金融教育が、必要な時が来た!~世界の経済と家庭の経済の関連は深い~

はじめに

「最近は景気が悪くて、元気が出ない!」

「商品が売れない。どうしたらよいのか?」という声が多いです。

「最近は景気が悪くて、元気が出ない!」

この調子なら、資本主義経済をやめて、社会主義経済にすればいい、という声があります。しかし、現実は厳しい。計画経済は失敗しているのだから・・・

第73回第75回で触れた「人新世」の観点から、社会主義を主張する人がいますが、あくまでも「頭の中で考えたものにすぎない」と、私は思います。

国家が経済活動を調整する社会主義国はどこも行き詰り、破綻した・・・。

私も中・高時代に、不景気もないし安定した社会が理想だと教えられました。

なぜ、理想的にみえた「計画経済」がうまく機能しなかったのだろうか。

受験アドバイス

金持ちが威張り、貧乏な人との間に格差が目立つ資本主義経済に腹が立っています。

これと異なり「計画経済の社会」は、目標が明確ですべてが計画され、人々が「平等」であるバランスを重視した社会だとも教えられました。計画経済とは、経済の資源配分が資本主義のように「需要と供給のバランス」で動くのではないのです。

格差が目立つ資本主義経済

言い換えると、市場の「価格調整メカニズム」に任せるのではなく、「国家管理の物・財バランスに基づいた計画」によって配分されるのだから、「理想的」に見えます。経済は「国家の管理下」におかれますから、需要・供給のバランスが保たれます。「自由な企業活動」は許されません。が、大国ソ連は崩壊しました。「経済の行き詰まり」「情報の非公開」に主因があることを考えると、計画経済の理想は「絵に描いた餅」に過ぎなかったのでしょうか?

なぜ、計画経済は失敗したのか?

私は、東欧の諸国が社会主義体制の時、妹夫婦が住むハンガリーに行きました。ある日、運悪く電球がひとつ切れてしまう「事故」に会いました。「じゃ、電球を買いに街に行ってこよう」としましたが、電気屋さんがありません。

「どこに行けばいいの?」というと「役所だ」いうのです。役所で、書類を書いて提出します。担当者から「三か月後に配給される」という書類をもらって帰りました。電燈がない室内は暗いままです。「困ったなあ!」と嘆いていると、妹がどこからか「電球」を入手してきました。どうしてできたのでしょうか?妹は笑って答えませんでした(笑)。

電球がひとつ切れてしまう

「計画経済」は社会全体の需要を見込み、それにそって計画的に生産する調整システムです。これなら、余分に作ることもないですから「無駄」がなくなりますね。不景気に悩むこともなくなり、景気変動もない「安定した社会」が形成できるというのです。

この「誰にも平等で理想」に見える「共有財産」の社会は、一見合理的に見えますが、「電燈の例」のように「矛盾が多い」ことがわかります。

怠惰が流行
さぼっていても「平等」が保障

仕事を一生懸命やっても、さぼっていても「平等」が保障されるのですから、怠惰が流行し、あげくは「行き詰るのは当然」ですね。むかし、競争しない小学校の運動会で「手を繋いでみんなでゴール」する風景のようなものです。

受験アドバイス

人間は、天使のように「前向きで克己的」である反面、動物的で「怠惰で自己中心」な厄介なものです。計画経済は、人間の本質を取り違えていたことが失敗の原因だと思います。「集団生活」「集団教育」を推進し「精神の洗脳」を企てたこともありましたが、期待した成果とは無縁でした。計画経済が失敗した理由を大別しましょう。

人間の本質
  1. 国民ががんばって働いても給料が上がらなかった
  2. 企業経営の効率化ができなかった
  3. 経済システムが消費者の需要に対応できなかった
  4. 政府の「中央計画局」が、需要と供給のバランスを読み切れなかった
  5. 政府が「情報公開」を制限していた

「金融教育」が必要になった!

相変わらず「オレオレ詐欺」が減らないし、闇金融から借金して苦しんでいる人がいます。困ったことですが、これはしっかり金融についての「知識・学び」が欠如していたからです。私も「フィッシング詐欺」で苦労したことがあります。巧妙な手口で高齢者や若者を狙う詐欺行為は、これからも続くでしょう。金融教育は必要です。

フィッシング詐欺

2022年度から、高校で「金融教育」が必修になりました。これは「お金に対する教育をするべきだ」「学校で金融について学習が必要だ」という声に対応したものです。これまでも証券会社・銀行などの専門家がスポット式に講演をしてきましたが、「系統的な授業が必要だ」ということで改訂したのです。生きていくうえで必要な「知識を学習する場」が必要だからです。

生活設計

受験アドバイス

高校の新学習指導要領では、おカネの管理や運用についての学習は、①生活設計・家計管理 ②金融・経済の仕組み ③消費生活・金融トラブル ④キャリア教育の四分野に分かれ、236項目の目標が定められています。中学校では金利を理解したり、貯蓄や運用、ローンの仕組み、リスク管理などを学習することが主体です。高校では契約、景気変動・中央銀行の金融政策、金融商品・消費生活などが加わります。「実生活に即した学習」は、今後ますます大切になります。

重要さを増す中央銀行の役割

「企業のガバナンスだとか、著作権侵害だとか、経営の縛りが多くて窮屈だ」「もっと自由に営業活動をしたいのに、制限が多くて困っている・・・」という声が、企業の経営者から聞こえます。

本来、資本主義は「自由競争が原則」です。社会全体との「バランス」は市場が「自動的に制御する」、というのが自由主義の立ち位置です。

アダム・スミス
アダム・スミス
神の見えざる手
神の見えざる手 【画像の引用元

では、「自分勝手に利益を追求する競争」を放任したらどうなるでしょうか?資本主義経済でバランス機能が無視されたら、「少数の富裕層」と「たくさんの貧困者」が生まれ、不景気・恐慌・社会不安が起こったのですね。

現代の市場活動は、「政府」と「中央銀行」に拠るコントロールが必要です。中央銀行は銀行の銀行ですから、日本銀行やアメリカのFRS、欧州の中央銀行のECSなどの役割が重要だというのです。日本の景気策は「金融庁」と「日本銀行」が握っていますね。日本経済の振興のためには、この二輪が機能することが重要です。

中央銀行は、市場への資金の送り引きでインフレやデフレを調整するのです。そのために「情報」を集めて分析し、政策を決めるのです。君は、この経済・金融分野を目指すのもいいですね。

1929年の世界恐慌を克服するために、アメリカは公共事業に投資の比重を増やしたり、社会保障制度の拡充を計ったりするなど、いわゆる「大きな政府」の役割を果たしました。これが「ニューディール政策」です。これは、イギリスの「ケインズの経済学」に拠るところが多かったのです。自由放任を制限して「政府の役割」の大切さを主張する内容でした。

ジョン・メイナード・ケインズ
ジョン・メイナード・ケインズ
経済格差

近年は「資本主義市場に、一部社会主義経済を導入する」という、混合経済・二重経済が中心になっています。第二次世界大戦後の各国は、経済を安定させるために自由放任より「混合経済」を採用する必要があったからです。日本は新自由主義を経済政策の柱にしましたが、「経済格差」が拡大しました。

受験アドバイス

イギリスの産業革命を支援する経済理論は、アダム・スミスの「国富論」に始まります。また、ベンサムの「功利主義」、J・Sミルの「自由論」など、資本家の立場に立った論理は現在も生きています。

ジェレミ・ベンサム
ジェレミ・ベンサム 【画像の引用元
カール・マルクス
カール・マルクス 【画像の引用元

リガードの比較生産費説・比較優位説は、「国際分業」を考える上で基本的な理論です。しかし、マルクスの経済学は「経済の在り方が社会の在り方を決める」といいます。政治も文化も思想もです。誰が資本をもって生産するのか、誰が工場や機械など生産方式を持っているのかが基本であり、この生産と生産様式を「私有化」から「共産化」することがマルクス経済学の原型です。計画経済はここから来ていますね。

国際分業とその限界への対応

「これは、日本製です」「made in Chinaが多いね」「こちらの原材料はブラジルです」というような会話・表示が目立ちますね。

国際分業

自由貿易では、国家と国家との関係で分業を行うことが基本です。「国際分業」は、それぞれの国において「割安で生産できる物」を互いに多く生産して「輸出しあう」ということで、「コストを削減」を進めるシステムです。これまで日本は、「原材料は外国に頼る」が「工業製品を外国に輸出する」という国家であるとしてきましたが、ロシアのウクライナの侵攻で一挙にこうした「国際分業のシステム」が崩れてきました。ロシア産の石油・天然ガスが「戦略兵器」になってしまったからです。困ったことです。

受験アドバイス

国際分業は「平和」の上に成立しています。しかし、コロナ禍で貿易が途絶えた途端「マスクなど、生きていくのに必要な製品」を作れない国が現れるなど、「負の側面」が明快になりました。グローバリゼーションは、新しいものを手に入れたいという人間の欲望を原点として成立しています。日本経済は「自給率」という新しい壁に当面して解決策を求めています。

資源をめぐる国際競争の激化

キャッシュレスや金融のデジタル化の進捗のスピードは速く、「金融教育」は待ったなしです。一方、今後の国際経済を考えると「資源をめぐる国際競争」の激しさが増すでしょう。この厳しさの下で、私たちは如何に生きるかが問題です。例えば、中国と対立している「尖閣諸島」の問題は、漁業だけでなく海域に眠っている「推定1,000バレルを超える石油」をめぐる争いでもあるといわれます。中国の海外進出は「資源の囲い込み」を狙ったものだといっても言い過ぎではないようです。

また、電気自動車のバッテリー向けに必要な「リチウム」はレアメタルですが、その埋蔵量はチリやボリビアに偏っているそうです。競争の激化です。

受験アドバイス

「世界経済の動向」も、日常生活に即した「金融教育」も、生活者の観点からみると「同じ次元」の問題です。すべてが繋がり関連があるからです。先日、日本経済新聞が「フェアネス指数」を発表しましたが、内容をみると ①政治的安定 ②人権や環境への配慮 ③経済の自由度の三分野から課題を拾っています。君は広い視野で世界の動向を見ながら、日常生活を見つめる人間であって欲しいです。

(安達昌二:お茶ゼミ√+特別顧問)

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