いま、生成AIは・・・~生成AIに振りまわされないようにしよう~
はじめに
最近、生成AIの波が、私達に襲いかかってきています。
それだけ社会的な影響も大きく、私達の生活に直結する内容をもっていますが、情報に振り回されないように注意しましょう。
今回は、生成AIの「現状」と「これから」について整理することにします。
5月11日から、生成AIの「Google Bard」が日本向けにも公開されました。
これは、「Chat GPT」の競合です。その他の大手IT企業で「会話型AIサービス」を開発する動きがありますが、競合が増えるだけで、サービスは「この流れ」に沿ったものでしょう。打ち寄せる「波」は非常に大きく、変化は革命的です。日本独自の生成AIの開発は遅く、ようやく東工大・富士通を中心に理研も加わり、官・民が一体になって動き始めたようです。期待したいと思います。
生成AIの登場は「学び方」「教え方」を変える
Chat GPTなどは、すでに公官庁・大手企業・中小企業が使い始めています。
教育界は、対応に戸惑っている現況ですね。子供たちへの影響を考えると慎重にならざるを得ないですが、文科省の「GIGAスクール構想」が実施段階に入っています。今後、学校教育もタブレット端末機や、デジタル教科書が普及することにより「一斉学習」➡「個別学習」➡「協働学習」へ移行していくでしょう。
しかし、次年度の受験生の君は、「情報を活用する方法」を考えるだけでいいです。冷静に構え、変化に驚いたり、流されたりしないようにしましょう。直近では、AO入試の下調べ・小論文の下調べに活用すれば良いです。
受験アドバイス
政府は5月9日、AIの利活用に関するルール作りなどを議論する「AI戦略会議」を設置する方針を明らかにし、8名の有識者や関係省庁の担当者から成る会議を発足させました。この中で、「教育現場での活用法」を考えることにしていると聞きます。また、G7首脳会議でAIのリスクを踏まえ「技術的な国際基準」を統一したと聞きます。AIによりGoogle・Microsoft・Amazon・Metaなど「プラットフォーマー」とよばれる大手IT企業に、情報が現在以上に集中し、社会への影響力が強まることが懸念されます。国際的なルール整備が急務です。教育界では、中教審が「CITの活用」について検討していますね。
生成AIの「仕組み」を理解しよう!
私は、すでにコラムの第97回で「Chat GPTの可能性と危うさ」を書きました。それ以降も、短期間にものすごい勢いで「政府」が動き、「マスコミ」も報道していますね。このまま放任していると、「生成AIが一人歩き」して危険です。そこで、もう一度「生成AIの仕組み」を確認してみましょう。
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生成AIは「機械学習」ですから、たくさんの「情報」「データ」が必要です。過去のデータから「パターンを学習」し、新しいデータを生成するのです。人工知能といっても「人間の脳」とは違います。
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入力した文章に続きそうな単語を予測して出力するという仕組みを言語モデルといいます。「言語モデル」は、単語や文節の並び方が重要です。機械が膨大な過去の文章を読み込むことで「並び方のパターン」を認識します。そして、各パターンにあらわれる「確率」をはじき出して、質問に繋がる「文字列を表示する仕組み」なのです。だから、豊富な情報とデータが必要です。「強化学習」を重ねていくと、現状は不確実でも、ドンドン精度が高まるのです。
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言語モデルのイメージを例示してみましょう。例えば、「吾輩は猫である」をとってみます。「吾輩」「は」「猫」「で」「ある」を順序よく確認していけば、次のようになります。
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「Chat GPT」は、オープンAI社が開発したGPTと呼ばれる大規模な「言語モデル」を組み込んだ「対話型の人工知能」です。2022年11月に公開されて以降、短期間に急速に広がり、瞬く間に世界中を席巻していますね。まさに「産業革命の再来」です。
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Microsoft社が、この「言語モデル」を取り込み「Bing AI」として影響力を発揮したので、Google社が慌てて開発に力を注ぎました。それが「Google Bard」です。このふたつは、強烈な影響力を発揮するでしょう。
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Googleは世界中にネットを張っている巨大企業なので、検索数も多く、豊富な情報・データを確保しています。私もよく使っています。
そこで、先行したMicrosoftが、改めて5月16日に「GPT plus」を発表しバージョンアップを図り、現在に至ります。
大量のデータ・言語モデル・半導体の開発競争は、今後ますます「対話型AI」を発展させるでしょう。競争しながらレベルアップするのです。
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また、Google、Microsoft、Meta社など「GAFAM」とよばれる5大IT企業が積極的に開発しています。またベンチャー企業の3,500社以上が、研究開発を進めているそうです。日本でも東工大や富士通などが連携し「富岳」を使って開発を進めるそうです。開発が加速したら、IT技術・新薬の創造・医療・エネルギー・自動車など広い分野で成果が出るでしょう。
受験アドバイス
生成AIができる分野を考えてみましょう。入試関連でいえば、すでに金沢大学医学部の合格最低点まで「Chat GPTの能力が到達」したといいます。
- 「イメージ生成」能力・・・画像データを学習し、「新しい画像」を生成する。例えば、写真を手書きのイラスト風に変換することもできる。
- 「テキスト生成」能力・・・文章データを学習し、「新しい文章」を生成する。例えば、小説のフロットを自動生成することができる。論文も書くことができる。
- 「音楽生成」能力・・・音楽データを学習し、「新しい音楽」を生成する。例えば、いくつかのヒット曲の旋律を組み合わせて、新しい曲を生成することが可能。
生成AIを使用する際には「著作権」「倫理的な問題」に注意する必要があります。「ディープフェイク」は、本物そっくりの映像・音声など偽情報を作成することです。最近でも、政治・経済・社会的事件で「危険な情報」がでまわったことがありました。
「教育」分野では、偽データで「カンニング」が懸念されます。この危険性に対して、ニューヨークの公立学校は生徒の「Chat GPTの使用を禁じた」というニュースも伝わっています。「フェイクを見破るAI」の開発が急がれています。
生成AIを有効に使いこなしましょう!
私は、コラムの下調べや、情報の確認のために「Bing AI」を使っています。とても便利です。現在の開発段階では、生成AIが提供する情報には「誤り」もあります。理由は前述のとおり、言語モデルの「単語や文節の並び方」の混乱からくるものです。機械が膨大な過去の文章・データを読み込むことで「並び方のパターン」を認識し、パターンにあらわれる「確率」をはじき出して、質問に繋がる「文字列を表示する」のです。だから、混乱を避けるためには「回答として期待すること」を指示する、「発問」に留意する必要があるのです。私は、回答に対して「2回~4回程度の突っ込み」を入れます。決して、受身はいけないです。
有識者の中には「生成AIに誤りが多く危険だから、使ってはならない」という人もいますが、開発された便利な技術・知識は「禁止してもどこかで使われる」でしょう。今後、開発が進化して「回答が精緻化」し課題は解決されるはずです。君は「情報選択能力」を磨がいて、生成AIに使いこなせばいいです。
受験アドバイス
生徒の立場で「Chat GPTで出来ること」を考えてみましょう。応用してみてください。
- 英作文の課題を校正することができる。
- 課題文の要約・抜き出しをつくることが可能。単元の重要用語集ができるね。
- レポートのたたき台ができる。どの教科も、定期テストの予想問題ができますね。
- 対話可能です。いろいろな相談ができます。対人ではききにくいことも質問できる。
- 大学の志望理由を書くことが可能です。推薦・AO入試に活用できますね。
変化を「前向き」の捉える
私の独善的な認識ですが、AI教育が一番遅れるのは「公立学校」ではないかと思います。大学・高校・中学・小学校のすべてです。「私立学校」の教員は、経営者から「変化に対応すること」が要求されていますが、公立の先生たちは「いままでの教育の方が楽だし、変化は起きて欲しくないと思っている人が多いから」です。「現状維持バイアス」は誰しも働きますからね。
Chat GPTに対しては「そういう状況じゃない」ことを正視するべきです。これは教員すべてに共通していることです。厳しいですが、Chat GPTを拒絶する以前に、無関心・無知・不安が先行してバイアスが働くのです。「先取りしてそれに対応するしかない」と覚悟するべきだと思います。
首都圏の私立の中高一貫校の一部では、すでに積極的活用に取り組んでいるそうです。また、内々に「個人」で使っている人が多いですね。
Googleが翻訳サポートできる言語が「133」にもなりますから、世界中のほとんどの言語をカバーできるのです。先日、タイ語で挨拶したという人がいました。模試などの「学力のレベル」の即したアドバイスを受けている高校生もいました。面談ではききにくいことも、簡単に答えてくれますからね。
学校に「提出する課題の作成」に使ったという人もいます。英語や日本語の「ライティングの添削」で使っている人も知っています。私が興味を持ったのは「自分で開発したゲーム」を楽しんでいる中学生でした。
受験アドバイス
現在の段階で、「CHAT GPTの利用の仕方」を整理しておきましょう。
- プログラミングを組むことができますね。エクセルなどで「何がしたいか」を打ちこめば、自動的にコードを構築し、エラーがあっても改善方法を繰り返すことができます。
- すでに存在する情報を整理するのが得意ですから、要約・追記・新しい物語を作成できます。推理小説を書いてみるのも楽しいです。「弁護士のドットコム」もあります。専門的なツールを探すといいですね。
- 会話が自動化していますから、自分のアイデア次第で「ゲーム」を造ったり、友人と双方向で遊んだりすることができますね。翻訳機能を使えば、遠い国の人との交流も自由にできて便利です。
- 「プロンプトエンジニアリング」は、こうしたことにアクセスできる技術です。このような新しい職業が注目されています。技術のマスタし新しいー職業への窓口を拡大するといいですね。
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