日本人はどこから来たのか:ルーツを探ると・・・
はじめに
私たち「日本人はどこから来た」のでしょうか?
日本人のルーツを調べることは、いつの時代でも関心があることです。
スポーツ界・芸能界・マスコミなどで活躍している「混血」のタレントがいますが、日本人という「基準」は何でしょうか。
教科書では「縄文人」「弥生人」が先祖だと教えられてきましたが、その前に「湊川人」がいることを知っていた人もいるでしょうね。
旧石器時代の「湊川人」が先祖か?
「港川人」とは1970年に沖縄県八重瀬町で出土した男性1人・女性2人の人骨から注目された人類です。まだ、日本列島本土では確認されていないのですが、約2万年前の旧石器時代の遺跡から見つかったのです。旧石器時代の全身骨格で、縄文人の先祖にあたるか否かの論争が続いてきたのです。
DNA鑑定をしたところ、現代の日本人に「遺伝的に直接つながる祖先」だった可能性があるのです。しかし石器などは見つかっていないので、その後の調査により、湊川人は縄文人の先祖ではなく、アジア大陸の南方を起源としたオーストラリア先住民やニューギニアの集団に近いのではないかと考えられています。
「縄文人」だけが先祖とは言えない
日本人のルーツは「縄文人」や、大陸から渡来した「弥生人」による混血説が有力ですが、さらに港川人までさかのぼることになると、わかりません。
青森県から秋田県にかけて、ブナの原始林が続いています。「白神山地」といって、世界遺産に登録されています。ここは原始林ですから、日本人の原始の姿を創造することができます。勿論、奥深くに入ることは許されませんが、入り口だけで「縄文時代の人々」の生活環境をイメージできるのです。
日本は亜熱帯地帯で、豊かな国土に恵まれていますから、採集・狩猟・漁業で食糧を得ることができました。痩せた土地を耕す「農耕」を発達させる必要がなかったのです。これを「遅れている」と表現する人がいますが、とんでもないことです。現在では考えられないほど「高い文化」が発達していたのです。縄文人は、次の弥生人と違って気性が激しい「雄たけび文化」の持ち主だったのではないかと予想されています。
私たちが普段おとなしくても、いざとなると「激しく挑んでいく」エネルギーの源は「縄文人の血」が騒ぐ結果ではないかという人がいます。
宮崎駿さんの『もののけ姫』で、主人公の「アシタカ」が目指した「東の国」の世界ではないかと思います。
三内丸山遺跡で分かった高度な縄文文化
高い文化の存在を裏付ける遺跡があります。
青森にある「三内丸山遺跡」です。文化的に遅れていたと思われていた地域に、高度に発達した巨大な遺跡が発見されたのです。
縄文前期から中期にかけての集落跡ですから、現在から約5,900~4,200年前の集落跡なのです。たくさんの竪穴建物跡・堀立柱建物跡・盛土・墓の他、多量の土器や石器、貴重な木製品・骨角製品などが出土したのです。
縄文時代の特徴的な遺物は「土偶」に描かれた網目模様にあります。
土偶が制作されたのは、紀元前14000年頃から紀元前300年頃までの先史時代だと言われます。偶の形式や形状も、時代や地域によって変化し、縄文時代の文化の発展を反映しています。
土偶は、土や粘土を使って造られた人や動物の形を模した彫刻です。墓地や住居跡から発見されたものが多いです。土偶は、生活や宗教、信仰に関連するものが多いです。豊穣や出産を祈るために造られたと考えられます。
弥生時代は、外来・渡来人の影響が大きい
弥生時代は、紀元前300年から紀元8世紀までの時代です。
弥生時代には、縄文時代と異なる文化の特徴があります。それは、「農耕の発展」や「鉄器の使用」の導入などです。弥生時代には土偶は見られません。
日本列島に移住した弥生人は、DNAの鑑定で、三つに分かれるといわれます。
- 大陸系弥生人・・・朝鮮半島とアジア大陸などから移住してきた人々
- 縄文系弥生人・・・縄文人で直接新しい文化を受け入れた人々
- 混血系弥生人・・・大陸系と縄文系の混血の人々
私が住んでいる静岡に「登呂遺跡」がありますが、弥生時代の遺跡です。だから水田の跡や下駄・赤米が発見されています。
梅原猛さんの『日本の深層』には、日本人の基層になっている文化について興味深い内容が書かれています。一読を勧めます。
稲作が日本文化に遺したものは・・・
弥生人の「稲作を中心とした農耕文化」は、稲作が連作が可能なこと、狭い土地で沢山の人々が定住可能で、共同生活ができることが利点でしたね。
この生活の中で、自然に対する鋭敏な感覚、タテ社会的な人間関係、植物中心の食生活などが形成されてきたのです。先輩・後輩などの原点です。
農事暦に沿って生きる。「ハレの日」は賑やかに、日常の「ケの日」は黙々と努力するというように、個人より「集団」を優先する文化を培ってきました。
「協調性を大切にする」「はっきり自己主張しない」「ホンネとタテマエを使い分ける」などが「美徳」だといわれてきましたが、近年はグローバルに社会になり、国際性が重要になったので、これは「美徳ではない」という声が大きくなりました。情報社会ですからね。
日本文化の特色として「縄文式」とか「弥生式」とかいう言葉は知っていても、その中身を理解する人は少ないですね。改めて考える必要があります。
考古学の話ではなく、日本の基層文化としての理解です。
暮らしのリズムと年中行事
日本の社会が急激な勢いで「農業から工業へ」と変わり、それが「情報社会」へと移行している間に、いつの間にか私たちは、日本人の基層となっている文化を見失っているのではないでしょうか。
さりげない日常の中で、最近は「通過儀礼」といわれるものを軽視する傾向が強いですが、実は暮らしの中にしっかり根付いていることに気づいている人が多いですね。
誕生日・お宮参り・七五三・入学式・卒業式・結婚式・成人式・厄年・還暦の祝い・喜寿の祝い・葬式などです。
生涯を見渡すと、通過儀礼(initiation)は重い「あの時」なのです。
行事を通して「社会的な地位の変化」があることを実感しますね。
純粋な「日本人」はいなくなるの?
ラグビーの日本代表選手の半分以上が、外国籍ですね。
ヨーロッパでは、国籍を変更して他国の代表になって活躍する選手が沢山います。
日本でも、今後いろいろな分野で活躍する混血の人が増えることでしょう。
こうなると「日本人」の定義が問題になりますね。
この課題とは異なりますが、最近政府が「少子化対策」に必死になっています。
その背景となるデータは、国立社会保障・人口問題研究所の「長期人口推移」です。これをみると驚愕する予測が出てきます。「日本人が急激に減少している」というものです。国家としてやっていけなくなるというのですね。
現状を改革しないままにしていると益々「出生率」が低下し、そのまま「少子化」が進み、人口が激減すると予測されます。推計によれば、3300年には1人だけ、3400年にはゼロになるだろう、とさえ言われるのです。混血人が増えることを含めて、予測データ通りにいくとは思いませんが、これから「日本人」はどこに向かっていくのか・・・気になるところです。
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