<生命>:小さきものへ やがて 花咲くものへ
はじめに
小さきもの・・・それは生命です。
地球に生命が誕生して、それが発達し、進化して、その一部が私たちになったのです。
「生命への畏敬」なくして、私たちの生存の意味はないのです。
小さなものが、成長して、やがて花になる。多様な花になるのです。
しかし、これを破壊しようとする力が働きます。それが戦争です。
私たちは、この小さな生命を守る義務があるのです。
受験アドバイス
英語に、「silver lining」という言葉があります。これは、「どんな困難な状況にも希望がある」という意味で使われることが多いそうです。
ロシア軍の侵攻に対するウクライナの人々の抵抗をみると、フランス革命の1792年の「ヴァルミーの戦い」を思い起こします。オーストリア・プロイセンの「プロ軍団」を前に、「戦争の素人」の市民たちが「革命の精神で勝利」した戦いです。プロイセン軍にいた文豪ゲーテは「この日ここから世界史の新しい時代が始まる」と日誌に記しています。
ロシアの侵攻に対する抵抗を、後世の歴史家は何と記録するでしょうか。歴史を観る眼です。
地球と生命の起源の仮説
東工大の丸山茂徳特命教授らによる「全地球史アトラス」は、非常に興味深いです。文科省の研究費補助金を受けて、仮説ですが「地球の生命の起源」を2014年から動画(全12章)で発信しています。興味深いです。
生命は、動物も植物も魅力的な「輝き」を持っています。
いま、枯れ木から「見事な桜」が開花しているように、宇宙といわず、地球の春はあらん限りの生命の輝きを放っています。
この輝きを消そうとする力が「戦争」です。生命を分断する力は「地球と人類を破滅させてしまう」でしょう。私たちは何としても、これを阻むことが重要です。平和と安全の問題を、真剣に考える必要があります。
受験アドバイス
戦争を継続・発展させようとする権力者とロシア市民を同じにすることは出来ません。しかし、現状では同一視せざるを得ないのが悲しいところです。権力者は、市民の反戦デモを強圧力で押さえつけているという情報があります。
歴史を振り返ると、1905年、「パンと平和」を求めた貧しい人々のデモに向けて、当時の権力者(ロマノフ王朝)は発砲して抑えつけました。「血の日曜日」です。ここから、ロシア革命がはじまりました。
ウクライナの戦争が、大きな節目になった
小さな芽を育てるためには、水をやり、手をかけ、太陽に当てなくてはならない。時には、土壌をひっくり返して「新しい養分」を与えなくてはなりません。生命は、再生と復活の繰り返しです。
今後の「国連の組織・体制の変化」を予想して、次の質問に答えてください。
- ロシアは国連の常任理事国(5大国)として留まれますか?
- 君なら、教科書のロシアを何と書き換えますか?
- 大学入試の出題にどのような出題が予想されますか?
今年だけでなく、三年後を睨んだ時、国際社会はどのようにロシアを受け付けているでしょうか。許されることと、許されてはならないことがあります。
小さく生まれた「不信感・変化の芽」が、新しい「世界平和の方向性」を生み出すのでしょうか。
私は、第67回のコラムで『現代の三国志』を書きました。「アメリカ」と「中国」と「イスラム」の三極です。当面は、米中の覇権国の争いでしょう。
ロシアは、このウクライナの戦争で「社会主義体制の中国」の一部となって、今後の生き残る道を模索するでしょう。大国ロシアの夢は潰えるのではないでしょうか。イスラムはロシアの石油の補填で存在感を増すでしょうか。
受験アドバイス
恐いのは、「中国」と「アメリカ」が拮抗する「台湾海峡」です。
アメリカ駆逐艦と中国海軍が、互いに台湾海峡を航行したことで、非難するメッセージを発表しています(2022年3月17日)。ウクライナの問題は、台湾海峡を挟んだふたつの強国の争いと同じです。東アジアの安定は、日本にとって限りなく重要です。
2023年度入試では、中国の近代・現代史をマークするといいでしょう。
「台湾海峡」を挟んで、中華人民共和国と中華民国が、どのような歴史的経過を持っているか。なぜ、このような重大な問題が起こったのかなどを整理しましょう。
ロシアの国力:基礎知識
広大な国土・面積こそ世界一ですが、人口は1億4千万で、日本をわずかに上回る程度です。経済規模は日本の3分の1以下、米国の10分の1以下で世界の12位です。GDP(国内総生産)は韓国をも下回ります。
その国が、中東や朝鮮半島情勢で発言権を確保している理由は、国土に眠る「石油」と「天然ガス」です。
輸出量で天然ガスは世界第1位、石油はサウジアラビアに次ぐ世界第2位です。国家財政のほぼ半分を石油・天然ガスが支えています。
ロシアは石油・天然ガスの供給地として、サハリンの開発を進めています。庶民の貧しい生活と新興財閥の豪華な生活の間に、大きな乖離があります。
受験アドバイス
ウクライナへの軍事侵攻に対する日本政府の制裁措置に反発し、ロシアが、2022年3月21日に、一方的に「平和条約交渉を中断する」と表明しました。ロシア政府の体質を如実に示しましたね。民主主義国の手続きとは全く異なる独裁国家の手法です。
日本は、サハリンの資源のLNG開発「サハリン2」に投資してきましたが、国際法を無視する行動に対して慎重に見極める必要があります。
しかし、日本のエネルギー問題はますます緊迫しますから、入試でも資源・エネルギー問題がデータ資料などで取り上げられることが予測されます。
ロシアとクリミア半島の歴史
ロシアは歴史的に「南下政策」をとり、黒海への出口を求めて、クリミア半島に触手を伸ばしてきました。23年度入試に出題される可能性が高いですから、大雑把に振り返ってみましょう。
まず、18世紀前半に、ピョートル大帝はアゾフ海に進出を試みますが、「オスマン帝国」に押し戻されます。18世紀後半になると、今度はエカチェリーナ女帝がクリミア半島に進出を試みますが、失敗します。
そして、19世紀になってクリミア戦争(1853~56)を起こしますが、イギリス・フランス等の支援を受けたオスマン帝国に撃退されます。
1877年、態勢を立て直したアレクサンドル2世は、露土戦争を起こし、弱体化した「オスマン帝国」と戦います。勝利を得たロシアは、1878年に「サン=ステファノ条約」でスラブ系国家を独立させ、ブルガリアの自治権獲得など有利な条件を獲得します。しかし、これを快く思わないイギリス・オーストリアの妨害にあいます。
そこでドイツのビスマルクがリードするベルリン会議が開かれ、「ベルリン条約」でロシアは譲歩を迫られます。この会議で「オスマン帝国」は実質的に解体します。
受験アドバイス
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- サン=ステファノ条約で、オスマン帝国から独立した国を三つ答えよ。
- ➡ 【ルーマニア・セルビア・モンテネグロ】
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- 黒海に面し、ドニェストル川・ドナウ川・プルート川に挟まれた一係争地で、ルーマニアからロシアが獲得した地域を答えよ。
- ➡ 【ベッサビア】
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- クリミア戦争で敵味方なく介護し、のちの国際赤十字社のもとを築いた女性を答えよ。
- ➡ 【ナイチンゲール】
2023年度入試では「オスマン帝国」を出題する大学が多いでしょう。
ロシアのウクライナ侵攻の表裏一体だからです。
次の「オスマン帝国」の歴史を一問一答で整理しましょう。
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- 1689年トルコは、どこの都市の包囲に失敗したか答えよ。
- ➡ 【ウイーン】
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- 1699年トルコが放棄した国と条約を答えよ。
- ➡ 【ハンガリー・カルロヴェッツ条約】
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- 18世紀にムハンマド=アリー総督が分離独立させた国を答えよ。
- ➡ 【エジプト】
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- 1839年アブディルメジト1世が実施した改革を答えよ。
- ➡ 【タンジマート】
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- 1853年のクリミア戦争で対戦した国を答えよ。
- ➡ 【ロシア】
光を求めよう! 光を探そう!
旧約聖書で「神は光あれといった。すると光があった」と創世記に記述があります。
光は生命の源泉です。「平和は光」です・・・。
文豪ゲーテは「もっと光を!」という言葉を残して、この世を去りました。
「光合成」は、異質のものをつなぎ合わせて、新しい生命・物質を生み出す作用です。
だから、壊れたものの中から、確実に新しい生命が生まれるのです。
ヒロシマに原爆が投下されたとき、「ここは永久に不毛の土地になった」といわれました。
私たちは信じ、恐れました。しかし、大地は生命をよみがえらせ、私たちを感動させました。
私は、第57回のコラムで、大木惇夫さんの組曲「土の歌」のことを書きましたが、この中の第7曲「大地讃頌」を、君は合唱曲として歌ったことがあるでしょうね。
ロシアは「母なる大地」を持っています。ロシアはそこに還るべきです。
受験アドバイス
歴史の中で「生命の輝き」をみると、新しい国家の建設が開かれた時は「優れたリーダー」を輩出していますね。「オスマン帝国」も、スレイマン1世など卓越した帝王がいました。
が、後半になると「崩壊の歯止め」がかからなくなります。
入試では「最初と混乱期」が出題されますから、崩壊の過程をしっかり学習しましょう。
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- 「ミドハド憲法」を制定した皇帝を答えよ。
- ➡ 【アブディルメジト2世】
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- 露土戦争(1877~78)で敗れたロシアと結んだ条約名を答えよ。
- ➡ 【サン=ステファノ条約】
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- ベルリン会議・ベルリン条約の仲介をしたドイツの宰相名を答えよ。
- ➡ 【ビスマルク】
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- 皇帝の専制政治に反発した1908年の革命を答えよ。
- ➡ 【青年トルコ】
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- 1922年にトルコ帝国が滅亡した時のリーダーを答えよ。
- ➡ 【ロシア】
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- カピチュレーションとは何か答えよ。(これが「帝国」を滅ぼしましたね。)
- ➡ 【生命・財産の安全、治外法権(領事裁判権、免税)などの保障を在留外国人に特権的に認めることを定めた国際的条約】
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