<新学期>思い切り前に踏み出そう!!~激変の時代を生き抜く強い意志~
はじめに
桜が咲いて、新学期が始まりましたね。
どの人の顔も輝いています。未来を向いて、前向きだからです・・・。
現実は、コロナが収まらないし、ウクライナの戦争の着地点が見えません。
希望と不安の中の船出ですが、君には「若さ」という武器があります。
これから、もの凄い勢いで環境が変わっていきますが、これをプラスに捉え、思い切り「前に踏み出す」ことにしましょう。
<歴史に学ぶ>日本は、南宋と金の対立に似ています
ウクライナの戦争を通して、私たちの関心は中国の出方に集まっています。
これは直接生活に関係しますからね。改憲・第9条・非核三原則・被爆体験・核兵器の保有・自衛隊の専守防衛・日米安保条約・日米同盟・防衛費・・・
「戦争と平和」「理想と現実」の狭間の中で、「わが国の在り方」が根本から問われています。こんな時、私は歴史を俯瞰してみることにしています。
・・・すると、12世紀の「南宋」と「金」の関係に行き当たります。
置かれた状況が「そっくり」なのです。
片や「経済優先国」であり、片や「軍事大国」であるという点です。
といっても、「南宋」「金」の予備知識がない君にはわかりにくいでしょう。
中国の浙江省・杭州に行くと、全く対照的な「像」をみることができます。
この極端なふたつの像は何を意味するのでしょうか?
ひとつは「英雄・岳飛」です。もうひとつは「手を縛られた宰相・秦檜」です。
12世紀。満州から華北に勢力を伸ばした「征服王朝」がありました、鮮卑・女真族です。やがて女真族は力をつけて「宋」を滅ぼして「金」を建国します。
生き残った宋の一族は長江流域を拠点とした「南宋」を建国します。
華北に女真族の「金」・華南に多民族国家の「南宋」です。
「南宋」は武力で、女真族の「金」に勝てないので、和平を申し出ます。臣下の礼をとり「歳幣を毎年支払うこと」「淮河を国境と定める」など(1142年、紹興の和議)をしたのです。つまり「経済力で平和を確保」したのです。
しかし、南宋の武将「岳飛」たち主戦派は納得せず、金に戦いを挑みます。が、うまくいきません。これに対して和平派の「秦檜(しんかい)」たちは、武力では「金」に敵わないから、臣下になる道を選択したのです。
こうして「南宋の国論はふたつに分かれた」のです。
その後100年にわたり、この関係は続きました。やがて、弱体化した「金」の向こうの「モンゴル砂漠」から、強烈な騎馬軍団が勢力を伸ばしてきます。
これが中国に入って「元」になるのです。
この時代を五胡十六国といいます。よく入試に出ますから整理してください。
さて、この状態は現在の「経済優先の日本」とよく似ています。
「日本」「アメリカ」の関係と、勢力を伸ばし野心満々の「中国」です。
日・米は「安保条約」で繋がり「同盟関係」にあります。が、中国が戦略的に勢力を伸ばし、台湾環境を狙っているのが現状ですね。
では、もし「台湾海峡で有事」があったらどうなるでしょうか。
日本は、「アメリカの傘の下」の平和に過ぎないから「この関係には限界がある」という意見があります。これが現在の「改憲の議論」のベースですね。
君が活躍する20~30年後、「日本」「アメリカ」「中国」の関係はどうなっているでしょうか。少なくとも、現在の延長ではありませんね。
新興の覇権国家中国と、既存の覇権国家アメリカの間で、平和憲法を持つ日本は「どうすればいい」でしょうか。
これは明日の問題ではなく、「今日の問題」ですね。
受験アドバイス
日本人は、鮮卑の流れを汲む民族だといわれます。DNAが「共通する」だけでなく、魚・肉の生食などの食文化も共通しているといわれます。鮮卑も日本人も「新モンゴロイド」に属するといわれます。
清王朝は「後金」を改めて「清」を名乗った鮮卑族の王朝です。
日本と「南宋」は強い繋がりを持っています。平清盛や鎌倉幕府は「宋貿易」を行いました。日本に「宋銭」がたくさん入り流通しました。また沢山の僧侶が留学し、栄西や道元は「鎌倉仏教」を始めました。南宋で発達した朱子学が日本に入り「宋学」とよばれました。
南宋は、江南の開発に努め、農業生産力を向上させ、景徳鎮の陶磁器をはじめ、絹織物・製紙業・木版印刷などが輸出され、交易が活発でした。文化も発達し、さながら「経済大国の日本」のようでした。
<科学の進歩>ヒトゲノムの解読による可能性
科学の発達は、人間を幸せにも、不幸にもしますね。核兵器の使用が現実的な恐怖を引き出している一方で、3月31日のアメリカの科学誌サイエンス誌に発表された「ヒトゲノムの完全解読」は、難病に苦しんでいる人などに光明を与えています。
アメリカ国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)などの国際プロジェクトは100人以上の研究者からなるコンソーシアムです。日本も参加していますが、今回の画期的な成果を導き出したことは素晴らしいことです。
2003年の技術の段階では、解読困難な部分が8%残っていたといいますが、今回は「完了」が宣言されたのです。
ヒトゲノムは約30億対の塩基配列で構成され、細胞の中にある46本の染色体に収められているそうです。染色体の末端や中央にある配列は繰り返しが多いことなどが原因で、解読が難しかったのだそうです。が、今回は新しい手法を開発して、配列の解読に成功したそうです。
私は素人ですから、これ以上の解説はできないのですが、理系に進学する君には朗報ですね。是非、君がこうした分野で活躍する人材になって欲しいです。
受験アドバイス
1925年。「人間は神様が創造された」という聖書の記述を信じる人が、進化論を公立学校で教えることに反対して起こした「スコープ裁判(Scopes Trial)」を知っていますか?テネシー州ディトンで行われた裁判ですが、アメリカでは「モンキー裁判(Monkey Trial)」として知られています。聖書の正しさを主張する側と進化論の正しさを主張する側の対立です。
現在では「創造説」とは言わないですが、それに似たような「インテリジェント・デザイン説」を、公教育の理科の授業で扱うべきだと主張する人たちがいます。私たち日本人はこうしたことに関心が低いですが、世界的な問題として理解しましょう。
<宗教と政治>ウクライナの戦争のもう一つの顔
ロシアの庶民の生活は、大都市部を除いて、田舎に行けば行くほど、非常に貧しくて生活は苦しいと聞きます。国土は広いけれど、豊かな産業に恵まれないので、日々の生活が潤っていないのです。寒く、厳しく、長い冬の生活を乗り越え、耐え忍ぶ生活を強いられているから「宗教に頼る人が多い」のだと、私は思っています。いまだにロシア民謡『ボルガの舟歌』の暗さ・辛さを引きずっているようです。現在も、なおツアーリ(皇帝)支配の時代とあまり変らないのですね。
ロマノフ朝・ニコライ2世・レーニン・スターリンのような専制政治に慣らされた庶民は、豊かな「少数の特権階級」の暮らしとは遠く、貧しく、耐え忍ぶ生活を強いられているのだと思ってよいですね。
だから、家庭にある「イコン」と「教会」を通して、神の救済を期待する祈りが大切にされているのでしょう。庶民は善い人が多いですが・・・。
ソ連が崩壊した時、庶民は家の隅に隠しておいた「イコン」を教会にもっていって教会の再建に努力したのです。庶民の間で「信仰」は生きていたのです。
今回の戦争で、ロシア正教会の「総主教:キリル1世」はプーチンの侵攻を強烈に支持しています。「宗教はアヘンだ」といった社会主義と矛盾しますね。今回は信じられないほど「宗教と政治」が繋がっていることを知らされました。私は旧ソ連時代・崩壊直後のロシア教会を、いくつも訪問したことがありますが、どの教会の内部も煤で真っ黒で荒廃していました。酷かったです。
プーチン大統領は「宗教と政治」を接近させることで「大衆の支持」を取り付けています。今回の戦争に当たり、キリル1世は兵士に「免罪符」を発行し、「核兵器を祝福した」という情報さえあります。この政治と宗教の密着した関係が、プーチン大統領への「大衆の支持の根拠」ではないかと思います。これを理解しないで「戦争」を理解することが出来ないから注意しましょう。
キリスト教の大きなふたつの流れ
ローマ帝国の国教になったキリスト教は、帝国内で「五つの管区」に分かれ本山を形成しました。「ローマ教会・コンスタンティノープル教会・アンティオキア教会・イエルサレム教会・アレクサンドリア教会」です。この中で、次第にローマ教会(西方教会)とコンスタンティン教会(東方教会)が勢力を二分します。しかし、8世紀にふたつの教会は「聖像禁止令」で対立し、「分離」したのです。
ギリシャ正教会は、「一カ国にひとつの教会組織」を具えることが原則です。
が、「コンスタンティノープル総主教庁」が、歴史的経緯から「正教会の代表格」になっています。この「流れ」が、今回の戦争と深く関係しています。
ロシア正教会は、ウクライナ正教会を「自分の支配下」に置いていましたが、2018年に「独立」を宣言されました。コンスタンティン正教会の支持のもとです。この「独立」をキリル1世は怒り「ウクライナの正教会を悪魔よばわり」しています。キリル1世とプーチン大統領との利害が一致しているのです。そこで「政教一致」で洗脳された民衆は、ウクライナの侵攻は「悪魔祓いの正しいことだ」と信じているのです。これが厄介なところです。
入試対策としては、この歴史的経過・背景をしっかり理解しておきましょう。
受験アドバイス
ドストエフスキーの名著『カマラーゾフの兄弟』『罪と罰』等に登場する宗教・信仰はギリシャ正教のものです。執拗さ・暗さ・深さというロシアの風土と繋がる独特のクセ・特徴を知って読み解くことが要求されます。
日本人の宗教心の単純さ・いい加減さ・明るさとは違います。
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