笑いについて~人間は、一人では笑わない~
はじめに
豚は笑わない。象も笑わない。キリンも、ジャガーも笑わない。
笑うのは、人間だけだ・・・
なぜ、人間だけが笑うのか・・・
相手があるからだ。笑いの対象を認識しているからだ・・・。
笑いには質がある。・・・どんなことが笑いを誘っているのか?
「笑いがない人」の人生は、寂しい。どんな場面でも、笑いは必要だ・・・
若くて元気な人は良く笑う。しかし、高齢者に笑いが少ない。
笑いには、エネルギーが必要だ。不安・恐怖があったら笑わない・・・
笑いは他者との関係で生まれる。だから、笑うことに努めよう・・・
リモート社会になって、「健康な笑い」の場面が消えている。危険である。
受験アドバイス
「笑いの語彙」について考えて見よう。英語では、laugh, smile, giggle, chuckle grin, simper, guffaw・・・といろいろとありますね。日本語ではどうでしょうか。
微笑、爆笑、談笑、破笑、哄笑、一笑、苦笑、嘲笑、冷笑・・・と多様ですね。
表現が異なりますが、豪傑笑い、高笑い、含み笑い、泣き笑い、独り笑い、思い出し笑い、照れ笑い、作り笑い、せせら笑い、物笑い・・・と、質が異なりますね。
それぞれ、立ち位置・人間関係で、笑いの種類・内容が違うこともわかりますね。
君は受験生として、どんな笑いを選択しますか。私は「談笑」が得意です。
笑っている場合じゃないだろう!
「笑っている場合じゃないだろう」という言葉は、笑いの中にある「ゆとり」を失っている場合ですね。笑いは、内面にあるものを表現するのですから、不安や恐怖があって、相手に対する「ゆとり」が重要な役割をもっています。
例えば君が「希望通りの、よい成績をとれた時」は笑い、不満な結果の時は「笑えない」ことを思い出すといいですね。わかり易いでしょう(笑)。
人間にとって、笑いと怒り(アンガー)は表裏一体です。空腹など「生理的」な関係からくるイライラや怒りは、他の動物でも見られますが、「社会的」な関係が構築できていない動物が笑ったということは聞きません。ましてや魚も、貝類も笑いとは程遠い存在ですね(笑)。
私は、高齢な人との会話は、必ず笑いで終わるように努力しています。
何事も「笑って終われば」、次につながるからです。深刻な、重い話でも、笑いに誘導することが重要です。笑いは、ヒトを元気にさせるからです。
受験アドバイス
「笑い」についての分析をしている学者が沢山います。哲学者ではベルクソン(フランス)が有名です。しかし、素人には分かりにくいです。興味深いのは心理学者です。河合隼雄さんは「笑う者」と「笑われる者」の関係を考察しています。つまり笑いには「対象」があって、こころの動きが笑いになる。いいかえれば「優越感」が根底にあるというのです。アドラーという心理学者は、人間の心理の根底にあるものは「inferiority complex:劣等意識」であるといいます。これが、すべての行動の起点になっているといいます。異なる観点から「笑い」を考えるのもいいですね。
アドラー心理学の観点から「行動から逆算して笑いを考える」こともいいですね。笑いと怒りは表裏一体です。アンガ―・マネジメントはコロナで変化しましたね。
チャップリンの笑いと風刺
チャップリンの「笑い」には独特なメッセージが含まれていますね。
笑いの中に、人情味とか温かさを指摘する人がいますが、それと同時に「強烈な風刺」があって、単純な笑いをもって、現代の課題を吹き飛ばしています。それ以上に、「時代を切り取り、課題を提供する強さ」を持っていますね。
例えば1941年の「独裁者」をみると、ヒトラーの本質をズバリ見抜き、その台頭の危険性を笑いの中で警告していますね。
受験アドバイス
ロシアのプーチン大統領を映像にしたらどんな映画ができるだろうか。
「笑いによる昇華」というには、あまりにも残酷な「現実の戦争」ですが、ロシアという風土を理解したうえで、「強烈な笑い」による風刺ができる映画が出現して欲しいです。現状は絶望感が大きいのですから、「社会主義の理想とかけ離れた覇権主義」を風刺する画像を見たいです。この点で、チャップリンの笑いは辛辣で、「時代を超えた強さ」があります。
アルカイック・スマイルと国際性
笑いの種類は多様です。笑いが「いろいろなサイン」を含んでいるからです。
この中で、一番わかりにくいのは「アルカイック・スマイル」です。アルカイック・スマイルは、一般的には古代ギリシャの彫像をさす言葉ですが、世界各地には「微妙な表情をしたもの」があります。笑いの「サインが意味するもの」が判りにくいものを総じてアルカイック・スマイルということが多いですね。曖昧さが魅力です。
顔の感情表現を極力抑えながら、「口元だけは微笑みの形を造っている」のが特徴です。これは「生命感と幸福感を演出するためではないか」という人がいますが、不自然な笑いですね。この不自然さが、アルカイック・スマイルの魅力で好まれる理由です。微笑の「奥にあるもの」を想像させるからでしょう。
これまで、日本人は「笑って誤魔化すのが上手である」といわれてきました。
が、最近は「はっきりものをいう日本人」が多くなりましたね。国際化の進展が、曖昧な表現を許さなくなったという意見があります。
入試でも、論理的な表現力が要求されていますね。文章でも、表現力をしっかりマスターすることが大事です。「伝える技術」が必要なのです。
受験アドバイス
笑いには「距離感」が必要です。お笑い芸人の「話芸」「技術」は、この距離感を創り出すことです。彼らはこの距離感から笑いを創造するのです。「笑わせることができる人」は、相手との緊張関係から、やや「距離」を置いて、自分自身は安定した立場に置くことができる人に限られますね。テレビなどで見られる「笑い」は、練り上げられた「台本」が前提にあります。ひとつの「表現技術」ですね。「能」に対する「狂言」があるように、笑いを引き出す「喜劇」は昔からありましたね。
受験でも、過度の緊張は禁物です。緊張がおさまらない時は、「鏡」を見るといいですね。鏡に映った自分をみて、自分との距離感をつくり「笑顔」を造ると、緊張から解放されます。「見る自分」と「見られる自分」の間に「ゆとり」が生まれるでしょう。
笑いの治癒力とは
「笑いには治癒力がある」といわれます。
例えば、笑いは「NK(ナチュラル・キラー)細胞」を活発化させ、がん細胞を攻撃するといわれます。専門家ではないので詳しく書けませんが、「笑いの効用」と考えてよいでしょう。
最近、私は「咽頭がん」を患っている友人と頻繁に会話し、努めて笑う時間を増やしています。「笑いは、自律神経の切り替えが頻繁にできる」と聞くからです。専門家の話では、がんや糖尿病の治療に効果があるようなのです。
派手な会話ではありませんが、私は会話することが楽しいのです。日常会話から生まれる笑いが心地よいのです。この場合、大切なものは「共感」です。共感を伝えあう手段として「笑い」があるのです。生理的にどのような影響を及ぼすか。リモートの時代です。笑いをしっかり研究する必要があります。
受験アドバイス
笑いを「顔の筋肉の活動という点」で見ると、「自然な笑い」と「作り笑い」の間で大きな差異があるようです。顔面筋肉をコントロールする神経が異なるからでしょう。具体的に言えば、自然な笑いは、目の周りにある「眼輪筋」を収斂させるが、作り笑いは、眼輪筋の収斂が起きないそうです。わかり易く言えば、本気で楽しいかどうかですね。本物は強いです。
笑いは「NK細胞」を活発にさせ、自律神経の頻繁な切り替えにより、脳を刺激するので、神経ペプチド(免疫機能活性化ホルモン)が全身に分泌され、医学・脳神経科学に有効な働きをするというのです。ストレスが解消される副交感神経の役割でしょう。医学部へ進学する人は是非マスターして欲しいことです。
笑いと受験
脳や身体能力的にみて、笑うことは、受験を突破する上で非常に効果があるといわれます。君への直接的なメリットは、受験勉強によるストレスを笑いによって、短い時間にリセットするということです。
受験をストレスに感じない人がいますが少数ですね。多くの人にとってはストレスの塊です。時間をかけてのんびり低下させることは出来ますが、忙しい受験生にとって無理ですね。そこで、「一日・数分だけ」・・・漫才やコントで笑う時間を確保することを勧めます。気分転換に笑いを取り入れるのです。
大笑いをしたらストレスがリセットされ、記憶が高まったり、粘り強く考えたりすることができる。これは「脳機能への有効な効果である」いうことです。「NK細胞」の活発化により、免疫力が強まり、風邪やインフルエンザにかかりにくくなるという効果も期待できます。ただし、テレビのお笑い番組にのめり込まないでください。普通に人は、笑いながら数学の難問を解くことは出来ません。短時間の切り替えに注意が必要です。
受験アドバイス
『三人姉妹』『桜の園』は、ロシアの劇作家アントン・チェーホフの有名な作品です。帝政ロシア末期の知識階級の閉塞感を描いた作品ですから、全編が暗いです。
何とか明るさ・希望を見つけ出そうという人々を描いているのでから、そのままみれば、時代の波に乗り遅れていく人々の「悲劇」です。
しかし、作者は注意書に「喜劇」と書いているのです。ロシア革命寸前の物語ですから、時代の変遷で生まれる軋轢・悲劇を、あえて「喜劇として舞台化」するようにメモを残している意図はどこにあるのでしょうか。だから、演出家も俳優も苦心します。腕の見せ所です。『桜の園』では、新興階級の「元使用人」に焦点を当てた舞台がありました。悲劇・喜劇は紙一重なのですね。「笑いの深さ」です。
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