The Last Rose of Summerとアイルランド問題
はじめに
秋のアイルランドは、紅葉と枯葉の季節に入っているだろう。
朝・夕の寒さに、厚手のセーターを着ている人が多くなったかもしれない。
郊外の家の庭に寂しく「The Last Rose of Summer」が咲いているだろう。
第14回に書いたが、「ハロウィン」はアイルランドが発祥の地だから、どこかの家に「蕪・カブ」をくりぬいた悪魔よけが用意されているだろう。
イギリスの「EUからの離脱」に揺さぶられた北アイルランドとの国境は、「経済特区」になったというが「静か」だろうか。
ネディ・レーガン・クリントン大統領の先祖はアイルランドである。
『ガリバー旅行記』を書いたスウィフトも、日本名小泉八雲のラフカディオ・ハーンそしてオスカーワイルド・劇作家バーナードショーもアイルランドにルーツを持つ作家である。
The Last Rose of Summer
最北の島アイルランドは、荒涼とした静かなところである。
トーマス・ムーアの「この詩の世界」は、夏が終わり、咲き乱れていたバラの花の仲間が、枯れて、たった1本だけ残されてしまったというイメージの詩である。バラに託した哀しさ・辛さを、静かにうたっている。「もうじき、私も行くからね」という歌詞は、バラの花を自分の人生を重ねているのだろう。
さて、詩の冒頭だけれど、君が翻訳するとどうなるかな?試してごらん!
トーマス・ムーア「この詩の世界」Tis the last rose of summer,
Left blooming alone;
All her lovely companions
Are faded and gone;
No flower of her kindred,
No rosebud is nigh,
To reflect back her blushes,
Or give sigh for sigh.
受験アドバイス
「The Last Rose of Summer」と「庭の千草」。このふたつが同じであることを、君は知っていただろうか。アイルランド出身の詩人が書いた名曲を、明治になって、里見義氏日本の風土に合わせて異なる詩にした。「Rose」を「白菊」に置き換えたのだ。本来は、違和感があるはずなのに、異なるふたつの花が、それぞれ融和して、独立した美しい詩になっている。アイルランド民謡の旋律が美しいから、声を出して歌ってみるといい。それぞれ味わいがあって素晴らしい。
10月31日はハロウィン(Halloween)
ハロウィンは、古代ケルト人の夏から冬への季節の変わり目の「悪魔払いの祭り」が起源だといわれています。キリスト教会は、ケルト族への布教にあたり、このケルトの祭りを、カトリック教会の万聖節(11月1日)の前夜(Hallows Eve)にあたるという理屈をつけて受け入れ、それが訛って、Halloweenになったといわれています。
その後、アイルランドからアメリカ大陸に移住した人々が、「野菜の蕪(カブ)」から、アメリカ産の「カボチャ」に代えてくりぬきを作ったので、今ではカボチャのくりぬきの方が親しまれていますね。また子供たちが仮装して、近所の人に菓子をもらいに歩くというようなハロウィン行事を発展させたのだといわれていますね。 君は仮装して歩いたことがありますか?
ディズニーランドのハロウィンの仮装イベントは、日本国内に「秋になったらハロウィン」という文化を普及させましたね。もともと、創業者のウオルト・ディズニーは、アイルランドからの移民の子孫だから、この祭りをディズニーのイベント事業に採用したのでしょう。
アイルランドは「世界の火薬庫」のひとつ
私たちがイギリスとよぶ国の正式名は、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland: UK)です。
この中で「北アイルランド」に注目してください。イギリス政府は、2020年1月31日午後11時(英時間)に欧州連合(EU)から離脱しました。47年ぶりに欧州統合から外に出たことになります。アイルランドと北アイルランドは地続きですから、離脱問題の争点は「国境」になりましたね。アイルランド共和国がEU加盟国であり続ける一方で、北部はEUから離脱するからです。
「EU」と「非EU」の間に「検閲所を設けるか」否か。紆余曲折・駆け引き・議論の末に、北アイルランドは「経済特区」になることで、とりあえず決着しました。
しかし、 北アイルランド住民の中には、離脱への強い反発があり、過去の紛争でテロ行為を繰り返したカトリック系のアイルランド共和軍(IRA)の流れを汲む過激派「新IRA」が誕生しています。
国境付近でテロなどを起こす危険性があるわけです。「離脱」をきっかけに、北部と南部が一つの国になる可能性が浮上するとともに、プロテスタントの住民が落ち着きをなくしているそうです。経済特区の恩恵を受けて「経済的な繁栄を期待する声」もありますが、今後のことは全く予想できません。入試に出るのは「IRA」まででしょう。
受験アドバイス
アイルランド問題の発端は、1534年のヘンリー8世の離婚問題からです。もともとアイルランドは、カトリック教徒の国でした。国王ヘンリー8世は、自分が離婚したいために、ローマ教皇と対立し、イギリス国教会を設立・自分自身が首長になったのです。
影響力がある指導者が、私的理由で国家闘争を生み出した例です。
その後、イギリス人(プロテスタント)をアイルランドに入植させ、植民地化する政策を展開したので、カトリック教徒から入植者に対して、根強い反発が起こりました。弾圧・迫害・闘争・テロが複雑に絡み合うことになったのです。これが、いまも継続していますから「火薬庫」なのです。
また、1845年から49年の4年間に、主要食糧の「ジャガイモ」が疫病のために壊滅的な破壊され、約100万人が餓死し、カナダ・アメリカ合衆国などに移住しました。人口がピーク時の約半分に激減した記録が残っています。今年の大学入試で「北アイルランド問題」が、どこかで出題されるでしょう。基本は「イギリスのEU離脱」です。
苗字の先頭につく「Mc」は「息子」という意味
「McDonald」は「Donaldの息子」という意味の苗字です。「マクドナルド」を英語で書くと“Mc Donald's”で、“Donaldの息子”という意味になります。
「マック」には、“Mc”と“Mac”という2つの表記法があって、前者は、アイルランド系で、後者はスコットランド系だといわれます。スコットランド系も、ゲール語のルーツでいえば、アイルランドに行きつくともいわれます。
マックのハンバーグを食べながら、こんなルーツを考えるのも楽しいですね。
ちなみに、Mc、Macで始まる姓をいくつか挙げてみます。
マクドナルド(McDonald)、マゴニグル(McGonigle)、マッカーサー(MacArthur)、マックイーン(McQueen)、マグワイア(McGuire)、マクマホン(McMahon)・・・軍人・俳優・政治家・実業家が多いですね。
受験アドバイス
ノーベル賞をもらった、イェイツの有名な詩を紹介しておきましょう。君の年齢では早いですが、やがて人生を振り返る高齢者になったら「When You are Old」と、この詩を味わうかもしれないからです。
その時、お茶ゼミ√+で学んだことを覚えていて欲しいですね。
When you are old and grey and full of sleep,
(年をとって、まどろみがちになったら)
And nodding by the fire, take down this book,
(暖炉の傍で、この本を取り)
And slowly read, and dream of the soft look
(ゆっくり思い出してごらんなさい)
Your eyes had once, and of their shadows deep;
(自分が若かったころの、瞳の輝きを)
*以下は、自分で訳してください
How many loved your moments of glad grace,
And loved your beauty with love false or true,
But one man loved the pilgrim soul of you,
And loved the sorrows of your changing face;
And bending down beside the glowing bars,
Murmur, a little sadly, how Love fled
And paced upon the mountains overhead
And hid his face amid a crowd of stars.
When You are Old W.B.Yeats
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