道なき道を行く~開拓者は、どの分野でも勇気を持っている~
はじめに
前方に「小石」を投げてみる・・・
どこに跳んでいくのかわからないけれど、まず投げてみる。
未来に向かって、ボールを投げる・・・
だから、何かを仕掛けたり、何かにチャレンジしてみないとわからないのだ。
何もしないのが一番悪い・・・
私たちは今、これまでにない「道なき道」を歩いている。
受験勉強も同じことだ。漠然とした未来に向かって自分を投げる・・・
コロナ禍への対応も「No Corona」「With Corona」も、先が見えない。
ワクチンの開発も、まだ発展途上にすぎない・・・
ロシアの侵攻で始まった「戦争」も、どんな形で収まるかわからない。
中国も動き始めたようで、不穏な臭いがする・・・
「戦争」と「外交」の駆け引きで争い、10年後の世界の勢力図も見えない。
現実に、今日も殺傷が行われ、難民が生まれている・・・
IT・AIの進歩も果てしない拡がりで、将来どんな形になるか見えない。
ひたすら、現状打破のビジネスエネルギーを燃やしていくだけ・・・
振りかえると、人間は常に「道なき道を切り拓いて」きたのだ・・・
「コロンブスの卵」とは・・・
「道なき道を行く」を考えると、まず、コロンブスのことを思います。
「コロンブスの卵」とは、一見誰でも思いつきそうなことでも、それを最初に考えたり行ったりすることの「至難さ」を指す言葉ですね。
「大陸発見は誰にでもできる」と言われたコロンブスが、卵を立てることを試みさせ、誰もできないのを確かめた後で、卵の尻をつぶして立てて見せたというエピソードに由来するものです。とても大切なことを言っています。
イタリア・ジェノバ生まれだといわれるコロンブスは、スペインのイザベラⅠ世女王の援助を受けて、三隻の船で、大西洋の大海原に出港しました。勿論、航海についての体験と知識を持ったうえですが、「地球は丸い」という「トスカネリの地球球体説」を信じた大冒険でした。
当然、船乗りたちから航海の途中に反発をくらい、失敗する寸前にバハマ諸島・サンサルバルト島にたどり着いたのですが、どんなに強い野心があったといっても、「道なき道をいく」ことには豪胆さがなくては出来ないです。
コロンブスは歴史上の人物ですが、子孫はスペインの貴族になっています。
受験アドバイス
むかし、私はジブラルタル海峡の先端に立ちました。私は「大陸のはずれ」まで行ってみたかったのです。この岬の果ては、非常に強い潮風が吹いていました。この海のむこうは「地獄だ」(地球平面説)と言われていましたから、「道なき道」のイメージをいっぱい膨らめた冒険者たちを思って、岬の最先端まで行ったのです。
バルトロメウ・ディアスの「喜望峰発見」は画期的でした。彼の功績は、ヨーロッパ人として初めてアフリカ南端に到達し、その後のインド到達への道筋を示したことです。彼の探検の成果によって、ヨーロッパ人は中東のアラブ商人を介さずにインド・アジアと直接交易が可能になり、「大西洋岸国家の興隆」と「中東・地中海岸国家の凋落」を導き出したことです。
シルクロード:欲望と政治力が創った交易ルート
シルクロードは、人間の「果てしない欲望」と「政治権力」が創った道だとも言えます。シルクロードは「ステップ路」「オアシス路」「南海路」の三つに分かれますが、現在の私たちが理解しているような「道路建設」でできたものではありません。しかし、好奇心が創った道でもあります。
中でも「オアシス路」はタリム盆地を、少しずつ少しずつ、砂漠の中で水を求めて歩いてできた道です。オアシス都市のクチャ・ホータン・カシュガルなどを目指して隊商が通ってできた道なのです。
旅の途中で挫折した先人の足跡を追って、ラクダ・人骨・物品の残骸を確かめながら、少しずつ足を延ばしたのでしょう。一人では生き残れませんから、「隊商」を組んで集団で行動したのです。砂漠の中にも盗賊がいますから、自然だけが敵ではありません。
中国側からは、匈奴など遊牧騎馬民族への対策と、高い交易による利益を求めて徐々に支配権を延ばしていったのです。前漢の武帝に派遣された「張騫」。ローマ帝国をめざした後漢の「甘英」は、地中海まで行ったそうです。
ロマンもありますが、こちらは現実的な政治的・経済的利益が優先していましたね。
受験アドバイス
現在の中国政府は、タリム盆地・タクラマカン砂漠の地下にある資源を確保するために、ウイグル族とのトラブルを抑えて、西域経営に力を注いでいます。私も、ウルムチやトルハンに行ったことがありますが、新彊省の石油開発が、政治的な意図から積極的に推進されていることがわかります。
アメリカ・イギリス・オランダなどの石油資本・メジャーが独占してきた開発・精製・加工技術を中国が習得し、開発に入った時代だと実感しますね。食糧と資源の確保は、深刻な人口問題を抱える中国政府の最大のテーマですからね。
研究者として未知の分野を選択した:野口英世
野口英世の凄いところは、「すべての道を自力で開拓した」ところです。
学歴がない上に、障害を持つ人ですから、彼の前に立ちはだかった障壁は並大抵なものではなかったはずです。教科書に載っているような聖人君主ではなく、破天荒な性格と行動は「道なき道を行くエネルギー」だったのでしょう。
当時の日本の医学会は東大派と北里派に分かれて対立していましたから、優秀でも野口が入り込む余地は全くなかったので、アメリカに渡ったのですね。
当時ロックフェラー研究所は、新しい研究成果に基づいた「新薬」の開発を急いでいました。が、欧米系の優秀な研究者を確保できず焦っていました。野口はここに応募したのです。当時流行して大問題になっていた「梅毒」の研究、「黄熱病」の研究は、危険を伴うものでした。研究の成果を簡単に出せるものではなかったのです。野口は頑張りましたね。まさに裸一貫ですから。
受験アドバイス
研究者にとって、未知な分野に乗り出すことは冒険です。種痘のジェンナーにしても、ラジウムのキュリ―夫人にしても「危険と紙一重」の中で研究を進め、結局自分自身が犠牲になったケースが多いです。決してスマートなものではありません。
ガリレオはローマ・カトリック教会から危険な人物とみなされ宗教裁判にかけられ、終生幽閉されるような人生になりました。「近代細菌学の開祖」であり、ワクチンの予防接種の方法を開発したルイ・パストールの研究も円滑だったとは言えなかったです。しかし、どんなにしても「地球は動く」のです。進歩は止まらないのです。
ベンチャービジネスはアイデアにあふれている
「未来に向かって投げるボール」のひとつは、ベンチャービジネスです。
私は最近、「どんなベンチャーが魅力的か」という勉強会を開いています。
有志がひとつずつ、関心を持ったベンチャーを紹介し、それに沿って議論する。
楽しいヒントにあふれる話し合いです。
ベンチャーの起業家は、若い人が多いです。学生もいます。
中には、一流メーカーに就職したけれど、退職して起業した人がいます。
未知の分野に進出する野心の強さです。Z世代の逞しさです・・・
資金難を予想しましたが、「期待値」もあって支援者から巨額が集まるようです。
受験アドバイス
未来は「道なき道の開拓」です。新しいシルクロードは、少しずつ開拓されていくでしょう。ベンチャービジネスで調子が良い企業も、10年の経過を見なければわかりません。泡沫で終わる危険性があります。本物であるか否かは、厳しい修羅場を通らなくてはなりません。「企業の50~60年周期」を指摘したのはコンドラチェフです。
「シルクロード」を名づけたリヒトホーフェンのような学者は100年後、「宇宙時代のシルクロード」を何と名付けるでしょうね。
「超スマート社会」(Society 5.0)の実現に向けて
今後の課題として「サイバー空間」と「フィジカル空間」を高度に融合させることが期待されています。これは「仮想的空間」と「実社会」を融合させる取り組みのことです。なかなかイメージしにくいですが、日本の政策がこうした方向・流れの中で展開されていることを理解しましょう。君が活躍する舞台ですから。
将来の社会を、どのように描くか?
これは、私たちの生活に直結する問題です。しかしよく観ると、すでに私たちは「この接点」で生活しています。具体的な例をあげれば、私たちは「キャシュレスの時代」にはいっていますね。「1枚のカード」の中に、大量な情報がはめ込まれていて、買い物もカード決済が当たり前になっています。
スマホを使えば、外出先から自宅にあるエアコンや照明などの家電を操作できます。また、ドアやシャッターの開閉までできます。このように、どこで、誰が、何を、いくら使ったかというデータ・情報がいろいろな分野に繋がっていて、血圧・脈拍などの健康管理や、学力調査などもできる時代になっているのです。
また自販機で買ったジュースのデータが、いつ、どこで、いくつかを超えて管理されチェックされていることです。君は、このIOT(Internet of Things)のことを知っていますね。Society 5.0は、これを「より精緻化した社会システム」を造ろうというのです。
データ処理などのサイバーの高度化に繋がれば、やがて電力や交通システム、サービスロボットなどともリンクするということになると思います。
チョット理解しにくいかもしれませんが、今後の社会の在り方を考える上で重要なことですから、入り口だけでも知っておきましょう。
受験アドバイス
コロナで、ヒト・モノの動きが変わってしまいました。学校の授業も「対面とリモート」の両面で行われることが当たり前になりました。スポーツの大会や文化的なイベントも、各種の制限を受けざるを得ない状況です。今年の入試も、異常事態を想定して対策をとらなくてはいけませんね。人間も組織も「分断」されて、落ち着き先が見えません。しかし私たちは、不安を嘆いていても自滅するだけです。歴史や先人の業績を手本として、「新しい道」を創造しなくてはなりません。「何のために勉強するのか?」。その答えは明快です。人類の「未来のため」にしっかり準備するのです。
お茶ゼミ√+からのご案内