輝け!君の才能が「出番」をまっている~ピカソ・ミロ・ダリ・ガウディ・北斎・若冲・写楽~
はじめに
人間は、誰も何かの才能を持って生まれてくる
民族・伝統・風土・歴史的背景が「遺伝子」になって伝わる
君は、決して君だけの存在じゃない
自分の力で生きていると考えるが、実は「生かされて」いる存在なのだ
その潜在的な力に覚醒し、顕在化させることが重要なのだ
では、君に与えられた「才能」は何か。それを生かすために必要なことは何か
パブロ・カザルスの『鳥たちの歌』に込められた祈り
君は、チェロのカザルス『鳥たちの歌』を知っていますか。
1971年、ニューヨーク国連本部で「私の生まれ故郷カタル―ニアの鳥は『peace、peace』と鳴くのです」と語り、演奏をした曲です。
旧約聖書によれば、「peace=平和」とは、神の怒りが解けたという意味です。
ノアの方舟で「最後に鳩を空に飛ばした」ところ、緑のオリーブの若葉をくわえて帰ってきた。
そこで、ノアは「人間の傲慢を怒っていた神」の怒りが、ようやく解けたことが分かったというエピソードです。
平和のシンボルの「鳩」と「オリーブの若葉」の由来です。
いま、世界が必要としているもの「自然の怒りを治める力=平和」です。「争い」ではない。
受験アドバイス
荒井 満 著
a thousand winds 千の風になって
Do not stand at my grave and weep; ( )
I am not there, I do not sleep. 私はそこにいません。ねむっていません
I am a thousand winds that blow. 私は千の風になって 吹きわたります
I am the diamond glints on snow. ( )
I am the sunlight on ripened grain. ( )
I am the gentle autumn’s rain. 私は、穏やかな秋の雨になります
When you awaken in the morning's hush, ( )
I am the swift uplifting rush ( )
Of quiet birds in circled flight. ( )
I am the soft stars that shine at night. 夜は、やさしい星になって輝きます
Do not stand at my grave and cry; ( )
I am not there, I did not die. 私はそこにいません。死んでなんかいません
スペイン・日本は鬼才・奇才・天才の宝庫
君はフィギアスケートのハビエル・フェルナンデス選手が好きですか。
羽生結弦選手のライバルでしたね。彼は天才の一人でした。私は大好きです。
スペインは、奇才・天才の宝庫です。特にカタル―ニア地方の出身者に多いのは、歴史・伝統・文化に由来するところが多いのでしょう。
私は、バルセロナに行って「ガウディの建築」を見て回ったことがあります。
「どうしたら、こんな発想ができるのか」
「どうしたら、複雑な建築物にまとめられるのか」
グエル公園からカサ・バトリヨなどを回り、未完成のサグラダ・ファミリア教会へと歩きながら考えました。あまりにも日本の建築と違うのです。
いまから約50年前ですが、建築家の友人から「ガウディの建築物」の紹介をされ、興味をもってスペインに行ったのです。当時は最先端の情報でした。
受験アドバイス
スペインを自動車で走ってみると、何もない「乾燥した高原」が続いているような感じでした。人々は「干からびた土地」にしがみついて暮らしてきた印象です。
だから、セルバンテスは『ドン・キホーテ』で、この過酷な土地に、一層の重税を課せてくる支配者を「強烈に皮肉る物語」を書いたのだと理解しました。
「騎士道精神」に狂ってしまったドン・キホーテの型を借りて、笑いとドタバタの展開の中で、スペインの「栄光と没落」を表現したのでしょう。セルバンテスは、地中海制覇を巡ってスペインが、オスマン帝国と争った「レパントの海戦」(1571)に参加し片手を失いました。捕虜になり、獄中でこの物語を書いたようです。彼は貧しかったので、版権を廉価で売ったら「予期に反して」爆発的に売れたそうです。そこで「続編」を書いたのですが、今度は「売れなかった」という話が伝わっています。
ダリの才能を発見したものは・・・
ダリのような表現方法のことを、日本では「シュール」と言います。
フロイトの精神分析学・マルクスの革命論を背景に「無意識の世界」を絵画で表現しようとしたものです。
ダリの「奇才」は単独で存在したものではなく、歴史的背景と文化的な環境があって生まれたものです。
それにしても、ダリの才能を発見し、育てた背景に興味が尽きませんね。
受験アドバイス
高校時代に東京芸大を目指す友人から「シュール」の解説を聞きました。
何度も話を聞いて、図鑑を見ましたが、どうしても良さがわかりませんでした。
それから、古典派の絵画に親しんだり、印象派やフォービズム(野獣派)の絵画などに触れたりしながら、シュールの絵画に慣れていきました。君も、一度にすべてを理解する必要はありません。「絵画を見る眼」も少しずつ変化していきます。できるだけ、沢山の一流の作品に触れるといいです。「理屈ではなく感性」で共感できる絵画を観ることを勧めます。できたら、自分自身でも描いてみるといいですね。全く異なる発見があると思います。
写楽の活躍はたった10か月だけ
日本にも「奇才」「天才」がいました。浮世絵の写楽です。彼のことは、全くわかっていません。
ただ作品は、1794年から1795年に集中し、当時にあっても「爆発的な人気」を誇っていたのです。
大胆にデフォルメされた表現の浮世絵は、多くの人にショックを与えました。
現在も残っている140点余の作品は、どんな発想で、どのような背景で作品が生まれたのか。興味が尽きません。
どうして、この「飛躍」ができたのでしょう。才能は一気に開花する、という典型です。君の「知的爆発」も同じです。
受験アドバイス
熱海に「MOA美術館」があります。ここの売りは「尾形光琳」の「紅白梅図」です。中央の川をどのように描いたのかという議論が、長い間ありました。
光琳は、染物の「型染め」の技法を使って「波」を描いたではないかと言われます。「デザイン力」です。すごい着想ですね。尾形光琳を代表とする「琳派」の作品は。現在に続く日本美術の大きな流れの一つです。
「鬼才」と言ったら、葛飾北斎が最右翼
西洋絵画にジャポニズムとして大きな影響を与えた作家の第一は北斎ですね。
「画狂人」と自称していたくらいの天才でしたから、その作品の凄まじさには圧倒されるばかりです。
あらゆる分野で作品を残していますが、北斎の絵画・浮世絵に影響されたゴッホなど西洋画家がたくさんいたのは、当然です。
デフォルメされた「波」が印象的ですが、遠近法を駆使した近景の「船」や遠景の「富士山」は見事ですね。大胆な構図・・・。唸るしかないですね。
北斎の才能は「絵を描くのが好き」だから磨かれた点が多かったと思います。
才能は「好き」「好奇心」「チャレンジする意志」の三点で輝きます。
受験アドバイス
俵屋宗達は、尾形光琳と同時代の絵師だといわれていますが、詳しいことはわかりません。京都で、「俵屋」という絵画工房をひきいて屏風絵などの下絵を描くなどをしていたのではないかと言われていいます。
「風神・雷神」図は、ユーモアあふれる表現で、多くの人に、大きな影響を及ぼしています。特に、尾形光琳と酒井抱月が「模写」した作品も素晴らしいです。君は、この三点のうち、どれが一番好きですか。
多彩な能力と活動範囲を持つミロ
ミロは画家、彫刻家、陶芸家であるとともに、広い人脈の持ち主で多様な活動をした人物です。
ミロは「画家」という肩書より、多方面の友人・知人と広域に活動することを大切にしていました。
例えばアメリカの作家のヘミングウエーイやヘンリー・ミラーとの交流です。
彼は壁画や大型彫刻など、パブリック・アートの大作を作成し、ジャンルを超えた活力が伝わってきます。
「随分、変わった絵画だなあ!しかし、ものすごく印象に残る・・・」と思ったので、「ミロのレプリカ」を購入ました。
人物、鳥などをデフォルメされた有機的な形態、原色を基調にしたミロの作品は、激しい色使い、あふれる生命感などでいっぱいです。だから、これまでの「シュルレアリスの作風」とは全く異なる独特の魅力を放っています。
彼の「広く活動の場」を求めていく生き方は、君の参考になると思います。
受験アドバイス
首都マドリッド郊外にロマ人(ジプシー)が集団で住んでいる地域があります。ビゼーの『カルメン』はロマ人の生活を描いています。魅惑的なフラメンコの世界です。また、アンダルシア地方の中心に「グラナダ」があります。アルハンブラ宮殿に残るイスラムの装飾は華麗で独特です。ギターの名曲『アルハンブラの思い出』が好きな人も多いでしょう。毎年、スペインの「巡礼の道」を歩く知人がいます。君もやってみませんか?
多様な民族と文化が混血し、かつ独自性を保つ中で、スペインの文化ができてきたのです。矛盾だらけの世界ですが、それだけに魅力でいっぱいです。
激しさと美しさとを競うなら、ピカソと若冲
「ピカソ」と「伊藤若冲」を並べて考えた人は少ないでしょうね。
ピカソはスペイン南部のマラガ出身です。
時代も背景も異なるけれど、この二人は「激しさ」・「美しさ」・「大胆さ」では、互いに引けを取らないと思います。
素人だから言えることですが、ピカソは、キュビズムの巨匠。
若冲が同じ時代に生きていたら、ピカソ以上の迫力をもって、世界の画壇を闊歩したと思います。
時代が「比較を許さなかっただけ」です。現在のようなグローバル世界だったら、いい勝負になると確信します。
世界には、いろいろな才能の持ち主がいます。一流画家の鋭さは、「時代や環境」に左右されるのです。
自分ひとりだけの頑張りでは、「時代を超越する力」は生まれません。
受験アドバイス
スペインの多様性は、この国の成立過程と深くかかわります。
だから、カタル―ニア地方の独立運動が、いまだに消えないように、フランスとの国境に位置するバスク地方も独立運動が根深く継続しています。
ピレネー山脈の麓に位置するバスク地方の中心は有名なゲルニカですが、ピカソのゲルニカという作品は、ヒトラーが「無差別に爆撃」したことを非難した絵画です。
この地方はフランス領バスクとスペイン領バスクがあります。スペインともフランスとも言えない独特の文化地域です。
日本にキリスト教を伝えたイエズス会の宣教師「フランシスコ・ザビエル」はバスク出身です。彼のことも調べてみたいですね。
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