東京オリンピックから学ぶもの~もう一度「オリンピック憲章」を見直そう~

はじめに

コロナ禍と猛暑の中で「東京オリンピック」が終わりました。

各国のアスリートたちは、猛暑の中で健闘し、沢山の感動をくれました。

私は、サッカーの<ブラジルvsスペイン>の死闘が、心に残っています。

日本の選手団でいえば、君と同じ世代のアスリートの活躍が嬉しかったです。

特に、体操の橋本選手・北園選手らのさわやかな活躍に感動しました。

オリンピックは、プロより、素人臭いアスリートの活躍が好きです。

受験勉強に置き換えていえば、選手たちの熱い戦いを、刺激に受け止めるのが最高ですね。

コロナ禍のオリンピックは、コロナ禍の受験に通じます。

「黒船」にゼウスは乗っていませんでした

競い合う競技は楽しめましたが「黒船にゼウスは乗っていませんでした」ね。

オリンピックの課題は「第52回」「第53回」に書きましたが、皮肉なことに「ゼウス(理念)」が希薄でも、オリンピックという「国際競技大会」は、イベントとして実施可能であることを証明してしまいました。

「オリンピック精神」より、ベルリン大会以降の“国威掲揚”と、ロス大会以降の“企業利益”を両輪として、これからも大会は継続していくでしょう。

次は北京大会ですね。中国とIOCの典型的な「両輪のリンク」です。

受験アドバイス

「オリンピック憲章」を確認してみましょう。オリンピック・ムーブメント(6)に「オリンピック競技大会は、個人種目または団体種目での選手間の競争であり、国家間の競争ではない」と明記されていますね。しかし、大会を振り返ると、現実は「オリンピズムの原則」から離れて、国別のメダル争いが派手に報じられています。

入試では、勝敗やメダル数の競争ではなく「憲章」「ナショナリズム」「商業主義」に沿った出題が予想されます。総合問題・小論文のテーマとして最適ですからね。

才能に「華」を咲かせた選手たち

競技によって「華」の形は異なりますが、私の独断と偏見によれば、「スターNO.1」は、体操の橋本大輝選手です。君と同世代で10代ですね。

世界の一流選手に交じっても物おじしない。内村航平選手がこだわった“個人総合”と“鉄棒競技”で、金メダルを取ったのは見事でした。

裏方に回ってチームに献身した内村選手もさぞかし嬉しかったことでしょう。

また、大怪我を乗り越えて頑張った北園丈琉選手は、諦めない・挫けない若者の逞しさを示してくれました。このライバルを中心に体操競技は発展していくことでしょう。

受験アドバイス

橋本選手は、高校に入ってから「徹底的に体操の基礎」を叩き込まれ、高2になって素質を開花させたそうですね。田舎の少年が、ドンドン高い技術を習得し、大きな大会を通して強くなっていく。感動です。高校に通学するのに3時間かかったそうですが、日本体操協会が企画する研修会にも積極的に参加して、技を磨いたということです。君も「甘え」は禁物です。現役生は「これから」伸びていきます。

諦めないという「強さ」

「諦めるな!」「粘れ!」という言葉をよく使います。が、今回のオリンピックで、これは「強さ」なのだということを再認識したシーンがありました。

卓球の“混合ダブルス”で見せた伊藤美誠・水谷隼ペアの準々決勝「対ドイツ戦」です。卓球は11点先取でゲームは終わる。対戦相手に10点先取されて「絶体絶命」。ポイントは<10-6>。1本のミスでゲームが終了するのですが、ここで1点ずつ、挽回していく。デュースに持ち込んで「逆転する」というところです。

実力が拮抗しているからできることですから「諦めないレベル」まで、自力で到達していることが前提になりますが、水谷・伊藤選手が、難敵の中国ペアを破って優勝してしまうという、その後の展開をみると「諦めない強さ」を痛感しました。凄かったです。

受験アドバイス

「共通テスト」で、期待する成績がでなかったとしても、「逆転できる教科」を持っていれば「諦めない強さ」を発揮することができます。夏から秋にかけては、高得点を取ることができる教科をひとつ以上鍛えましょう。志望校の出題傾向に沿った切り札をつくるのです。この教科・この分野では、絶対に「得点」できるという教科です。

メキシコ大会の銅はアマチュア時代のものです

1968年のメキシコ大会で、サッカー男子は「銅メダル」を取りました。

残念でしたが、今回は、53年ぶりのサッカー銅メダルが取れませんでしたね。

杉山隆一選手(清水東出身)と釜本邦茂選手(京都府立山城高出身)という歴史に残る名選手を要し、「プロ化」が進んでいない「アマチュア主体」の当時のサッカーでも、“後進国の日本”が獲得した貴重なメダルです。

私の母校は藤枝東高校・妻の母校は清水東高校ですから、サッカーの名門校です。私が高校生の頃、砂ぼこりのする母校のグランドで、日本サッカーの父西ドイツの「クレマーさん」が指導していたことを思い出します。

いま、ドイツで活躍している長谷部誠選手は後輩ですが、藤枝東の出身です。

武田修宏氏・内田篤人氏・長谷川健太監督らは清水東の出身です。

メキシコ大会でコーチとして参加していた岡野俊一郎さんから、私が直接聞いた話ですが「杉山選手の俊足を生かすために、何本も、何本もトップスピードを保ったまま、ウイングからボールをセンターに上げる練習を繰り返した」そうです。

また、初戦の相手・ナイジェリアの情報が全くなかったので、人脈を駆使して「敵方の情報」を得たそうです。能力を最大限に活かした練習を繰り返す。他国の情報を集める。その下で獲得した「銅メダル」だったのです。

なお、オリンピック憲章で「アマチュア」という言葉が消えたのは、1974年です。サッカーで「プロの参加が認められた」のは、1984年・第10回ロス大会からです。半世紀が経過して、「サッカー環境が全く違った」のです。

受験アドバイス

受験も同じです。君の能力を最大限度まで活かすためのテクニックを大切にすること。多様に変化する進学情報を広く集めて、それを有効に活かすこと。

競技も勉強も、基本は「個人戦」ですが、学校や塾で「One Team」を実現させたところが強いですね。お茶ゼミ√+は「受験指導のプロ集団」です。

勝利の女神「ニケ」

勝利の女神「ニケ」を船頭に飾った軍船が、私は好きです。英語の「Nike」はギリシャ神話に登場しますね。ローマ神話では、ウィクトーリア(Victōria)になります。

サモトラケ島のニケ(ルーブル美術館)
サモトラケ島のニケ(ルーブル美術館) 【画像の引用元

地中海は、古代ギリシャ・ローマ時代の公海で「貿易の要」でしたから、航海の安全を守る女神(Nike)への信仰が厚く、多様な彫像が刻まれたことが想像できます。「サモトラケ島」で発掘された像は、その中のひとつです。

私は、パリのルーブル美術館で初めて見た時、しばらくの間、動けませんでした。君には、直接見て欲しいです。

受験アドバイス

オリンピックの強力スポンサー・スポーツ用品メーカー「ナイキ」のロゴは、この女神の翼をイメージしたものです。映画「タイタニック」でも、船頭に両手を伸ばした主人公たちのデザインも「ニケ」を模したものでした。

これからの「共通テスト」や私立大学の出題にデザイン・マンガ・画像が出題されると予想します。多様な知識を探求し、総合的に考える力を試すには適材ですからね。

著作権の関係がなければ『鬼滅の刃』なども採用されるかもしれません。要注意です。

大神ゼウスのための祭典・・・

第52回」「第53回」に書きましたが、古代ギリシャのポリスは「ゼウスの祭典のために休戦」してオリンピックを開催しました。IOCのバッハ会長は、広島を訪問し、「平和の理念」を演出しました。君は、この行動をどのように感じましたか。古代ギリシャで「開催反対のプラカード」が掲げられたという記録はありません。新しい価値(キリスト教)が広まるにつれて衰退したのです。

献花するIOC会長
献花するIOC会長 【画像の引用元

『巨額な経済負担を強いられる近代オリンピックは、第10回ロサンジェルス大会では、立候補する都市がなく、方向転換をして、民間企業のスポンサーから資金援助を受けること・オリンピックグッズを販売すること等が決まった』

と、私は書きましたが、今回の猛暑に中の「強引な開催」「大会運営」にも大きな影響を及ぼしました。室外で競技する選手たちは、特に酷かったです。

受験アドバイス

大きなイベントは、「商品の見本市」の側面を持っています。商業主義(CM)ですから、開会式のドローンや卓球の水谷選手のサングラスに「問い合わせが急増」しているそうです。「施設」「運営のシステム」「アスリート」も観点を変更すれば「商品」です。理念の向こう側にあるものです。スポーツも「理念より市場原理」です。

入試対策:海外情報に注意しよう

  1. ベラルーシの選手の亡命

    私たちは、「東欧」についての知識の関心や理解が低く、君も、入試でどのように勉強したら良いか迷いますね。しかし、ここが盲点です。ベラルーシのオリンピックアスリートが母国に帰国するのではなく、ポーランドに亡命する事件がありましたね。これをネタにして、東欧の現状と課題を整理しましょう。

  2. ロシアの東欧戦略は、旧ソ連と同じ。

    1949年、ソ連を中心とした衛星国家を経済的にリンクさせたものが、コメコン(Comecon)でした。国家や民族の自主権を奪い、産業も「参加国家の分業」を促進するシステムをつくったのです。

    だから入試対策としては、東西の冷戦をベースにして、現代史の流れを、旧ソ連から「いかに国家・民族が独立するための事件」だったのかにポイントを置くと理解しやすいでしょう。「共通テスト」のレベルでは細かなことは不必要です。東欧各地の「地域」と「リーダー」と「事件」を整理しましょう。

    私立文系学部の受験生以外は、年号を覚える必要はありません。

  3. 東欧の事件の一覧をつくりましょう。

    リーダーの人名・首都・事件の発端になった場所を地図に落として、キーワードにそって100~120字以内のコメントをつけてください。

    • ワルシャワ条約機構・・・アメリカのマーシャルプランへの対抗・参加国
    • ハンガリー事件・・・1956年。ナジ・イムレ首相
    • ポーランドのワレサ・・・1980年独立自主管理労働組合「連帯」
    • チェコスロバキア・・・「プラハの春」・「二千語宣言」・ドゥプチェフ
    • ユーゴスラビア・・・チトー大統領・スターリンと断絶・死後の混乱
    • ルーマニア・・・チャウシェスク・共産党独裁的政権
    • ルガリア・・・スターリン主義・ジフコフ
  4. シベリウスの交響詩「フィンランディア」を、君は知っていますね。

    美しい旋律と、ドラマティックな展開。フィンランドの民族性を強調した曲です。私は、指揮者・交響楽団の全員がフィンランド人の演奏を聴いたことがあります。歴史の重み・民族の願い・民衆の情熱に感動しました。

    この音楽は、フィンランドの「カレワラ」という民族叙事詩とリンクしています。医師であるリヨンロートはロシアの帝国支配の下で失われていく民族の「民間説話」を粘り強く拾い集め、フィンランドが独立に大きな影響を与えました。

(安達昌二:お茶ゼミ√+特別顧問)

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