたのだと思います。
この辺の流れを理解しないで意見・感想を言っている人が多いですね。君には正確な流れを理解していて欲しいです。
国際規格と国内試験を同列に考えるのは無理である
君は、お茶ゼミ√+に通って、将来は国際的に活躍することを考えていますね。
だから、「何をいまさら」と感じるかもしれませんが、ここで、国際規格の検定試験と、国内の検定試験とを、わかりやすく「受験料」から比較してみましょう。
ちなみに、私の二人の息子たちは共通1次試験・入試センター試験を受けました。
そのうちの一人は日本の大学を卒業してから、イギリスの大学に進学し、現在、イギリスの国際弁護士(ソリシター)として活躍しています。当然、留学経験があります。
また彼の妻はアメリカの大学を卒業し、イギリスの大学院を卒業していますから、国内・外の検定試験のことを、私は一通り理解しているつもりです。
そして、私はGTECは開発当時から、英検はずっと前から知っています。
文科省の大臣は「政府として、受験料を安くするように、業者に要請していた」と話していましたが、国際規格のテストと、国内向けのテストを「同列」に並べるのは、受験料からいっても無理があります。
海外テストの検定料は「IELTSの受験料の25,380円」、「TOEFL・iBTは235USドル」です。
英検やGTECの受験料とは比較にならない高さです。
この格差を大学入試に採用するから「同一基準で」ということ自体が無理です。
世界中で同一問題を作り、運営も試験結果の評価もやっている組織に、強引に「日本の大学入試のために開発・改訂をしなさい」というのですから、TOEICが「できない」というのは当然です。
しかも、受験会場の手配も、監督者の派遣も、採点も丸めて実施せよというのですから、制度設計以前の無理がありましたね。
海外の検定試験について
君は、アメリカやカナダなど英語圏に留学しようとしていますね。
としたらTOEFLやTOEICの検定試験を受けますね。
どちらも「英語を母国語としない人の英語力」を測るテストですが、最近はIELTSを受ける人が増えているようです。詳しくは、お茶ゼミ√+の先生に聞いてください。
- TOEFL(Test of English as a Foreign Language)は、英語圏の大学の授業を英語で受けられるか否かを判定する試験です。出題される内容はアカデミックで難易度が高いです。試験日は年間30~40回です。テスト結果は0~120点のスコアで表示されます。留学には最低61点以上必要です。レベルが高い大学は、100点以上が基準で、スコアの有効期限は2年のようです。
- TOEIC(Test of English for International Communication)は、試験日が年10回・全国約80都市に試験会場があり、受けたいときにスコア受験できます。10~990点のスコアが出ます。日常会話のスキルを計り、600点以上が目安です。受験者が多いのは、日本と韓国のようです。
- IELTS(アイエルツ)の受験者が増えているそうです。これはイギリスのブリティッシュ・カウンシル(イギリスの公的な国際交流機関)等が運営しています。レベルが高いです。受験は16歳以上、パスポートが必要です。5.0(B2)以上のスコアが欲しいです。私の息子は、イギリスの大学に留学するにあたり、7.0以上(C1)が取れたので留学を決断したと記憶しています。
何に留意して勉強するべきか
君が、このような状況の中で「留意したいこと」を四点にまとめます。
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「共通テスト」で英語の民間検定の利用は見送られましたが、「入試で英語が基準になる」ことには変化がありません。これまで通り、合否に関係する「調査書」の中に検定試験の結果を記入させる大学がたくさんあるでしょう。
公・私立大ともに、むしろ増えると予想します。君は積極的に検定試験を受験し「CEFRで言えばB1・B2」の成績を取るように努力してください。
- 「共通テスト」の英語長文問題では、平易な問題から、得点差が出る問題まで、形式とテーマを変えて、5~6段階に分けて出題されると思います。だから長文読解力をつけて「大量で、多様な文章を、スピードよく読む訓練をする」といいですね。
- スピーキングのテストは当分行わないでしょう。早くても2024年以降でしょう。東京外語大のように「外部団体と共同開発」すればできますから、私立大と、国公立大の個別試験で実施されるかもしれません。すでにやっている大学がノウハウを持っています。が、これからは、IT環境の整備・開発技術の進化とスピードによるところが大きいですね。「共通テスト」で採用されないというだけです。現実的に入試で採用されるでしょうから、スキルアップを今まで以上に図りましょう。
- グローバル社会は実力社会です。君は実力で生きていく人ですね。これがいいと思います。入試で、要領よく、うまく試験を通り抜けても、社会人になってから苦労するだけです。実力本位の世界は厳しいのです。
そして、これからどうなるの?
私は以前から「日本でもETSのような組織を作るべきだ」と主張してきましたが、この際、真剣に検討するべきだと思います。
大学入試センターの外部組織という形がいいでしょう。
国立教育政策研究所と協力して作ればいいと思っています
人材バンクを造り、人材派遣・採点業務・作問作業を担当する組織です。ETSのような「NPO法人」が良いと思うのです。
アメリカで「ETSの発足時」と同じように、日本でも、文科省・経産省・経団連などが連携すると良いでしょう。
国家政策のひとつですから、しっかり予算をつけて組織を作るのです。
これができなければ、今度のような「事件」は何度も繰り返されるでしょう。
「大量の問題データ(アイテムバンク)」を作ること、「受験者のレベルにそって問題を引き出すシステム」や、「自動採点ができるプログラムを作成する」ことが不可欠です。
「セキュリティー問題」を含めて国策・投資が前提になります。
それができなければ、国際社会の中で、日本の発展が望めません。
2025年に向けて、官・民がどこまで協力できるか。注目したいと思います。
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