後世への最大遺物・未来への遺産~私たちは何のために生き、何をして人生を終わるのか~

はじめに

君は、人生で何をやり、後世に何を遺したい、と思っていますか?

こんな人生を送りたい・・・

自分の人生は、国家・社会・人間に「何かを遺す人生」でありたい・・・

今回は、内村鑑三の「後世への最大遺物」をベースにして「過去・現在・未来」について考えることにします。併せて「第1回ブログ」を見てください。

彼は、世界的に著名なキリスト者です。「無教会派」を建てた人です。

内村鑑三は「後世への遺物」として遺すものは、①「金儲けすること」、②「事業を興すこと」、③「思想を遺すこと」を話していますが、実は④「それ以上のものがある」というのです。それは何でしょうか?

受験アドバイス

これは、内村鑑三が明治27(1894)年7月に行った講話の記録です。約130年前のものですが、少しも旧くないです。説得力がある内容です。君の進路で「何をしたいのか」を考える時の基礎となるものですから、自分自身で読むことを勧めます。

まず、「金儲けをしよう」!

カネモチになりましょう!!

個人も国家も金持ちになりましょう!・・・内村鑑三がいう第一の遺産です。

カネモチになりましょう!!

最近、日本の経済力が弱まっています。これでは「何にもできません」。

やたらに物価は高くなり、法人・個人の国民負担だけが多くなっています。閉鎖する工場や商店が多く、シャッター通りになった街に元気がありません。

シャッター通りになった街の風景
シャッター通りになった街の風景

内村鑑三は「金儲けは、ある人たちの天職である」と断言しています。「誰にも金儲けができるわけではない」というのです。天職でない人が金儲けすると、「非常に穢く見える」というのです。経済力をつけることは、後世に遺す重要な「遺物だ」というのです。が、遺しようが悪いと害をなすので、「金を溜める力を持った人」ばかりでなく、「金を使う力を持った人」が出てこなくてはいけないといいます。

受験アドバイス

ある時、友人が「カネを、いかに使うかが『文化』である」と言いました。

瀬戸内:直島アート
瀬戸内:直島アート 【画像の引用元

ある人は福祉施設をつくり、文化施設をつくり、海外に学校をつくりました。

私は、静岡県文化財団をつくる「基金」を集めるために奔走したことがあります。

あちこちの企業や団体を回りましたが、随分いろいろな考えを持った人がいました。

活動を通して、私は「利益の使い方」を学びました。人を豊かにするのが文化です。

社会に貢献する「事業を興す」

最近「ベンチャービジネスを興したい」という人が多いですね。社会を変革する事業を興すことは簡単じゃありませんが「やる価値」がありますね。内村鑑三は、400年前に事業を興して「社会に貢献した兄弟」を語っています。

芦ノ湖から水を引く「隧道」をつくった無名の人の逸話です。毎日コツコツと、仕事のほかに山を上・下から掘り続け、隧道をつくった兄弟の話です。

内村鑑三記念堂 石の教会
内村鑑三記念堂 石の教会 【画像の引用元
ベンチャービジネスを興したい

土木事業だけでなく、その他の事業でも、「精神をこめて事業を興す」ならば、事業が次第に大きくなり、人々に貢献できると語ります。

受験アドバイス

浜松市の周辺は「世界的な企業」の発祥地です。トヨタ・ヤマハ・スズキ・カワイ・・。すべてが中小企業から発展し「日本を代表する世界的企業」になりました。底に流れるものは遠州の「やらまいか」精神です。いま、自動車会社はじめ日本の企業は苦しんでいますが、再び立ち上がる時が来るでしょう。

自分の「思想(考え)を遺す」

革命的な「新しい思想」を興し、社会を変革した人がいます。イギリスのジョン・ロックは、後世に大きな影響を遺した学者です。「自由」「平等」「人権思想」の理論をつくったのです。しかし、彼は非常に地味な男でした。

ロックが生きた300年前のイギリスは国王が権力を握っていた時代ですから、人権思想など「彼の思想」は全く社会に受け入れられないものでした。内村鑑三が語るジョン・ロックは、無名で、貧相で、貧しかったけれど「人間は誰も価値ある存在である。個人は国家よりも大切である」という理論を興したのです。その思想がルソーやモンテスキューに影響を与え、フランス革命を起こし、アメリカやイタリア・日本・・・と世界中に広がり、新しい国家体制が生まれたのです。ロックは「思想という遺物」を遺した偉大な人物です。

ロック
ロック 【画像の引用元
ルソー
ルソー 【画像の引用元
モンテスキュー
モンテスキュー 【画像の引用元

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「思想は社会を変革する力」を持っています。暴力犯より政治犯の方が「刑が重い」です。アメリカの独立戦争の発端は、トマス・ペインの「コモンセンス」でした。

コモンセンス(常識)
コモンセンス(常識) 【画像の引用元
資本論
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実践理性批判
実践理性批判 【画像の引用元

共産主義は、マルクスとエンゲルスの「唯物史観」が原点です。人格主義は「カントの哲学」に拠るところが大きいです。孔子の儒学・仏陀の仏教・イエスの思想も「後世に多大な影響」を遺しました。「人工知能」など科学・技術が優先の現代こそ、人間を幸せにする哲学・思想が必要です。

最大の遺物は、「生き方」である

金を溜め・使う才能も、事業を興す才能も、人を動かす思想もない人間は、この世の中に「遺すことはない」のか。内村鑑三は何といっているのでしょうか?

内村鑑三は何といっているのでしょうか?
人間の生き方

彼は「人間の生き方」があると言うのです。具体的に言えば「私は弱いものを助けた」「私はこれだけの艱難に打ち勝った」「私はこれだけの品性を修練した」「私はこれだけの義侠心を実行した」「これだけの情実に勝った」という人間の「生き方」であると言うのです。「後世の最大の遺物」は、特別な人ではなく「誰にでもできるもの」でなければならないのです。それは「真面目に一生懸命に生きることである」と言うのです。簡単なようで、もっとも難しいことですが・・・なるほどです。

受験アドバイス

「自分が施した分だけ、自分に還ってくるのが人生」です。先日、友人たちと「子孫に何を遺すか」と話しあいました。高齢者ですから「有限な生命」を全員が自覚しています。だから「何を遺すか」は切実なテーマなのです。これは「いま生きている自分」に直結することです。当然、カネ(財産)・モノ(事業など)を遺すという人が多かったです。自分の芸術作品を遺すといった人、宗教・精神的な遺産もありました。が、みんなが行き着いたところは、日々のしっかりした「生きざま」「背中を見せる」でした。

<未来への遺産1> 世界初のカーボン・ニュートラル宣言都市

革新的な政策のもとで「人と環境に配慮」した都市をつくる事を宣言した都市があります。デンマークのコペンハーゲンです。この都市は2025年までに世界初のカーボンニュートラル都市を目指すことを宣言しました。この背景にあるものは、内村鑑三の「デンマルク物語」で語られる「ダルガス親子」の植林事業です。彼らは、戦争で荒廃した土地にあう樹木を探し、挫折を繰り返し、研鑚を重ねてデンマークの国土の再生に尽くしたのです。

エンリコ・ミリウス・ダルガスの切手
エンリコ・ミリウス・ダルガスの切手 【画像の引用元
ユトランドの自然
ユトランドの自然 【画像の引用元

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デンマークは、戦争(1864)に敗れ国土が荒廃しました。ダルガスは工兵士官として戦争に参加しましたが、敗戦後、ユトランドの原野を前にして「剣を鋤に代えて」を開拓することを決めたのです。彼は息子と協力して「樅の木の植林」の研究を重ね、豊かな田園を創造することに成功したのです。「戦争に敗れても、精神は破れない民が真の偉大な民」です。ダルカス親子の生き方こそ「後世に遺す遺物」だといえます。

<未来への遺産2> IT技術の進化・利用

猛烈な勢いでIT技術が進化しています。これは誰もが認めることですね。最近では、W杯サッカーの三笘薫選手のゴールライン際の判定です。ボールの中に埋め込まれた「センサ―チップ」機能はIMU(慣性計測ユニット)というそうですが、加速度センサー・角速度センサー(ジャイロ)が埋め込まれていてきわどいライン上の判定が可能なのです。IT技術がスポーツの在り方を変えていく事例です。

しかし、気になることはフェイクニュースです。ウクライナ戦争でも、台風災害でも、偽情報が仕込まれましたね。「混乱を引き起こそう」という悪い企みです。これはIT技術の「負の遺産」です。発展を阻害する要因ですね。

受験アドバイス

W杯カタール大会の「VAR技術」を支える公式球に埋め込まれたセンサーチップ機能は、三次元の慣性運動、並進運動、回転運動を検出できるのだそうです。観客席の最前列前の外周に張り巡らせたアンテナとの連動で計測をしているそうです。三笘選手の場面でも、1ミリ単位での計測が試合を決めましたね。

<未来への遺産3> グローバル人材を育て、連携するシステム

世界・日本の優秀な人材が助けあって、人類・世界が抱えている課題に向かっていくことが期待されます。その連携システムをつくることです。私が第1回に書いた「三つの大志」を実現する人材を育てることは、ダルガス親子の植林と同じです。「何か自分にできるんじゃないか」という情熱を持ち、人材がSNSやインタ―ネットなどで繋がりあうシステムを構築するのです。アイデアを形にし、事業化し、課題を解決していくのです。これが「未来への遺産」です。

受験アドバイス

「グローバルとはアメリカ化である」という見解があります。ロシア・中国の専制・独裁権力の前で、言論が統制され、人権が抑圧され、人間の自由な活動が制限されている現状をみると、私は「民主主義の政治」を後世に遺すことが重要であると思います。

<未来への遺産4> 平和をまもり、築き続ける力

現在から未来にかけて、「平和」こそ「後世への最大遺物」です。

「リヒャルト・クーデンホーフ伯爵」は、「EUの生みの親」の一人です。彼はヒトラーに対抗して「汎ヨーロッパ主義」を主張し、抵抗運動を興しました。彼は、日本人女性クーデンホーフ光子(旧名:青山 みつ)の次男です。ヒトラーに追われアメリカに逃げていく事件を描いたのが、映画『カサブランカ』です。

夫のハインリヒとクーデンホーフ光子
夫のハインリヒとクーデンホーフ光子 【画像の引用元
リヒャルト・クーデンホーフ
リヒャルト・クーデンホーフ 【画像の引用元

受験アドバイス

2015年2月。オックスフォード大学などが発表した『人類(文明)を脅かす12のリスク(12 Risks That Threaten Human Civilization」)』を知っていますか?

  1. 極端な気象の変化
  2. 核戦争
  3. 世界規模のパンデミック
  4. 生態系の崩壊
  5. 国際的システムの崩壊
  6. 巨大隕石の衝突
  7. 大規模な火山噴火
  8. 合成生物学
  9. ナノテクノロジー
  10. 人工知能
  11. その他のまったく未知の可能性
  12. 政治の失敗による国際的影響

です。

このうちの1、2、3、7、10、12が、すでに現実的な課題になっていますね。これに対応することを考え行動することが、私たちにとって「後世への最大の遺産」です。

(安達昌二:お茶ゼミ√+特別顧問)

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