行け!わが想いよ。黄金の翼に乗って
はじめに
「行け!わが想いよ。黄金の翼に乗って」と、烈しいタイトルをつけた理由は、激変する時代にあって、君に「賢く、強く、生きて欲しい」という願いからです。
すでに君が気付いたように、これはイタリアの第2国歌として愛唱されている歌からの借用ですから、君は『合唱曲』として歌ったことがあるかもしれませんね。
今回は、「音の風景」をテーマに書きます。
愛や情熱は「伝えるもの」であって、説教するものではない
イタリアの歌劇場でオペラ「ナブッコ」を聴いたことがありますが、聴衆の激情に圧倒されます。
ヴェルディ作曲のオペラが、なぜ、こんなにも熱く歌われるのでしょうか。
この歌は、祖国・故郷に対する深い思慕を「みんなで歌う」ことができるからです。
「私の想いを、黄金の翼に乗せて飛ばしてください」という熱情を集団で唄っているからです。
背景にあるものは“祖国愛”ですね。故郷を征服され、約50年もの間、ユダヤの人々が捕囚生活を余儀なくされたという旧約聖書に記されている「バビロンの捕囚」が背景にあります。
イタリアの人々は、この歌に託して「国家の統一」を目指したという歴史を重ねているのです。
いわば、国民の心情・祖国に対する愛情を代弁する歌なのです。
現代に置き換えてみると、「中東・パレスティナの難民」の気持ち・心ともいえます。
彼らは、きっと「悔しい思い」で諸国をさまよっていることでしょう。
スーホの白い馬
君は「スーホの白い馬」という絵本を知っていますよね。
私は、大塚勇三さんが再話し、赤羽末吉さんが挿絵を描いた絵本が大好きです。
息子たちが小さなころ、たくさんの絵本を見せましたが、その中のひとつです。モンゴルの「馬頭琴」にまつわる悲しい話です。
馬頭琴は、チェロやバイオリンのような澄んだ音ではなくノイズが含まれていて、奏でるメロディーは、独特の「草原の風」です。
君に、世界中の絵本・童話に接してほしいと願っています。
そこに、名も知れない人々の喜び・哀しみ・願い・希望が書かれているからです。
その中でも、私は松谷みよ子さんの「龍の小太郎」が好きです。
貧しい長野・安曇野の民話が再構成されています。
テレビの「まんが日本昔ばなし」のタイトル画にもなりましたね。
音と波長。Hzの話
君は物理の授業で「Hz(ヘルツ)」のことを学習したことがあるでしょうね。
むかし私は、単純に女性の声はソプラノ・アルトで、男性の声はテノール・バスという程度に理解して、わかった気になっていました。
ところが、友人からテノールのHz・バリトンのHzは「音域で周波数が異なる」ことを聞いてびっくりしました。
周波数で分割すれば人間の声も楽器だし、ピアノやバイオリンの音も同じなのですね。
「波の形」が音色を決めることも、楽器によって周波数が違うこともわかると面白くなりました。
音楽を物理的に解き明かす。すると、全く新しい面が見えてきます。
歴史や地理も「角度」により見えてくるものが異なります。
これからの学習は、こうした「総合的な観点」が重要になってきます。
タテ割りに切り取る学習より、ヨコ割り、時には「ナナメの観点」から捉える学習の方が、今後の方向として期待されているのです。
音楽の授業に、理科の先生が参加するのは楽しいですね。
デジタル端末機を活用すれば、有効な学習方法になります。
ロマ人(ジプシー)の音楽
君はリストの「ハンガリー狂詩曲」・ブラームスの「ハンガリー舞曲」などを聴いたことがあると思います。
私は、まだ旧ソ連が力を持っていたころに、ハンガリーの首都ブタペストのレストランで、「ロマ人(ジプシー)の音楽隊」に囲まれたことがあります。
日本人が珍しいころでしたから、高度のテクニックで「荒城の月」など日本の曲を演奏してくれて、独特の雰囲気に圧倒されました。楽しかったですね。
この自由な芸人たちは、生活の中の喜・怒・哀・楽を「音」に換えて、ハンガリー音楽の一翼を担っていたのです。
有名なサラサーテのツゴイネルワイゼンは「ロマの旋律」という意味ですね。
どんなに、グローバルな社会になっても、それぞれの民族の伝統や文化を尊重する人間であってほしいです。
「文化の画一化」は避けなければなりません。異なる文化を大切し、認め合うことが基本です。
トルコの「イエニチェリ軍団楽曲」のリズム・楽器
トルコは非常に親日的な国です。
首都イスタンブールは、「東・西の文明」が交錯した独特の雰囲気をもっていますが、私は多様な顔を持つトルコの田舎が好きです。
トルコの地方に行くと、歴史と伝統の違いで、地域により多様な顔と「表情の違い」があります。広い国ですからね。カッパドキア・トロヤもあります。
私は、コンヤという旧い京都のような街が好きです。
「自分の足で歩く」とものすごく興味深い街です。イスタンブールやアンカラとは違った味があるのです。
「イエニチェリ軍団楽曲」は、オスマントルコ時代の軍楽隊の音楽です。
行進のための音楽ですから、気持ちよく快活です。
<ズルナ>というラッパと、<ダウル>という太鼓の組み合わせで「独特の旋律」をもっていますから、一度聴いたら忘れられないほど強烈です。西洋の行進曲とは異なる世界です。
むかし「阿修羅のごとく」というテレビドラマのテーマ曲として採用されて、多くの人に衝撃を与えたことがあります。
行け!わが想いよ。黄金の翼に乗って
君に期待していることは、グローバルな社会で活躍できる人材であって欲しいことです。
第1回に書きましたが、大志は大きく三つに分けられますね。
どんなテーマであっても、君が堂々と発言し、行動している姿こそ理想です。
先日、ブラックホールを撮影するにあたって「世界中の科学者と協働した」ことを、日本側のリーダーが、気負いもせず、堂々と静かに伝えている姿を見て、「立派だ」・「美しい」と思いました。
お茶ゼミ√+は、そうした「豊かな資質」を持った高校生がたくさん集まっているところですね。
だから期待しているのです。
しかし、ダイアモンドは磨かないと光りません。一生懸命に勉強してください。
AIが社会を動かす時代が来ました。
医療・ロボット・通信機器など、信じられないほど有効な「AIを使った生活用品」が開発されていますね。
しかし、この業界の知人によれば「開発の能力を持った有能な人材が少ない」のだそうです。
ベンチャーだけでなく、大企業も、世界的な規模で、多様な人材の獲得に努力しているそうです。
「覇権争い(第7回)」のところで書きましたが、米・中の対立だけでなく、今や日本を含めて「世界中が大きな危機」に直面しています。
非常に深刻な事態です。
あまりにも地球環境・政治・経済・社会・文化・教育・福祉が不透明です。
問題が山積しています。
「次代を担う君」には、ぜひ「課題解決能力」を磨いて欲しいと思います。
その第一歩が大学入試の突破です。
視野を広めて、激しく勉強して「目的」を貫徹してください。
これが「わが想い」です。
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