中国の『三国志』と現代の『三国志』~歴史は繰り返すのか?~

はじめに

君は、横山光輝さんの漫画『三国志』を読んだことがありますか?

長編ですが、私の書棚に全60巻があります。

ドラマティックな展開ですから、とても面白いです。

「人権」とか「虐殺」とかいう観点から離れて楽しむのですが・・・

今回は、『三国志』と『現代の世界』をつなげて俯瞰してみましょう。

『三国志』を読んだことがありますか?

入試で、総合問題・小論文では、こうした「飛躍」の発想も必要です。

「三国志演義」は大衆小説です

『三国志』と『三国志演義』は違います。

魏と蜀と呉という三つの異なる国家の歴史を書いたものを『三国志』というのです。次の「晋」になって、陳寿が「三国の正史」として編集したものです。

『正史』というのは、政権を取った中心勢力がまとめた歴史書です。

「魏書」「呉書」「蜀書」の三部立てで、それぞれの国の歴史を、陳寿は、冷静に「資料・事実関係」にこだわって編集しているといわれます。

諸葛孔明
諸葛孔明 【画像の引用元
張飛
張飛 【画像の引用元
関羽
関羽 【画像の引用元

ところが、この『正史』から、1000年ほど後世の「明代」になって、大衆小説の『三国志演義』が書かれるのです。著者は不明です。いろいろなエピソードが加味されていますから「物語」です。ここで大活躍するのが「曹操」「玄徳」「孫権」「諸葛孔明」です。「関羽」も「張飛」も「曹操」も魅力的な人物として大活躍します。裏切りと権謀術と信義が交錯しています。

ちなみに、吉川英治著:小説『三国志』も、横山輝明著:マンガ『三国志』も、史実から飛躍した創造力を持っています。

受験アドバイス

「魏誌」の一部分に「倭」が記されています。「魏志倭人伝」です。

日本には「記録するという文化」がなかったし、「文字もなかった」ので、当時の先進国である「魏の国史」の中で「東方の野蛮な国」(魏書東夷伝倭人条)として記録されたのです。「邪馬台国に卑弥呼という巫女がいて、呪術で統治している」と記されているのです。

そして、いま、「邪馬台国はどこにあったか」という議論があるのです。

九州にあったという説と、大和にあったという説がありますね。

現代の「三国志」を描いてみると

これからは「飛躍編」です。思い切り飛躍しますよ。

2021年度「共通テスト」の世界史をみると、近年の政治・経済の課題に「かなり深く切り込んでいます」からね。もはや「記憶」ではなく「課題意識」を問われているのです。受験対策として、毎日の新聞・雑誌が必読です。

巨大な覇権帝国「アメリカ」が行き詰まり、トランプ氏が大統領になって「アメリカ第一主義」を掲げたので、一挙に覇権国家としての勢い・プライド・影響力・信頼を失いました。ここに、「経済力を持った中国」が覇権国家として登場してきます。「トゥキディデスの罠(Thucydides Trap)」ということが言われますが、これは、古代ギリシャの「覇権国:スパルタ」と「新興覇権国:アテネ」の抗争になぞらえて表現したものです。

アメリカvs中国の覇権争い

私は、これから20年は「中国」「イスラム」「アメリカ」の三つのグループが競い合うと考えます。<プラスα―>はインド・ASEAN・アフリカ・中南米などで、人口は多いけれど、経済基盤が弱い。政情が安定しない地域を指しています。覇権国家にはなれませんが、影響力を持っています。

これからどうなるんだろう?

大国間だけでなく、国家間で連携・提携で、駆け引きが展開するでしょう。これも「三国志」と同じです。紛争・小競り合いが頻繁に起こるでしょう。

受験アドバイス

「トゥキディデスの罠(Thucydides Trap)」とは、古代アテナイの歴史家、トゥキディデスが“従来の覇権国家”と、台頭する“新興国家”が、戦争が不可避な状態にまで衝突する現象を指す言葉です。アメリカの政治学者グレアム・アリソンが作った造語です。新興勢力が台頭し、既存勢力の不安が増大すると、しばしば戦争が起こるという意味です。以前にも触れましたね。

「新三国志」で、なぞってみると・・・

『三国志演義』から、時代を動かしてみます。中心人物を三人拾ってみると興味深いです。ここからは、私の「偏見と独断」です。飛躍の事例です。

魏・呉・蜀、三国時代の国々
魏・呉・蜀、三国時代の国々 【画像の引用元
  1. 魏の「曹操」は、中国の「習近平国家主席」ですね。仕掛けが多い人です。

    曹操
    曹操 【画像の引用元
    習近平国家主席
    習近平国家主席 【画像の引用元

    中国の習近平国家主席は、世界地図を塗り替えようと「一帯一路」など「仕掛けて」います。世界国家の樹立に必要な<中華思想を体現化>した「理念・理想」の見える化が問われます。野心満々ですね。曹操のように病気が敵です。

  2. 呉の孫権は、イスラム・イランの「ハメネイ師」とします。

    孫権
    孫権 【画像の引用元
    ハメネイ師
    ハメネイ師 【画像の引用元

    イスラム世界は、多様性がありますから、ハメネイ師を代表者にするには、少し無理があります。が、まあいいとします。イスラム世界は世界的な覇権国家を目指さないで、「独自性を堅守」するでしょう。宗教は強いです。アラーへの信仰は不動です。

  3. 蜀の「劉備玄徳」は、アメリカの「バイデン大統領」です。大義を大切に。

    劉備
    劉備 【画像の引用元
    バイデン大統領
    バイデン大統領 【画像の引用元

    アメリカは圧倒的な経済力を背景に覇権国家であり続けてきましたが、現状は国内・外ともに行き詰っています。国内の「偏見」「差別」「格差」という矛盾を抱え、国外的にはEU・日本と同一歩調・同盟関係を継続するでしょう。

受験アドバイス

ハンチントン(米)は『文明の衝突』という本で、「文明が交叉する地点で紛争が起こる」と予言しました。異なる文明の境界に衝突・紛争・戦争が起こるというのです。

中国とイスラムの戦いは、西アジアで起こっています。ロシア・中国の「社会主義」と「イスラム教」です。イスラエルと、パレスティナの争いと同じですね。アメリカとイスラムの戦いです。簡単に解決しませんね。覇権大国の利害の衝突は「理念」「利害」の衝突です。『三国志』と同じです。安易な利他主義は通じません。

混乱の中で、何が生まれるか

「三国志」になぞらえて、ブロックごとに予想スケッチしてみましょう。

勿論、「現状」から「20年以内」しか予測できませんが、「変化の要因」を考えると、予測不可能なことばかりです。が、三国志の「離合集散」をまねて現状を見ると何かが見えてくるかもしれません。

変化の要因は「単一」ではなく「複合」して私たちに影響するでしょう。

そこで、現状で「予測不可能」な変化の「要因」をあげてみます。

『すでに起こった未来』が近くにあります。

  1. IT技術の進歩(ロボット/ドローン/AI)
  2. バイオテクノロジー(ゲノム編集・操作)
  3. 永久凍土の溶解
  4. 量子コンピューターの実用化
  5. 国際テロの勃発
  6. UFO出現
  7. 気象変動
  8. 宇宙開発
  9. 海洋資源の再開発
  10. 人口問題
  11. 食糧補強
  12. 地殻変動
  13. 少子化
  14. 高齢化
  15. 格差拡大
  16. 紛争

受験アドバイス

例えば「中国」と「EC」「アメリカ」の大卒者数を比較してみましょう。

OECDの『21世紀に必要な能力』をみると、2020年の中国の大卒者は「1,000万人以上」です。EC全体の大卒者は「400万人」です。アメリカは「400万人以下」です。ざっと見ただけですが驚愕です。

日本の共通テストの受験者は「50万人程度」ですから、これからのことを考えると身震いします。これからは「研究成果をビジネスにつなぐ力」が試されますね。

(1). 覇権国アメリカとそのグループはどうなるか

アメリカは、「世界の警察」を降りたとはいえ、「東西冷戦」時代に培ったノウハウは覇権国としての存在・影響力を「これからも持ち続ける」でしょう。

9.11 同時多発テロ
9.11 同時多発テロ 【画像の引用元

しかし、9・11テロを体験したように「異なる文明」を持つ国との争いは厳しいですから、EU/NATO諸国・日本など同盟国との関係を尊重する必要性が増すことでしょう。国内的には「様々な矛盾」を抱えながらも、「国威掲揚」を継続しなければ「分断」「社会の混乱」の流れは止まらないでしょう。

海外政策の中心が資源と人口から言って「アジア地域」になるのは間違いないですね。今後「RCEP(東アジア包括的経済連携)」「インド太平洋経済連携」など「合従連衡(ごうじゅうれんこう)」政策を展開せざるを得ないですね。

「自由で開かれたインド太平洋」の概念図
「自由で開かれたインド太平洋」の概念図 【画像の引用元

まさに、「後漢」の末期から「三国時代」の混乱と同じです。

入試では、難関校では「未来から逆相」の観点で論述する力が必要です。

受験アドバイス

アメリカは、義兄弟(同盟国)として「EUとの連携」を抜きにしては生き残れないですね。功利・合理主義で「価値観が通じ合う仲間」です。ギリシャ・イタリアなどが起こす事件は、「三国志」のトラブルと似ています。ドイツ・フランスは手を焼くでしょうが、これらの国は、経済共同体の枠(EU)を離れることができませんね。イギリスは、スコットランドの独立問題・北アイルランド問題を抱えていますから、EUやアメリカから離れて「独自性」を発揮することは難しいでしょう。

(2). 中国の発展と方向

中国の「一帯一路」政策などで、対立・混乱すると思いますが、覇権のための取り組みは「継続」するでしょう。『三国志』の通り、この国は「争いの中で」生き残ってきたのです。「社会主義国:ロシア」との連携・抗争もこの枠で捉えれば理解できます。「玄徳と孫権の関係」のようなものでしょう。

広大な人口を養うために「食糧」と「エネルギー」の確保が最大のテーマです。内政でバブルの崩壊・少子・高齢化を抱えていますから、国内・外ともに「強引な施策」を継続するでしょう。歴史上の王朝の転換期をみれば「混乱と終息」の方向がみえます。

高層ビルが立ち並ぶ上海
高層ビルが立ち並ぶ上海
雲南省の田舎の風景
雲南省の田舎の風景

雲南省のような地域と、港湾部の街の「格差」をみると、きれいごとを言っていられないです。強引な行動を支える「イデオロギー」が社会主義思想です。この思想は、多分に宗教的で、排他的です。「黄巾の乱」のような強烈なエネルギーを民衆から引き出そうとして、思想教育に重点が置かれますね。すでに思想管理が進行していますものね。

受験アドバイス

三国志の中の「赤壁の戦い」は、「長江」をはさんで「陸軍の魏」と「水軍の呉」の駆け引きでしたね。『新三国志』では、米・中の覇権ステージは「宇宙」です。イスラム世界は「蜀の立ち位置」です。現代の戦略家は「個人」ではなく「システム」です。

(3). イスラムとそのグループ

イスラム世界の盟主は誰なのか、わからないです。あえていうならば「アラーの神」でしょう。だから、現世的にはバラバラでも、「宗教的な統一は崩れない」と思います。

私は中東諸国を旅したことがあります。この「砂漠の民(ヴェドウイン)」は、したたかです。国・部族を統一支配できるものは「アラーの神しかない」と思います。「一神教」でなくてはまとまらないのです。それでも「宗派」が別れ、部族の利害が絡み合っていますから、統一できると思いません。

過激な原理主義・穏健な信者・人柄の良い人・駆け引きが巧みな人もいますが、アフガニスタンにみられるように、国家意識も欠如している地域もありますから、覇権国になるのは難しいと思います。

受験アドバイス

潤沢な「オイルマネー」があるうちは良いですが、「脱炭素社会」が進めば進むほど、経済を中心とした課題が加速するでしょう。自爆テロも辞さない「原理主義集団」も抱えていますから、ムスリムとしての団結力は、新しいカタチを求めて動き出すでしょう。

(安達昌二:お茶ゼミ√+特別顧問)

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