第四の波~コロナ後の世界の潮流~
はじめに
君は『第三の波』というアルビン・トフラーの名著を知っていますか。
この本は1980年に出版され、世界中の人に読まれ大きな影響を残しました。
トフラーは「未来学者」です。現実的な課題をベースに分析しています。
彼は、人間の歴史を「大きく三つの波」に分けています。
「第一の波」は農業革命です。新石器時代に始まる採集から農業生産へ。
「第二の波」は産業革命です。現在の工業化社会をつくりました。
「第三の波」は情報革命です。脱産業社会の到来を意識せよ、というのです。
そして、いま私は「第四の波」が来ていると思います。
「第四の波」はコロナ禍で起こった
急激な勢いの「第四の波」は、私が勝手にネーミングしたものですが「コロナ禍」による世界の一変を指します。
世界は、コロナで「根底から変革」を余儀なくされました。
今回の波の特徴は、突然に、激しく、社会構造の変革を迫った点にあります。
これによって、既存の「未来予測」の修正を求められているのです。
第22回の「リキッド化」・第30回の「すでに起こった未来」に繋がります。
受験アドバイス
文科省は「未来予測」で「20年後に実現される技術」を出しました。(20/6)
コロナ禍を受けて、20年後の君は「どのような技術環境の下」で仕事し、暮らしているのか。現在の「受験勉強の先にあるもの」を考えるヒントになります。毎年「科学技術白書」が発表されますので、データと資料について関心を深めるといいですね。
「第一の波」は、農耕による変化
アルビン・トフラーは「農耕」による食糧生産により、人々の生活が一変した点に注目します。
採集生活から、農耕による生産への転換です。
「第二の波」は、産業革命により生まれた
「第二の波」は産業革命です。
18世紀にイギリスに始まった革命は、生産基盤を「農業社会から工業社会へ」と転換させました。生活が一変しました。
産業革命の進展により、人口の都市集中化、新興都市の誕生、労働問題、社会主義、帝国主義も生まれました。
これは、君が実感していることですね。
トフラーは工業化の限界を「産業社会は終焉」と捉え、これからは第三の波「情報化社会」に入るというのです。
そして近年は、国家も企業も、「IoT」、「ビッグデータ」、「AI」などが普及した新しい産業構造のアップデートを試みるところまで来ています。
では「第四の波の特徴」を、次の五点から考えてみましょう。
- スピード・・・どのくらい早いスピードで変革を迫っているか
- 強烈さ・・・波はどれくらい強く、激しいか
- 広がり・・・波の拡大の広さ・範囲はどれくらいか
- 持続性・・・波は、これからどれくらい持続するのか
- 発展性・・・波は「別の新たな波」を引き出しているか
(1). スピード
コロナ禍の下で、波はものすごいスピードで、社会の変革を迫っていますね。
特にIT化が進んだことは、君も実感しているところですね。
学校は休校の代替に「オンライン授業」を開始し、ビジネスでは、在宅による「テレワーク」を推進し、変化は一挙に進みました。
そのために、インターネットサービスプロバイダー(ISP)や通信事業者は、インターネットに接続する「急激な通信量(トラフィック)の変化」に対応をせまられ、大混乱に陥りました。
教育関係では、ネットワークを増強しましたが、想定以上の量対応に追われて「パンクした企業」もありますね。
機能不全に陥って動かなくなったのです。
これは、10年単位のハードルを一挙に飛び越えたことを意味します。発想も行動様式も「過去と決別」です。
この私でさえ「ZoomやTeamsを利用して仕事をすること」に慣れました。 Miro やSlido(スライド)は有効です。やがて、[これを使いこなす授業]が構築されるはずです。
学校も予備校も変わるでしょう。
「第四の波」はWeb授業を展開する民間企業から推進されるでしょうね。
一番遅れるのは、教員の意識改革が必要な公立学校でしょう。
受験アドバイス
君は「ムーアの法則」を知っていますか。専門的になりますが、アメリカの半導体素子メーカー:インテル(株)創業者の一人のムーアが提唱した法則「p=2n/1.5」です。私は専門家でないから詳しくないですが、コンピューター本体のデータ処理装置であるプロセッサーの性能が、猛烈なスピードで向上しているのです。それを裏打ちする実績がでているのです。しかし、この法則すら「遅れている」・「プロセッサーの時代は終わる」という議論があります。まさに「第四の波」です。
(2). 強烈さ
シンギュラリティの「向こう側」に何があるのでしょうか。
君の時代は、まさに、人工知能(AI)が、分野を問わず人間の能力を超えていくでしょう。
コンピューターが「機械学習」で、ガンダムのような「操作型」であるうちは、まだ何とかなるでしょうが、人間の脳に近い「鉄腕アトム」や「ドラえもん」のような「自立型ロボット」の開発が進めば進むほど止めようがないですね。
ましてや、「量子コンピューター」が実用化され、搭載されたロボットが登場する日がくれば、「第四の波」が現実のものになります。
コロナ対策でもコンピューターを利用する研究が進んでいるようです。
最近私の友人が、最先端の技術を駆使したロボットのダ・ヴィンチで、内臓の手術を受けました。ものすごい技術ですね。
受験アドバイス
君は「デジタルネイティブ世代」ですね。1980年前後生まれが該当するとされていますからね。その中で、君は16歳~24歳ですから「Z世代」ですね。25~34歳の先輩は「ミレニアル世代」、2017年からの人を「α世代」とよんでいますね。君の世代の特徴は、生まれた時から、高速インターネット、スマートフォン、ビデオ・オン・デマンド(VOD)、さまざまなゲーム機器、そしてSNSの存在が「当たり前」に存在していましたね。A・T・カーニーの分析によれば、世界中に23億人いるそうです。世代による価値観と行動様式に違いを勉強すると面白いです。
(3). 広がり
コロナ禍による「価値観の転換」は、西洋合理主義の行き詰まり・限界を意味していると思います。
「西洋の価値観」を象徴するアメリカと、「中華思想」の影響効果を狙う中国の対立に象徴される「覇権争い」が表面的な流れです。
が、その根底の潮流は「西洋の価値観」からの転換ではないかと思います。
いま、アメリカで「人種差別をなくす激しい抗議デモ」が展開しています。
この運動が、世界的に広がる様相を見せています。
この抗議デモの本質は、アメリカ的な、西欧中心主義への「異議申し立て」だとも言えます。
イスラムを含めて「多様な価値観」を尊重せよ!これが行動になっているといえましょう。
受験アドバイス
レヴィ―・ストロースの『野生の思考』によれば、西洋近代の合理的な思考と同じレベルで、「未開社会においてみられる一定の秩序・構造」を認める必要があるといいます。ここに「今後の世界の在り方」を考えるヒントがあると思います。これは文化人類学という学問分野です。
1918年にドイツのシュペングラーは『西洋の没落』を発表しています。100年前に、現在が来ることを予言しています。こちらは歴史学です。学問は飾りではありません。君には「学問の大きさ」を知って欲しいと思います。
(4). 持続性
いまスパコン「富岳」が話題になっていますが、教育では、スイスやフィンランドの「eラーニング」に比べて、日本のWebの立ち遅れが指摘されていますね。
理由は、経済効率優先で、「教育の基盤整備」に対する投資が足りないからです。
国家の大学の研究助成金などは、世界的にみるとみじめなレベルです。
一流国家として、研究助成にも人材養成にも投資が足りません。
IT業界では、世界的には「Googleの勢い」が止まらないですね。
世界中に張り巡らされたGoogleの眼が、社会と個人を監視しています。
もはや「データサイエンス」を知らないで、君は仕事ができないですね。
データをアルゴリズムで集め・整理し、ビッグデータを分析し、人工知能で開発につながっていく。
この「流れ」・分野へのGoogleや中国の投資額が凄いですね。
「華為技術(ファーウェイ)」がGoogleに追従し、中国の技術とアメリカの技術が拮抗し、すでに中国が追い抜いているとも聞きます。
中国のアリババ集団も気になります。「日本は立ち遅れるばかりだ」と嘆く声が大きいです。
YahooとかFacebookとかTwitterを合わせてみると、トフラーが予測した以上のスピード・量・拡がりですね。この先どうなるか心配です。
ましてやコロナ禍で、オンラインの授業とかテレワークによって、一挙に社会の仕組みが変わってしまいました。
さあ!君の出番です。
受験アドバイス
未来予測レポートは、民間でも盛んにおこなわれています。「2025年までのロードマップ」を出したのは、日経メディアマーケティング(株)です。コンサル会社ですから
- 世界経済の動向
- 技術テクノロジー
- 産業企業戦略
- ライフスタイル価値観
の四つの項目で分析しています。少し専門的で、君に直接的に見えにくいと思いますが、将来の仕事や生き方につながるものです。だから、こうした分野があることを理解しておくといいでしょう。また、第四の波の中心は「量子力学」になるでしょう。勉強する価値がありますね。
(5). 発展性
コロナ禍で一番注目したいことは「意識改革」です。
世界中の人々の考え方、捉え方の変化です。このままでは「人類は滅亡してしまう」。
その一点に世界中の人々の意識が集中したことです。
ITやバイオに対する関心が高まったということだけでなく、民主主義が守られるにしろ、管理社会が徹底するにしろ、「自然への畏敬」を取り除いたら、どの社会も存続できないという警鐘を突きつけられたのです。
一部の政治家や経済の指導者たちは、目先の利害から離れて考えることができていませんが、コロナ禍は「甘ちょろい自然回帰」を許さない厳しさを人類につきつけています。
スマホの普及は、近年ものすごい発展性を示しています。そこにコロナ禍です。多くの人が孤立し・人々のリキッド化が一挙に進みました。
そして、「5Gの時代」です。学校教育も「三密」への対応が余儀なくされ、集会・イベントの開催も、ままならない状態が続いています。
受験アドバイス
国連が主唱するSDGsがますます重要になるでしょう。
「指標」は、
- 貧困
- 飢餓
- 保健
- 教育
- ジェンダー
など60項目ありますが、世界中の大学で「豊富な実践事例」が発表されています。東大・東工大・慶応義塾大の総合的な実践事例を紹介されたことがあります。こうした実践が重要になります。君もこうした運動に参画するといいですね。
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