「バウムテスト」でメンタルチェックをする~「コロナ禍」の中で、受験生の健康を保つために~
はじめに
コロナ禍の下で、学校も塾も「休校」になりました。
この不安定な生活の中で、ストレスが溜まっていたと思います。
否。案外、メンタルが強く「平気」だったかもしれませんね。
そこで、「バウムテスト」でメンタルチェックをしてみましょう。
これは、エミール・ユッカー(E,Jucker)が提唱し、コッホ(Koch,k)が創案したバウムテスト(投影法)を、私がアレンジしたものです。
受験アドバイス
バウムテストは人の深層心理を図ることに使われる心理検査の技法です。投影法のひとつですが、たった「一本の樹木を描く」だけで、その人の無意識の内面を推しはかることができるから「カウンセリング」で使われることが多いのです。
コロナ禍で、「いまは見えない内面的な心の傷」が、個人・社会に大きく影響を及ぼしています。その「入口を知る技法」としてバウムテストをやろうというのです。コメントは「受験生の君」の参考になることに絞ります。
<作業>机の上に「白い紙を1枚」おいてください
- A4の白紙に、「3分」くらい考えて「一本の実のなる樹木」をエンピツで描いてください。しっかりイメージすることが大切です。写生ではダメです。
- 君は、白紙のどこから描き始めましたか。中央からですか。隅からですか。訂正したり、消しゴムを使って、描き直したりしたところはどこですか。
- 次に、自分がどんな気持ちで、どんなことを考えて描いたのかメモしてください。描きながらイメージしたこと・感情・気持の変化を書くのです。
- 最後に、出来上がった”作品”について、君が感じたこと、考えたことを文章にしてください。そして、自分が発展的に考えたことを書いて下さい。
受験アドバイス
「投影法」に分類される心理検査の代表的なものに、「ロールシャッハ・テスト」があります。また、絵を通して自由に連想させて物語をつくらせる「TAT(Thematic Apperception Test)」もあります。
君は、下のイラストを見て、最初に見えたのは、「若い女性」ですか。それとも「高齢の女性」ですか。まず、そこから始めましょう。私には「若い女性」がみえましたが、妻は「老婆」がみえたそうです。なぜでしょうか?深層心理の一つです。(笑)
描かれた樹木を見る
この「樹木を描く作業」を、友人数名といっしょにやると、お互いの「比較」ができて面白いです。
みんなの“作品”を見て、批評しあうことを勧めます。
君と友人。それぞれの紙の上には、まったく「異なる樹木」が描かれていると思います。これがスタートになります。
「左側に傾いている樹木」を描いた人がいるでしょう。
「中央に堂々とした樹木」を描いた人がいるでしょうね。
「右側にちょこちょこっと小さく樹木」を描いた人もいるでしょうね。
樹木に、沢山の「実」を描いた人、小鳥や、蝶々を付け加えて描いた人、樹木の周りに草花を描いた人、リンゴの実のようなものをドカーンと描いた人、枝が伸びている人、折れた枝、切り口、付け根を書いた人・・・。
どれが正解だというものではありません。優劣なんてないのです。
受験アドバイス
心理学にはいろいろな分野があります。「児童心理学」は、玩具の開発に役立っています。「発達心理学」は、人間の成長について学問的な分析をしたり、「青年心理学」は、思春期の心理分析に活用されたり、最近では「高齢者の心理学」が注目されています。
人気があるのは「犯罪心理学」です、しかし、この専門家の一人が、妻を殺害したという事件が報道されましたね(苦笑)。学問と実生活の間には、大きな乖離があるようです。心理学は、精神医学の発達に欠かせない学問です。
まず、「樹木の大きさ」と「樹木の位置」から
さて、君の絵から、何を「読み解くか」です。
コロナ禍で「閉塞的な生活」を余儀なくされた君の心理分析です。
「投影法」を細かく分析すると奥が深いので、今回は、複雑な親子関係などのコメントは除き「受験生の君」のメンタルチェックだけにします。
1. 君が描いた「樹木の大きさ」から入りましょう。
大きな木ですか。小さな木ですか?
何気ないですが、ここが「心理投影のポイント」のひとつです。
では、質問です。大きな木を「画面いっぱい」に描きましたか?
「大きな木」は、君の自信を表します。「休校中」といえども、自分のペースで過ごしていたのでしょう。「バランスがとれた状態」で、「将来への可能性」を伸ばすべく一生懸命に勉強したでしょうね。しかし、「小さな木」を描いたならば、「自信が持てなかった」・「無為な日々を過ごした」という思いが強いのでしょう。きっと、休校中の生活が不満で、「早く学校や塾が始まらないかな」と思っていたと思います。
こうした場合には、「早く立ち直る手立て」が必要です。お茶ゼミ√+・学校の再開はチャンスです。心に空間ができたなら、埋めればいいのです。
2. 次に、紙の中の全体的な「木の位置」はどうですか?
中央ですか?左側ですか?右寄りですか?それぞれ上ですか?下ですか?
ここが「次のチェックポイント」です。
君が「真ん中」に書いたなら、「安定している」のでこのままでいいですね。
しかし、「紙の左側」に描いたならば、ちょっと「情緒不安定だ」と判定します。コロナ禍で、自信をなくして「自己逃避」に陥っているかもしれません。
「左下」の場合は、「心理的に不安定」で、「将来に不安」を感じていると判定します。「右下」の場合は、「目標への達成度が低い」ですね。
この場合は、もう一度「見直し・立て直し」を意識すると良いですね。
受験アドバイス
バウムテストでは、まず、描かれた絵の「全体的特徴」からとらえます。
一つ一つの判定には、下図にあるような「コッホの、Grüwald(グリューンワルド)の空間象徴理論」の考え方に基づいて解釈していきます。今回は細かく解説しませんが、実績のある図式として、多くの専門家の皆さんが使っています。私も、これにそってコメントを書いています。
チェックのポイント・留意したいこと
「樹木の判定」は、主に二つの側面から行います。描くスピード・描いている雰囲気などでチェックすることもありますが、今回は省きます。
- 木や幹といった「樹木の形態」の特徴をみます。
- 紙面のどの位置に描かれているか。「樹木の位置」をみます。
(1). では「樹冠」の形から入りましょう。
大雑把に言って、君の”作品“は、下の四つの樹冠の中でどれに入りますか。
お茶ゼミ√+の人は、「左上の雲型人が多い」と予測します(笑)。
「左下の螺旋型の人」も多いかな?(笑)
そして、お茶ゼミ√+生は、「右下」の人が少ないのではないでしょうか。
案外、志望も目標も似ている人の集団だからです。
「巻き付き型」の人「棚状」の人は少ないかもしれません。
(2). 「木の大きさ」
お茶ゼミ√+生は「大きな木」を、「紙の中央」に描いた人が多いじゃないでしょうか?
「大志」をもって、受験に前向きな人が多いからです。
(3). 「木の位置」
-
紙の真ん中に樹木を描いている人は、気持ちが安定していますね。
-
紙の「右側」に書いた人は強気ですね。負けん気が強いですね。
- 「右上の人」は、何事も計画を立てて慎重。受験勉強も順調。
- 「右下」は自己陶酔型。好きな教科に絞り過ぎないように注意。
-
紙の「左側」に書いた人は、「内向的で弱気」ですね。
- 「左上」の人は、引きこもりがちで、自信がないのかな?
- 「左下」の人は、成績を気にして「前に踏み出せない人」かもしれません。
概して左側に描いた人は、自信を持ってください。
注目することは「枝・実・冠・幹・葉」など
バウムテストは、君のメンタルを「表現された樹木から理解しよう」というのですから、冠・幹・葉・美・枝などに注目します。
「枝」と「実」についてもコメントを付け加えましょう。
(4). 「枝」
枝は、たくさん描かれていると「頑張ろう」という気が多いということになります。夢・理想が多い。君は結構、いろいろなことを考えるアイデアマンかもしれませんね。また、「枝を大きく広げて描いた人」は、心が広く、開放的ですが、案外ドジな性格かもしれません。
逆に、枝が先細りしていたり、尖がっていたりすると、何事にも「攻撃的」だったリ、「批判的」なタイプだったりしますね。如何ですか?
君は、どんな枝を描きましたか?「コロナ禍」という異常事態で、受験生として、自分の長所を伸ばし、欠点をカバーして行くのは大変ですが、ぜひ頑張って欲しいです。
(5). 「実」
枝にしっかり「実」がついている場合は、「目標に向かって実行している」と読み取ることができます。しかし、枝から実が遠く離れている場合は、「目標があるのに何らかの理由で阻まれている」という解釈が成立します。
また、樹木から「落ちた実」が描かれている人は、「目標をあきらめた」と読み取ることができますから、ここで踏ん張ってください。
「樹木」は、無意識の自画像である
樹木は、「無意識の自画像」であるとも言われます。
というのは<人間と樹木だけ>が、スッキリと「上に向かって立つことができる」からだそうです。
これが、人間にバウム(樹木)を被せることができるという意味です。
また「全く樹木を描かなかった人」がいるかもしれませんね。
この人は、「秘密主義」・「殻に閉じこもる人」ではないでしょうか。もう少し開放的にならないと、勉強が苦しくなりますね。
例えば、模試の結果を保護者に隠したり、昔の成績優秀だった自分にこだわったりということです。
「過去は過去で割り切るほうがいい」です。もう一度、「図式」を確認してみましょう。
この図表にそって読み解いていますが、これは絶対ではありません。
「考えるヒント」にすぎません。面談などが必要です。
今回は、私はコロナ禍で苦労している「受験生の心理」に限定していますが、より広い知識を技法に関心がある人は、専門家の指導を受けるなり、大学で心理学を専攻して勉強することを勧めます。興味深い分野です。
なお「幹」の一部が折れている絵を描いた人がいるかもしれません。
この人は「挫折感を抱えている」かもしれません。
折れた幹・枝は、挫折感か、以前に骨折した体験があり、苦しんでいるのかもしれません。
幹だけで、枝・葉・根っこがない人は「元気がない」のかもしれません。注意したいですね。
このほかに「葉」「根」「地面」「それ以外」のものもありますが、受験生には関係ない部分が多いので、今回は割愛します。
受験アドバイス
コロナ禍を避けるために、「ソーシャルディスタンス」・「接触を断て」・「友達と遊ぶな」という指示が出されていますが、人間の内面生活を考えると,こんなに「ゆがんだ」、「いびつな」危険なことはありません。「社会的な分断」が、弱者のメンタルに及ぼす影響は計り知れません。
コロナ禍をカバーする「カウンセリング」が、個人にも社会にも必要です。
「人間の内面の傷を癒すための措置」に対する配慮が欠けています。早急に、たくさんの心理カウンセラーを養成する必要があります。「バウムテスト」は、その。窓口の知識と技法です。そんな意味もあって、今回取り上げました。君が学習する視野の中に入れておいて欲しいです。
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