新しい酒は、新しい革袋に・・・~新しい価値基準を創造しよう~
はじめに
急激な勢いで価値基準が動いています。
既存の基準が動くというのは、新しい価値基準が必要ということです。
これまでの価値観からの転換です・・・
「新しい酒」がすでに手元にあることを、多くの人が気付いていますね。
だから、「新しい革袋」を用意しなくてなりません。
しかし、困ったことに新しい「適切な革袋」が見当たらないのです・・・
「もし新しい革袋を用意しなければ、袋が張り裂けて、酒が流れ出てしまうだけでなく、袋もダメになるだろう」と、新約聖書(マタイ・9)にあります。
メジャーリーグは、大谷翔平選手の「二刀流」で「新しい革袋=ルール」に換えましたね。翻ると、ラグビーもフットボールのルールから「新しい革袋」をつくり、誕生しました・・・
世界中に異常気象が発生し、あちこちで「地震」「線状降水帯」「猛暑」「山火災」の発生をみると、「人新世」を意識せざるを得ません・・・
根本に「人新世」になったことから、世界の政治・経済、人間の生き方のルールの改訂が要求されていると思います・・・
「地球のプレートが動いている」ことから発生する現象ではないでしょうか。
私は「人新世(Anthropocene)」について、第73回「近くを見る力・根源を見る力」・第75回「VUCAの時代」に書きましたが、改めて確認しましょう。
コラム【「人新世」について】
「人新世(Anthropocene)」は、日本語では「じんしんせい」または「ひとしんせい」と読む「新造語」です。オゾンホールの研究でノーベル化学賞を受賞したパウル・クルッツェン氏らが、2000年に提唱し、これを受けて2009年に国際地質科学連合で「人新世・作業部会」が設置されました。1940年代半ばに核実験が始まり、自然界にはほとんど存在しなかった「プルトニウムの同位体」が世界中に放出されたことから、新しい「人新世」になったというのが、この学説なのです。これによれば、10万年後にも「ウラン235の層」が残るはずだといわれています。
大谷選手は新しいルール(革袋)を作った
大谷翔平選手の二刀流の登場で、メジャーリーグはルールを改訂しました。例えば、従来のルールでは「投手として登板する時は打者として打席に立てず、打者として打席に立つ時は投手として登板することはできない」でした。しかし、大谷選手の「二刀流の登場」で、この伝統的なルールが改訂されました。大谷選手が投手・打者の両方のポジションを兼任することができるようになったのです。まさに「ルールを改訂」させたのです。その他、DH制度の見直しなど、彼の活躍は野球界全体の新しいルール(基準=革袋)の変革を生み出したのです。後輩たちは、この新しいルールで活躍するのです。
コラム【新しい革袋:「ITサポート」という資格】
新しいルールに沿った資格が生まれ、大きな影響力を持ちつつあります。「ITサポート」は、IT技術やシステムについてサポートする資格です。専門的な技術や知識をもってトラブルや課題に対処・支援する力を評価する資格です。この「情報処理技術者試験」を体系化してみましょう。
ラグビー誕生のエピソード
ラグビーは、既存のフットボールから生まれた新スポーツですね。
「ラグビーの原型」となる競技はそれまでにもありましたが、イングランドのラグビー校で起こった事件が、このスポーツを飛躍的に発展させたことは有名です。何事も、新しい発明・発見といっても既存に「伏線」があって、その上での「飛躍」が多いです。
1823年、イングランドのラグビー校で、エリス少年がサッカーボールを手で持って走ったことから始まり、19世紀後半に公式なルールが制定され、2021年の東京オリンピックでは正式な競技種目になりました。いまやラグビーは人気スポーツです。2023年のワールドカップはフランスで9月に開催されます。「頑張れ!!ニッポン!!」
コラム【飛躍した才能を持つ人材】
多様な能力を持つ「天才」の代表的な人は、レオナルド・ダ・ヴィンチですね。彼は、画家であるだけでなく、飛行機の研究など多様な分野で才能を発揮しましたね。ミケランジェロは、自らを画家とは言わないで彫刻家だと言っていましたね。君も、才能を限定しないで、たくさんの分野に好奇心を燃やしてください。大谷選手のような「二刀流の選手=多様な能力を持つ人材」は、いろいろなスポーツで見られます。サッカーでは、元フランス代表のエリック・カントナ選手は、ポーカーのプレイヤーとしても有名です。元ブラジル代表のペレ選手やロマーリオ選手も政治家として活躍しました。バスケットボールのスーパープレイヤーのマイケル・ジョーダンは、野球選手としてマイナーリーグで活躍しました。好奇心と向上心があって才能が磨かれます。
生成AIの「破壊力」、恐るべし!!!
生成AIの「破壊力」は、全ての社会システムをひっくり返す力をもっています。私は、第97回で「革命が進行している」と述べ、第103回で「現在の生成AI」を書きましたが、その後もすさまじい勢いでAIは進化を続け、どうしようもない勢いで社会の隅々まで影響力を発揮しています。
生成AI技術が、日本の医師国家試験の合格レベルまで達したという報道がありました。また、「音声」「映像」の生成も発達し、文章を入力するとAIがそれを「音声化して再生」することができるようになりました。また、テキストや画像情報から「映像を合成」する技術ができたという情報もあります。つまり、アニメーションや物語まで生成する技術ができたのです。
開発に関わる専門的な知識と技術さえあれば「誰でも開発に参加できる」ので、「才能と好奇心」を持つ者によって野心的な開発が進められています。ベネッセも、夏休みの「自由研究」の宿題支援を無料で提供すると発表しましたね。チャットGPTには「AI自由作文」支援という機能があります。大切なことは「如何に使いこなすか」「どう使っていくか」です。
コラム【人間の能力を超えるAIが登場?】
人間をしのぐ「知性を持つAI」の登場はあるのでしょうか。先日、「生成AIで落語を楽しむことができるか?」が話題になりました。当然、機械学習ですから現状は無理ですね。また高村幸太郎の詩「あどけない話」のニュアンスを「翻訳できるか」という話も出ました。文化は置き換えることができない要素をもっていますね。AIは、意識や精神をめぐる「根源的な問い」も投げかけています。「『私』は脳ではない」などの著書で知られるドイツの哲学者、マルクス・ガブリエル教授は、人工知能(AI)を「Alien Intelligence(異星人の知性)」と呼び、不意に人類の前に現れた理解が及ばない存在だといいます。さて、AIは「既存のシステムを破壊」するだけでしょうか。それとも、新しい「革袋」を用意するでしょうか?
人間の能力を超えるAIの開発を禁止できるか
日本の「AIスタートアップ企業」のオルツが、日本語による「大規模言語モデルLHTM-2」を開発したと発表しました。「Chat GPT」のベースが英語ですから、日本語への転嫁に限度があります。そこで、日本語による翻訳機能を持つLHTM-2が開発されたのです。これは「新しい革袋」になるかも知れません。「スタートアップ企業」とは、新規にビジネスを開拓・開発する企業のことです。いろいろな企業からAIの開発を受託して仕事をしています。
開発に「高額な資金と人材」を必要としますから、企業が独自に専門家を雇うより、開発専門企業に委託する方が安上がりです。現在1,000社以上があるといわれますが、実態は不明です。個人情報の洩れ・誤情報の拡散に注意を払いつつも、増え続けていくでしょう。NEC・NTTなど大企業、大学、研究機関を含めて、開発競争は「新しい革袋」をつくると思います。君も開発者ですね。
コラム【生成AIは「新しい革袋」である】
企業秘密・情報漏洩の危険から、AIを危険視するところがありますが、生成AIは倫理的なことを含めて発展していくでしょう。私が考える難しいものは「研究・学術論文」の「査読」です。これを生成AIでやるというのですから驚きです。すでに、論文作成途上で、チャットGPT(Generative Pre-trained Transformer)が使われていますが、「査読までやる」というのです。この難しい作業を「OpenAIのGPT-3」がやれるというのです。理系の専門的なことは分かりませんが、査読者の判断や知識量に影響を及ぼすことは予測できます。新規の「GPT-4」は、すでに人間の知恵を上回っていると聞きます。「新しい革袋」が動いています。
新しい革袋:「移動型大学」に注目
新しい大学のスタイルが注目されています。移動型大学のミネルバ大学です。2011年に、ベン・ネルソンがサンフランシスコを拠点に設立した大学です。従来の「キャンバス型大学」と異なり、世界中の異なる7都市を移動しながら学ぶのです。学生は全寮制で、4年間学びながら移動するのです。
学びの基本スタイルは「オンライン」です。世界中のサンフランシスコ・ソウル・ベルリン・ロンドンなど「異なる文化・環境」を学びの場として活用し、グローバルな人材を育成しようというのです。世界のリーダーになるための学びです。諸都市の「学寮」で共同生活をして、企業やNPOと連携を保ちながらフィールドワークを重ねていくスタイルは「新しい革袋」です。
コロナ禍によって、日本でも「オンラインの講義」が一挙に普及しましたが、20~30年後には、単位互換などの連携が発展し「移動型大学」が広がると予想します。
コラム【伝統を大切にすることとは・・・】
ドイツの「ベルリン・フンボルト大学」に行ってみるといいです。荘厳さに、ドイツの底力を感じると思います。ナポレオン戦争に敗れたドイツが大胆な大学改革を行い「研究と教育の一致」で、衰えた国力の再興を目指した拠点です。
「伝統」とは、常に新しさを柔軟に吸収し、時代の要請に応えることです。
個人の理想・夢だけに止まらないで、社会と関わりを大切にすることです。私達は、コロナ・戦争を経験したことを、次に活かしていかなくてはなりません。
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