自分で考え、自分で決断する力~入試対策:思考力・判断力・表現力への対応~
はじめに
「これどうしたらいいの?」「早く、答えを教えて・・・!」
最近、他人の言うことは素直に聞くが、自分では何も決めきれないで「他人に答えを求める人」が目立ちます・・・。なぜでしょうね。
でも、本当に決めきれないのか・・・といえば「このアイドルが好きだ!」「この服が着たい!」「これを食べたい」という主張は強い。この場合、重要なことを「自分の決断を先に延しているだけ」に過ぎないのです。
先日、「私立大学の志望校をどこにしたらよいでしょうか」という相談がありました。早くブランド大学の合格が欲しいということだけで笑えました。
充実した学生生活を送りたいなら、一般試験で「現在の実力で80%の得点を取れる大学を中心に、この大学で勉強したいと頑張れる大学を選択してごらん」と答えました。わかっていないから「キョトン!」としていました。
選択を保留する「猶予期間」のことを、モラトリアム(moratorium)といいますが、この「甘え」がいつまでも許されると錯覚している人が多いですね。
結局自分の進路ですから、自分で決めて努力するのが賢明ですが・・・。
大学・学部により学ぶ内容が全く違います。「何を勉強したいか!」です。
同じ文学部でも、慶應義塾大学と早稲田大学は全く方向が違います。早稲田大学の場合は、文学部・文化構想学部ともっと細かく分化しています。「入試問題」をしっかり比較して志望を固めるといいですね。
小此木圭吾先生が「モラトリアム人間」という造語を使って「猶予期間の人間」の特徴を指摘しましたが、発達心理学でいえば、知的・肉体的には一人前に達していながら「責任を先延ばしにしている心理状態」を指します。
受験アドバイス
モラトリアム(moratorium)は、アメリカの精神分析医E・H・エリクソンが用いた語句ですが、本来は政治・経済・金融などの分野で、戦争・恐慌・天災などの「非常時に社会的混乱を避ける」ために使われた語句です。核実験や原子力発電所設置などでは「一時停止」「一定期間の停止」「凍結」を意味します。
ウクライナの戦争で「核兵器の使用」について議論されていますね。
「モラトリアム人間」と同様のことを、アメリカのカーリーが「成長を拒む人間」と定義して「ピーターパン・シンドローム」といい、大人になれない人を指しました。
入試で「思考力」「判断力」を評価する出題が問題になっていますが、背景にはモラトリアム状態を脱して、早く責任のある「考える力」「決断する力」「表現する力」をマスターして欲しいという願いがあります。だから、「考える問題」「判断して決める問題」が今年も数多く出題されるでしょう。
入試問題は、「受験生の立ち位置」でつくられていない
「腹が立つほど・・・」入試問題は、大学の立場・専門家の立場で「作問」されています。受験生は、まずこのことを理解して勉強してください。
実は「これまでも」そして「これからも」同じです。決して、受験生に「親切」ではありません。「得点が取れないなら、あなたが悪いのです」。満点を取る必要はありません。「採点基準」も大学担当者(採点チーム)の判断が最優先ですから、時々「問題点」が指摘されてマスコミが騒ぎますね。
大学側からは「選抜試験だから」「本学が欲しい人材を合格させる」という見解が出されます。
はっきりしていることは、「入試では高・大の繋がりが希薄」ということです。高大接続は「共通テスト」までで、私立大はほとんど関係ないです。
わかり易く言えば、国立大の二次試験・私立大の作問者は、教科書を参考に見る程度で、専門家としての要求・見解を優先しているといっていいでしょう。
私は高校・大学の教壇に立っていますし、20年以上教育産業を体験しているので「仕方がない面」と「何ともならない面」が同居していることを知っています。仕方がない面は、大学教育のレベルを維持するためには、「入試でこの学力までは必要だ」という大学の要請があるからです。現状で「普通高校のレベル」に合わせてしまうと、学問・研究のレベル低下を招きますからね。これがGMARCH以上の「難関校」とよばれる大学の姿勢です。高校生が普通に授業を受けていたら、絶対に到達できない出題レベルです。だから、上位大学は受験勉強が必要です。受験勉強をしながら、知識と教養を高めていくのです。
受験アドバイス
国立大の二次試験や私立大学の問題は、大学・学部のidentityが詰まっていますから、過去問をしっかり見てください。進学したら学ぶ内容が満載です。しかし「こんな問題は教科書の範囲外だよ」と思う問題もありますからね。ギリギリの線で出題しないと「得点差」が出ないので仕方がない面があります。
ブランド大学に入学してしまえば、どの学部も専攻も「同じだ」は間違いです。経済学部・商学部・経営学部、工学部・理学部の違いを履修科目で理解していますか?
たかが「共通テスト」・されど「共通テスト」
入試の合・否追跡を見ると、「共通テスト」のデータに近い結果が出ることが判ります。A判定・B判定などは、ベネッセのコンパスを利用すると良いでしょう。80%ものデータを集積して受験生をカバーしているからです。まさに「アルゴリズム」です。C判定は上位か下位なのかで判断が違います。「共通テスト」は平均点が50点になるように作問されています。が、まだ不安定です。
勿論、二次テストでD判定・E判定から「逆転」ということもあります。
それは、受験生が数学など高得点をとれる「得意科目」を持っている場合に限ります。実力があるのに「共通テスト」を失敗したなど例外があります。
受験アドバイス
DS(Data Science)を学ぶ学部・学校が急激に増えています。2017年の滋賀大学の設置を皮切りに、首都圏では横浜市立大・武蔵野大に設置されましたが、2023年度には一挙に、一橋大に「ソーシャルDS学部」・北里大二「未来工学DS学部」・順天堂大に「健康DS学部」・東京都市大「デザイン・データ科学部」などが新設されるのです。内容は、AIやIoTを学ぶことができる「カリキュラム」が用意されていることに特色があります。背景は、学問的なDS研究の高まりがあるからです。君の「何気ないつぶやき」が蓄積されて「膨大なビッグデータ」となり、社会・経済のビジネスに活用されるわけですが、それを使う「DS人材」の育成が期待されているのです。
また、24年度中にも東京工大と東京医科歯科大が統合して一つの大学になるという新しい報道があります。政府の支援を受ける「国際卓越研究大学」への歩みですが、君の将来の進路選択に深く関わってきますね。
「コロナ」も「戦争」も入試の出題範囲です
「コロナ」も「戦争」も、今年の入試の重要なテーマです。関連事項をしっかり学習しておきましょう。
-
新型コロナに関すること。
「どのような仕組みになっているか」「どんなワクチンが開発されているか」「どんな課題がある」のか。2023年度の入試ではストレートに質問されるでしょう。公民・地歴・国語・英語・化学・物理など、広い範囲で出題が予想されると予想します。
-
また「戦争」に関連することです。
ロシアは核兵器すら使いかねないですね。「脅し」に使っていた程度から、チェチェン共和国ガディロフ首長の「核兵器を使えばいい」という発言さえ出てきました。とんでもない話です。
入試ではウクライナ・ロシアの歴史を確認しましょう。政治・経済だけでなく、今回は「宗教」についての設問がキーになるでしょう。伝統的なロシアの南下政策も旧ソ連時代のことも出題されるでしょう。西アジア・中央アジア、特にアフガニスタンはマークです。ウクライナの地図もね。
難関大学(国公立・私立)二次試験の出題傾向をみると、考えなければ解けない問題ばかりです。暗記中心の出題は終わっています。教科書の欄外・資料集のコメント欄をよく見てください。考える筋道の力が試されています。
大学・学部による「クセ」を見破り、クセに振り回されない力、クセを利用する力をつけることです。
受験アドバイス
「戦争」の課題文の基礎知識です。フランスの社会学者・人類学者のカイヨワは「人間はなぜ戦争をするのか」という問いに対して「国家間のエゴが対立しあい、軍備拡張や戦費の増大が止め処なく進んでいる」と分析しています。
また、ドイツのクラウゼヴィッツは「戦争とは何か」をテーマとして「戦争は、盲目的な激情に基づく行為ではない。戦争を支配するものは、『政治的目的』である」と述べています。最近のロシアのプーチン氏の行動をみると「政治的な目的を達成するため」であることがよくわかります。
コロナ対策から始める
今年も、入試対策は「コロナ禍の試験になる」と覚悟しましょう!
これからの追い込み期間と本番前のコロナは、受験生の致命傷になります。
政府の「経済優先の政策」で、気が緩むことが危険です。あたかも「コロナの警戒期間は終わった」かの錯覚に陥りやすいですが、とても危険なことです。
受験生はもとより、家庭にあっても気の緩みは厳禁です。「コロナがなくなる」はずはなく、「インフルエンザと重なって」猛威を振るう危険性すらあるのです。
- マスクをする・・・マスクをして受験することを覚悟しましょう。
- しっかり消毒する・・・手指の消毒は必須です。家族で協力しましょう。
- 人混みを避ける・・・コロナで隔離されたら、受験どころではないです。
受験アドバイス
君は森鴎外の「寒山・拾得」という短編小説を読んだことがありますか?
寒山・拾得。受験勉強の「対極」にある二人の存在を、勉強の傍らで知っていることも勉強です。禅問答のようですね(笑)。この二人は、中国・唐代の人で「脱俗的な生き方」をしたことで有名です。風狂人ともよばれますが、寒山が中心の「寒山子詩集」は禅詩です。『楓橋夜泊』という拓本を床の間に飾っている家もありますね。
二人は奇行で知られていますが、仏教の哲理に通じた人で文殊菩薩・普賢菩薩の生まれ変わりともいわれます。寒山寺の「除夜の鐘」は印象に残るものです。
お茶ゼミ√+からのご案内