「アナ雪2」と北方少数民族
はじめに
いま「アナ雪2=FROZEN 2」がヒットしていますね。君は、すでにこの映画を観ましたか。
私は「吹替版」と「字幕版」を二回見ました。どうしても物語の展開に納得がいかなかったからです。
が、吹替は「言葉の数」・字幕には「文字数」に制限がありますから、言葉の意味が曖昧になっても仕方ないですね。
君には、「原語版」と併せて三つ、それぞれを比較して楽しんでほしいと思います。
将来、翻訳業もいいですよ。
「Into the Unknown」心のままに
これが主題歌です。
どこからか「雪の女王=エルサ」に向かって声が聞こえてきます。
この声に向かって「主人公が走り出す」のが、この映画のテーマです。
私は、この主人公と受験生の君に「共通したもの」があると思います。
君はこの人生で何をしたいの?いや、その前に「私は誰なの?」があります。
君への「未来からの声」は、どこから発せられているのか、誰の呼びかけなのか。
君は「心の奥底」から響いてくる声に従って、未来に「挑戦」するのです。
前方にあるものは、簡単に乗り越えさせてくれない「未知の世界」です。
「霧のむこう」の世界です。そしてあるものは「Dark Sea」。
風と火と海と大地の精霊です。乗り越えていくのは簡単じゃありません。
最後に歩くのは一人です。その前に支援してくれる人が必要です。
君がお茶ゼミ√+に通うようなものです。大波を乗り切るための力と支援です。
受験アドバイス
- 高3生は、しっかり「前を向いて」、窮地に陥った時のアナのように「The Next Right Thing」・「できることを一つずつやる」ことです。
- エルサのように「目標」への挑戦を最後まで諦めないことです。「合格」したら、自分自身が「第5の精霊」になったこと・実力に、目覚めるでしょう。
サンタクロースと北方のサーミ人
サンタクロースが住んでいるといわれている“ラップ・ランド”は、スカンジナビア半島北部の北極圏を中心とした、現在のノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアの4カ国に分断されている地域です。
そこに、北方先住民族「サーミ」が住んでいます。
サーミは、トナカイといっしょに季節ごとに移動しながら生活してきました。
もともとは、トナカイを狩猟していた民族です。
少数民族であるために、沢山の差別と迫害を受けました。
「アナ雪」では、架空の民族<ノーサンドラ>として登場します。沢山のトナカイも出てきますね。
アナを助けるトナカイ飼いの「クリストフ」はサーミ人です。
現実的な話では「アナ雪1=FROZEN 1」は、サーミ人の民族・風習・伝統文化への敬意が足りなかったと、多方面から非難されました。
そこで、今回は制作にあたり「WDAS」は、サーミ議会の代表者たちと契約を結び監修・助言などを受けました。
なおWDASは「ウォルトディズニーアニメーションスタジオ」のことです。
君には、チャンスを見て「サーミの血」(スウェーデン映画)という映画を観ることを勧めます。
迫害された少数民族の少女の成長を描いた問題作です。
受験アドバイス
- 「差別された民族」へのまなざしは、今年も大学入試で取り上げられるテーマです。世界史・日本史・英語の記述問題、英語の自由作文などです。
- 日本国内のアイヌ民族が抱えている課題について勉強しておきましょう。中国のチベット・ウイグル地域の「同化政策」とは何か、どんな事件が起こっているかも理解しておきましょう。
環境問題・「壁」・精霊・強国の支配
この映画は、楽しい娯楽映画ですが、裏に「メッセージ」を持っています。
物語の奥にあるテーマの一つは「環境問題」です。
エルサ・アナの祖父の国王は、ヤマの中に「大きなダム」を建設しました。
これは「自然を破壊すること=開発」ですから、破壊された自然、そこに住む精霊が怒りました。
また、自然と「バランスを保ちながら暮らしていた人々」を怒らせてしまいました。
怒った精霊は、深い霧(壁)で外界との交流を遮断してしまいました。
物語は人間(国王)の行為を「過ちとして正す」という流れになって展開していきます。
だから、最後に「アナがダムを壊す」のです。
この霧は、アメリカとメキシコの間に造ろうとしている「壁」と読み替えることができます。
「壁」を作ることは、国家や人間の関係を遮断するものであるという認識・主張が作品のベースにあると思います。
この物語は、少数民族・先住民族に対する強国の「征服問題」を告発する内容であるという人もいます。
いずれにしても、ウォルト・ディズニーという会社は「製作意図」を持って映画を作成していますね。
受験生は「製作者の意図」・入試では「出題者の意図」を見分けることが要求されています。
受験アドバイス
- 「壁」はどこにもあります。受験テクニックの壁。メンタルの壁。受験環境の壁。壁を超えるためには、壁の向こうに目標を置く必要があります。「自分が要求するレベル以上の実力はつかない」のです。そのためにも、志望に意図を持とう。何のために、どの大学に進学し、何をやるかに拘ろう。
- 環境問題は、いろいろな形式で出題されるだろう。「開発と保全」の両面から、自分の意見を明確にもつことです。ディベートの要領で理論を詰めると良いでしょう。
「白雪姫」と「アナ雪」にみる女性像の違い
私は、ディズニー映画のアニメ「白雪姫」(1937年)が大好きです。まず優しい、可愛い、我慢強いですね。
7人の小人と森で暮らすようになっても、いつも楽しそうで、屈託ないです。
私の世代は、この「受け身」の白雪姫像に魅かれるのです。
製作されたのは太平洋戦争前です。だから、戦前の女性観がベースにあると考えてよいでしょう。
しかし「アナ雪」に描かれる女性二人は受け身ではありません。
描かれている「女性像」が全く違うのですね。
エルサもアナも「自立した力強い女性」です。
<Let it go=ありのままで>と自分に肯定的に目覚めた女性は、次は<Into the Unknown=心のままに>と自分を認めながら、どんなに傷ついても心の声を聴いて「輝きを増す行動」に移ります。
「白雪姫」から「アナ雪」まで、80年余りで、ディズニー映画が描く女性像が変わっているのです。
受験アドバイス
- 人間の脳に近いAIを開発するには「女性のしなやかな感性」が必要だといわれます。理系女子の活躍の場はますます広がるでしょう。
- 「文系に行くから数学・理科をやらなくていい」というのは間違った考えです。10年後の世界は、しっかり「理系の基礎を勉強した人」を必要とするでしょう。その時は、人間観・女性観・世界観が変わっていると覚悟すべきです。
豊かなイロとオトの世界
「アナ雪2」で、遠くから聞こえる声は、どんな「音源」でしょうか。
高音で透き通る声「あああ~~~」という声は、北欧に伝わる「ヨルク」です。
自然界とコミュニケーションをとるための道具・方法だともいわれます。
サーミがたった一人でトナカイのソリに乗った時に、その孤独を癒すために歌われるともいわれます。
心の中の声をオトに換える。これほど適切なものはないでしょう。
私たちは「自分の心の中の声」に耳を傾けろと言いますが、意味のある言葉より、ヨルクのようなオトが多いですね。
オトに導かれて生きていくのです。
映画の中にサーミの木製の道具「ククサ」や、豊かなイロの織物・服飾が登場していますね。
世界の民族衣装には、独自の色彩・原色が多いですね。
受験アドバイス
- 優秀なデザイナーは、民族衣装・織物・建築物・工芸品・染料などからヒントをつかんで、独自の作品を造るという。勉強とは多様なセンスを磨くことだ。
- 人工知能は「創造的な活動ができるか、否か」という議論があります。大学入試でも「人間とAIの違い」を論じさせることもあるでしょう。今後、表や図を分析したり、データから読み取れるものを論じさせたり、ディベートのような出題が多くなると予想します。
君のメッセージを聞きたい
「アナ雪2」は空前のヒットを続けています。
世界中の人が主題歌を歌い、映画を楽しんでいます。
下記の数字を見ると、今後の猛爆発を予感します。
12/1(日)までの観客動員数と興行収入
- 観客動員 約338万人(ランキング1位)
- 興行収入 約43億円
映画の製作にあたって「テーマを何にするか」・「どのように描くか」・「どうしたらヒットするか」と慎重に考えたことでしょう。
映画は、観客に対する「貴重なメッセージ」だからです。
今回のテーマは、人種差別・環境問題・女性差別・壁の問題でしたから、いかに「重さ」を、軽やかに、楽しくアレンジするかが課題だったと思います。
その点、見事にクリアーしてヒットさせたのは見事ですね。
さて君は、この人生で何をしたいですか。
未来からの声は、君のメッセージを期待しています。
君の「内なる声」に従って、逞しく行動して「壁」を突破してください。
大学受験では、エルサが持っているような「魔法」はありません。
だから、アナのように「行動的な人間」であって欲しいです。
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