リキッド化した受験生の止まり木
はじめに
新型コロナウイルスの流行もあって、世界中・日本中の社会が分断され、個人・個人がバラバラになってしまいましたね。
いまや、「コロナウイルス」と「人間」との全面戦争に突入です。
国家間の信頼関係も崩壊し、国家と国家が遮断され、深刻さが増しています。
SF小説でも、ここまでのスケールの物語は書けないでしょう。
「集団」として成立する「学校」や「スポーツ」「音楽会」などが中止になり、君はこれからどこに流れていったらよいかと、迷ったり悩んだりしませんか?
これを「リキッド化」とか、「液状化」と言います。
これまでも、イベント等で盛り上がっても、終われば淡々と別れ去っていくことが多くなりました。
「液状化した個人」はなかなか「塊」にならないです。
が、実際の個人は「次の止まり木(ペグ)」を求めて流れを止めないです。
止まり木(ペグ)は、目的にそってできていく
リキッド化した受験生は、志を同じくする「同志」が集まるところに流れます。
これが「君たちの時代の文化」であると思います。
受験生にとって、最上のペグは、「目的を同じくする止まり木」ですから、お茶ゼミ√+の講座のようなペグは、講座内容を見極めて入塾するのがいいです。
自分の意志・目的を明確にして、前向きに行動することを勧めます。
本来、私たちは、自分の意志とは関係なく「国」「家族」「地域コミュニティ」に生まれ・育ち、その場で学び、成長して、集団の文化を習得、協働のなかで育っていくものでした。
が、最近の流れを見ると、急激に「家族や地域のつながり」が希薄になり、自己決定や自己責任が要求されるようになりました。
結婚しない人・離婚・核家族・虐待・家庭崩壊・引きこもり・非正規雇用・働き方改革・転職・格差・IT・疫病・スマホ・パソコン・孤独死する人・・。
「オレオレ詐欺」などで高齢者が被害にあうのは「自己決定力が甘い」から起こるのですね。
急激なリキッド化についていけない「弱者の悲劇」です。
大学入試でも、こうしたテーマが出題されることが多くなっていますね。
受験アドバイス
ジクムント・パウマンは『リキッド・モダニティ』という本で、家族・友人・夫婦・地域・国家という共同体が液状化し、個人が社会を動かす「単位」であると述べています。「孤立」した個人は「自分のペグを求めてさまよう存在」であるとも言います。またリースマンは『孤独な群衆』という表現をしています。それ以前に、スペインのオルテガ・ガセットが『大衆の反逆』を書いています。いまや、テンニースが「ゲマインシャフト」といった共同体が崩壊しているといえるでしょう。
リキッド化を「守・破・離」で見直す
日本の精神を現す言葉として「守・破・離」がありますね。
「守」とは、指導者の教えを忠実に守り、基本を身に着けることです。
「破」とは、教えられた基礎の上に、自分なりの改良を加え試行錯誤しながら自分のスタイルを確立していく。学んだことを自分で発展させていくのです。
「離」とは、様々な試行錯誤・経験をもとに、学んだことを発展させていくこと、自分の型を生み出すことです。
これを、大学の受験勉強に置き換えてみましょう。
まず「守」です。
お茶ゼミ√+に通う中学生から高1生までは、徹底して「守」で行きましょう。
指導者・先生の指導を守り「スピードと量」を意識して、自分の要求レベルに応じた基礎を固めるのです。
次に「破」です。
高1生から高2の秋まで、自分の勉強方法を工夫し、演習を多くしながら「自分の勉強スタイル」を作っていくのです。
「離」は、自分のスタイルを幅広く応用することです。
この段階では、すでに一通りの学習ができているはずですから、受験にとらわれず、読書・専門書などを通して幅広い学問・教養のマスターに心掛けるのが良いと思います。
受験アドバイス
君は「剣道三段に合格した」と喜んでいましたね。剣道の「審査の着眼点や内容」を調べてみると、初段から三段までは「剣道の基礎」をしっかり習得することに、四段・五段になると「応用技と連熟度」がポイントになり、六段・七段・八段になると,「剣士の個性」が大切にされるようですね。基礎重視の三段から、応用の四段以上には高いハードルがあるようですね。このレベル感が大切です。
「守破離」は、剣道・柔道・茶道・華道などで、道を究めるまでの過程を現すものとして尊重されています。これは、勉強にもスポーツにも通じることです。
リキッド化した世界で生き残るためには、守破離の極意を会得することが肝要です。
自然が怒っている
「人間は大自然の一部のメンバーでしかないのに、人間の力で大自然を征服できると考えることは傲慢しかないことを改めて思い知らされた」と長野県に住む朋友が手紙をくれました。
千曲川の氾濫を体験して痛感したそうです。
その通り、人間の身勝手な行為に「自然が怒っています」ね。
世界の大国が、「自分の国の利益ばかり追求」しているからです。
中国もアメリカも地球を守る最低限度の「パリ条約」さえ無視しているから、人間の力が及ばない「自然」が猛威を振るって「人間に警告」を与えているのです。
私は、専門家ではないので詳しくないのですが、新型コロナウイルスについていえば、私たちは、ライノウイルスなど風邪を引き起こすといわれる200種類以上のウイルス、インフルエンザウイルスなど「多種多様なウイルスの中で生活」していて、これを根絶することはなかなかできないですね。
リボ核酸(RNA)は「柔軟な粘土のような働きをする」ので、RNAを遺伝子に持つウイルスは特にいろいろと変異するのだそうですね。
「新型ウイルス」がどんどん生まれる理由はこんなところにあると聞きます。
いま、感染症の専門医である教え子が奮闘しています。
が、果てしない闘いは今後も続くでしょう。
次は君の出番です。
私たちは「新薬の開発」に期待していますが、なかなか簡単にいかないようです。
最終的には、ウイルスと「共生する道」を探すようになるのでしょう。
受験アドバイス
「知は力なり」・・・。「知」とは、自然を征服する知識です。「力」は人間を幸福にする力という意味です。そのためには、実験や観察を大切にした<帰納法>が有効であるというのです。これは、哲学者フランシス・ベーコンが、1620年に発表した著作『ノヴス・オルガスム』にあります。ベーコンは、経験論の祖です。「人間は自然を征服することで幸福になる」という主張の着地点が、新型コロナウイルスとなると「科学とは何か」ということになりますね。
ペストの流行と「パンデミック」
14世紀にヨーロッパで大流行した「ペスト」によって、社会構造が根本から変わってしまったことを、君は世界史の授業で学習しましたね。
農奴制が壊れて、小作農や労働者が生まれたとか、貨幣経済が進展したとか・・・です。
これは、人口が3分の1に減少したことにより「労働不足」が深刻になったことが主な理由ですが、ペストの流行を阻止するために、1377年にベネティア共和国が「隔離」「検疫」の「法律」を作りました。
今回の豪華船の船上隔離は、こうした疫病対策を踏まえたものです。
次の入試に出題されるかもしれません。共通テストでは年号程度。2次の医学部・法学部は小論文や面接です。
ウィーンの「ペスト流行が終焉した記念碑」の前で、私は一緒に旅をしていた医師の友人と「どのようにしてペストが終焉したのでしょうね」と話し合った記憶があります。
また「北里柴三郎博士はノーベル賞をもらうべきでしたね」とも話しました。
北里博士は、香港でペスト菌を発見した人です。
君が目標とする日本の細菌学の先駆者です。
Take responsibility for one's own behavior.
新型コロナウイルスの流行は、国家・企業・地域の「新しいワク組み」に大きな影響を与えるでしょう。
この流れの中で、きっと「新しい社会形態」が生まれると思います。
WHOは遅まきながら「パンデミック」を宣言しましたが、国際的な機関が果たすべき役割・任務を再認識させられましたね。
「世界を統一する政府がない」のですから・・・。ここも君の活躍が期待されるステージです。
「ITの進展」と「バイオテクノロジー」の組み合わせで、変化のスピードが早まると思います。
リキッド化した個人には、国境を越え、自分の意志と責任において行動することが期待されます。
「Looking after number one」ですから。
そして私たちは「ひとりじゃない」ですから連帯・絆を忘れてはなりません。
受験アドバイス
ペストに関連して、グリム童話などでなじみが深い『ハーメルンの笛吹き男』、近代小説の出発点になったボッカチオの『デカメロン』を知っておくと良いでしょう。
ノーベル賞をもらったカミユの小説『ペスト』、シャークスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』・『じゃじゃ馬馴らし』にもペストが絡んでいます。入試問題に関連するかもしれません。文化史と関連させる視点を大切にしてください。
「治療」から「予防」へと意識の転換が必要だ
ジェンナー(英)の種痘ワクチンの開発の後・パスツール(仏)・コッホ(独)・北里柴三郎(日)の研究など、感染症・予防医学は、19世紀後半になって飛躍的に発展しました。
しかし、「治療」ではなく「予防」という考え方は、すべての国と地域に浸透したわけではありません。
先駆的で、勇気ある試みが人々のためになるには、あまりにも環境の整備が遅れていたからです。
私は、中国・エジプト・イラン・インドなど途上国を歩いてきましたが、とてつもなく「不衛生な環境」に唖然としていました。
例えば、中国の「厠」とよばれる公衆便所です。
自宅に便所がない地方都市の現状は嘆かわしいものがあります。酷いです。
国家が軍事費や経済発展に経費をかけるなら、この経費の一部を「国民の公衆衛生に」向けたら、今回のコロナウイルス騒動にはならなかったでしょう。
排泄物・汚物の上に、また排泄物・汚物を重ねていくのですから、悪質なウイルスの温床になるはずです。
インド・アフリカ・東南アジア諸国も似たようなものです。
公衆衛生の意識を高め、予防医学の啓発と行動を「政治・行政が支援」しなければ、環境は改善されないのです。
私たちにとっても「強烈な警告」ですね。
受験アドバイス
受験生は「時」をしっかりつかまなくてはいけません。特に現役合格を目指している人は、「時」を測り「運」と「命」の一瞬を繋ぎ合わせることが重要です。運とは大きな流れのこと、命とはその人が持って生まれた天命のことです。三国時代の「魏」に活躍した李康の『運命論』に書かれています。
今は「まさにリキッド化」が進展するときですから、受験でも、環境改善でも、「時」・「運」・「命」を強く意識しましょう。
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